合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明

著者 :
  • 講談社
3.42
  • (21)
  • (99)
  • (147)
  • (16)
  • (3)
本棚登録 : 974
感想 : 107
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065297810

作品紹介・あらすじ

あの美人探偵・上水流涼子が帰ってきた!頭脳明晰・貴山を助手に、今回も知略と美貌を武器に、難事件をズバッと解決!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • シリーズ2作目。3つの短編から構成されている。

    自分の好きな人が自分のものにならないのなら傷つけてしまえ、という感覚。好きだからこそ、その人が傷つく深さが分かるし、1番の深さで刺してしまう。その後に起こる反応とその大きさに後悔しても遅い。

  •  女性探偵が「あり得ない」事件の謎解きに挑む連作中編集。

     シリーズ2作目は中編3編からなり、5編構成だった前作より描写が細やかになっている。
             ◇
     台風一過後の青空を窓際に立って眺めていた涼子の背中に、領収書の仕分け作業を手伝えという貴山の不機嫌そうな声が掛かる。

     ここは上水流エージェンシー事務所。確定申告にはまだ4ヶ月あるが、仕事を溜めておくのが嫌いな貴山は会計処理のため領収書の束を仕分け中だ。
     事務所の経営は本来なら涼子の仕事なのだが、経理一般は何事にも疎漏のない貴山に任せっきりにしてしまっている。その貴山に睨まれて涼子も渋々仕分けの席に着いたとき、目の前の電話が鳴った。

     古矢という男からの仕事の依頼だった。
    (第1話「物理的にあり得ない」) 全3話。

         * * * * *
     
     柚月裕子さんのライトミステリー、上水流涼子シリーズの続編です。
     今回のサブタイトルは「究明」となっていて、前作の「解明」からレベルアップしています。
     
     第1話は、レッドリストアニマルの不正取引に関わる事件。
     着手金 100万は手にしたものの、犯人と同じ穴のムジナだった依頼人まで警察送りにしたため、涼子たちは成功報酬を諦めることになりました。

     第2話は、6年前に離婚した夫から息子の親権を取り返して欲しいという女性からの依頼。
     調査の結果、裏に隠された依頼人の陰謀に気づいた涼子たちは、陰謀の芽を摘み取るとともに依頼を断ってしまいます。
    おまけに着手金の10万円も叩き返したため、まったくのタダ働きに終わりました。

     第3話は、生きる気力を失い摂食障害になった女子大生について、原因をつきとめてケアしてほしいという依頼です。
     畑違いの仕事ですが、腐れ縁のある丹波刑事に泣き落とされてボランティアで引き受けることに。これも当然タダ働きです。

     今回は「人として見過ごせない」というヒューマニズムから涼子たちが依頼に向き合う話でした。
     それにしても、事務所の家賃の支払いにも窮するほど資金繰りが悪化している涼子たちが、真相「究明」のために採算度外視で依頼に取り組む姿はなかなか魅力的でした。武士は食わねど高楊枝。こんな痩せ我慢は結構好きです。

     ところで本作にはサプライズがありました。それは作品を通して描かれる、貴山の意外な側面です。彼は無類の動物好きだったのです。
     人間に対してはクール過ぎる態度の貴山ですが、成りゆきで保護したレッドリストアニマルのカラカルにはベタ甘で、涼子が呆れるほどでした。
     さっそくカラカルに「マロ」と名付けた貴山は、ペット可で適度な広さのあるマンションへの転居を真剣に考えます。もちろんマロがストレスなく過ごせるためで、その入れ込みようがあまりに微笑ましくて思わず笑ってしまいました。

     ともあれ、さらに続編を期待できるような終わり方に、ニンマリして本を閉じました。

  • 最強バディは、今回も美しくスマートに難題をクリアしていく。
    現在、月曜10時カンテレで放送されている。
    だからなのか、上水流涼子の台詞に天海祐希の顔が浮かび、もちろん貴山は松下洸平が浮かんでくる。

