室町社会の騒擾と秩序 [増補版] (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065297254

作品紹介・あらすじ

「ハードボイルド」で「アナーキー」な現代人には到底受け入れがたい中世社会を活写しながら、そこに存在する中世人独自の秩序を魅力的に描いてきた著者の原点! 「荘園制と室町社会」および原本に未収録だった幻の博士論文「序章」の一部と「終章」を収録。「喧嘩両成敗」も「大飢饉」も「耳鼻削ぎ」も、すべてはここから始まった――。

 流罪に処されると、そのほとんどが道中で殺害されてしまい流刑地にたどり着くことさえできない一方で復讐を目的に自害し、また諸大名の軍勢が御所を取り巻いて将軍に異議申し立てを行うかと思えば、没落が確定した大名屋形には都市民衆が火事場泥棒に押し寄せる――。室町時代は現代人の目にはなんとも騒がしく物騒な社会に映る。しかし、それはよく言われる「自力救済」の暴力のみが支配する無秩序なものでは決してなかった。多様でいささか奇異な法慣習や民間習俗を分析対象としながら、その背景にある複雑で微妙なバランス織りなされる中世人の論理を、著者ならではの筆致で活き活きと豊かに描き出す。
 さらに、そのようないわば中世的文化の「野蛮さ」が、江戸時代最初の100年を通していかに変容しひっそりと払拭されていくのか、それでもなお残りつづけているものとは何なのか、各主題を通じてその変容が浮かび上がる。
 禁酒令、耳鼻削ぎ刑、梟首(晒し首)、都市民衆に開かれた禁裏など、魅力あふれる意外な視点から、中世社会を動的かつ大きな展望のもとに描いたデビュー作の決定版!
(原本:吉川弘文館、2004年)


【本書の内容】
序章 ふたつの室町文化

   第1部 室町社会の法慣習
第一章 「御所巻」考――異議申し立ての法慣習
第二章 中世社会の復讐手段としての自害――復警の法慣習
第三章 政権抗争劇のなかの都市民衆――掠奪の法慣習
第四章 室町幕府「流罪」考――失脚者の末路をめぐる法慣習
第五章 室町殿の紛争解決法――紛争解決の法慣習

   第2部 室町時代の都市生活
第一章 足利義持の禁酒令について
第二章 正長の徳政一揆と山門・北野社相論
第三章 ある室町幕府直臣の都市生活――『碧山日録』と「春公」についてのノート
第四章 荘園制と室町社会

   第3部 戦国時代の文化変容
第一章 室町後期における都市領主の住宅検断
第二章 織豊政権の成立と処刑・梟首観の変容
第三章 「耳鼻削ぎ」の中世と近世
第四章 戦国期における禁裏空間と都市民衆

終 章
あとがき
学術文庫版あとがき

感想・レビュー・書評

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  •  本書元本は博士論文をもとにしたものであり、一般読者が読み通すには骨が折れるが、中世、特に室町時代の具体相を知りたいと思う読者にとっては、とても読み応えがある。
     専門書であるので、歴史学にある程度の知見がないとそもそもの論点が十分には理解できないところもあるが、論文として著者の問題意識は明確に提示されるので、そういう点では分かりやすい、といっても良いかもしれない。

     本書全体の問題関心は、序章に示されている。ひろい意味での〈文化史〉の試みであると。
     文化と言っても普通連想する(狭義の)文化にとどまらず、人々の生活を律した法慣習や些細な日常の民間習俗といった側面をも重視しようとする。

    以下、興味を惹かれたところ。
     第I部 室町社会の法慣習
     第一章は「御所巻」について。一般書でも将軍に対する異議申立ての方法として取り上げられているが、史料に基づき実証的に論じられていることに加え、将軍権力と有力守護層とのパワーバランスに関する問題であることに気付かせてくれる。
     第二章以下、復讐の法慣習、没落者の屋形等に対する都市民衆の掠奪の慣習、失脚者の流罪刑と殺害慣行、紛争解決の法慣習が論じられる。


     

  • 穢れや境界といった古来からの概念が、室町から戦国にかけ、力や政治の論理に凌駕されたり等々、日本の中世と近世の移り目を考える点で、色々気付きある一冊。

  • 2004年に刊行されたものの増補文庫版。室町社会の法慣習と都市文化について多様な論点が整理・提示されている。個々の内容は勿論のこと、近世に向けて変容する過程が提示されている点も興味深かった。

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著者プロフィール

清水克行(しみず・かつゆき)
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。 主な著書に『喧嘩両成敗の誕生』(講談社、2006年)、『戦国大名と分国法』(岩波書店、2018年)、『室町社会史論』(同、2021年)などがある。

「2022年 『村と民衆の戦国時代史 藤木久志の歴史学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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