    ○物理的にあり得ない〜謎の積み荷を載せた車の捜索

    ○倫理的にあり得ない〜離婚した夫から我が子の親権を奪い取りたい

    ○立場できるにあり得ない〜心を閉ざした女子大生を救う

    短編3作。
    通常ではあり得ないと思われる難題にお金が頂けるのならと対応するのだが、結局金銭は二の次で真摯に向き合っている2人。
    ラストは、スッキリ爽快。


  • 元弁護士の上水流涼子とIQ140の万能な貴山が様々な依頼を解決していく2作目。今回は行方不明の車を探す、親権を奪い返す、自殺未遂の女性を救えといった内容。めちゃめちゃ読みやすくて面白かったが、今回はどちらかというと貴山の活躍の方が多かった。もう少し上水流涼子の活躍が見たかった。

  • やっぱり悪をばっさばっさと斬っていく話は面白いな。話の展開も早いし、問題が解決した時の爽快感がいい。

    『物理的にあり得ない』
    依頼人もターゲットの人もクズ人間で、どうしようもなくてイラッとしたけど、上水流涼子と貴山が然るべき措置で解決。貴山の意外な一面が見れて良かった。

    『倫理的にあり得ない』
    またまたクズな人間が登場。クズな人間に涼子がガツンと言った時はすっきり。私はこの話が一番好きかな。父子の愛情にジーンときた。ここで貴山の人間性が分かった気がする。貴山は過去に色々あったんだろうなーと想像してしまう。

    『立場的にあり得ない』
    刑事の丹波が依頼。女子大生が精神を病んだ原因と「なんとかしろ」治せという依頼内容。これは無理だろ、と思ったんだけど…。若者たちの苦悩が悲しい。

    仲間も一匹増えたことだし、なんとか赤字経営から脱出してほしいな。頑張れ、上水流涼子。
    続編もぜひ読みたい。

  • 殺しと傷害以外は、どんな依頼も請け負い、解決する何でも屋。
    元弁護士の上水流涼子と、IQ140の助手・貴山。
    美男美女コンビが依頼をこなしていく、シリーズ第2作。

    涼子と貴山のやりとりがコミカルで、時に人情味もある。
    軽いタッチで、楽しい。

    ドラマの配役で、脳内再生された。

    「立場的にあり得ない」は、ラストストローにしか思えず、ややもやもや。

  • 上水流涼子と高山のめんどい依頼を解決するシリーズ。新しい仲間に「まろ」が登場。
    容姿端麗、頭脳明晰、高山が有能すぎる。そこがまた面白い!

    相棒や科捜研のように、いくらでも作れそうなドラマ向きのお話で、シリーズ化になってないのはキャスト?涼子が天海祐希はイメージちがうなぁ、、、

  • 1を読んでから大分間が空いてしまっているので、あれ?このシリーズ、こんな感じだったっけ?という気がした。今回の依頼は全くお金にならず(1もそうでした?)この事務所の経営、大丈夫なのかと心配になる。
    でも心情的には事務所がんばれと応援できる。
    最後、摂食障害の子の話には少しぐっときた。
    人は幸せな時ばかりではない。常に悩みや問題を抱えて生きて、それが一気に重なってキャパを越えてしまったとき、寄思いも寄らない行動をとってしまうこともあるのだろう…今はいない人の事を思い出して泣きそうになってしまった。
    3も出るのかな。マロの今後の活躍にも期待したいw

  • 貴山さんの存在感が増してきました。次回は主人公かも知れませんね。

  • 上水流涼子の2作目。貴山とのコンビは健在だ。
    合理的に考えるとあり得ない事の解決をしていく3つの短編。

    航空便で届いた荷物を乗せた車が行方不明になる。積荷は何なのか?物理的にあり得ない。
    離婚時の親権を取り戻したい元妻、子どもにとっての最善とは何か?倫理的にあり得ない。
    女子大生の自殺未遂と摂食障害の原因は何か?立場的にあり得ない。

    それぞれの話題はよくあるケースである。柚月裕子さんはキャラ以外でどのように奥深く興味を駆り立てる内容に仕上げているのか?
    1作目がインパクトが強かっただけに、期待していた。そして、期待に応えてくれた。
    涼子と貴山の人としての言動は心揺さぶられる。3作目も楽しみである。

全107件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×