言語ゲームの練習問題 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065302491

作品紹介・あらすじ

【もっとも易しいヴィトゲンシュタイン入門!】

なんで犬をイヌって呼ぶの?
地球人の数学と宇宙人の数学は似てる?
私とあなたの「痛い!」は同じ?

私たちを支配する「社会のふるまい」のルール=「言語ゲーム」。
そのヴィトゲンシュタイン哲学の核心を、36の練習問題を解きながら平易な言葉で解説!


「約束しよう。
この本は、ヴィトゲンシュタインに比べればまるでオモチャだ。小学校の算数だ。でもその問題が解けるかどうかで、自分の生き方も、ものの見方も、まるで違ってしまうという覚悟で考えよう。さもないと、ものを考えたことにはならない。
子どもは、真剣に遊ぶ。真剣に遊ばなければ、遊んだことにはならない。
おとなは、真剣に考えよう。考えることに、お金はかからない。その気になれば、誰でもできる。そして、真剣に考える大人が増えれば、この世の中はその分だけ、ちょっとましになると思う。」ーー第3章より


【本書の内容】
・失われた文明の解読は、暗号の解読と同じ?
・言語を正しく使って、初めて人間は人間になる
・『論理哲学論考』と『哲学探究』の相違点
・言葉の意味は、言葉では説明できない
・私を私たらしめる「固有名」と「確定記述」
・人間は言語ゲームを抜けることができるか?
・クリプキの懐疑論と「くゎ算」という思考実験
・規範(価値)は同時に「事実」である   ……ほか


【本書の構成】
1、隕石衝突問題
2、世界の終わり
3、宇宙人を見分ける
4、言葉と意味
5、言葉と実物世界
6、固有名
7、ゲームとルール
8、数列とルール
9、偶然と自由と可能世界
10、感覚と内面
11、文の仕組み
12、嘘
13、ルール懐疑主義
14、確実性について
15、言語ゲームの応用問題

感想・レビュー・書評

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  • ヴィトゲンシュタイン入門というより哲学入門としてもいい本だと思う。
    生成AI、XR、BMIなど黎明期だが、これらの技術は人類の価値観を転換し「世界」の定義すら変えてしまう可能性があるところがこれまでの革新的技術とは次元の違うものだ。
    その意味で、法律や常識の以前の問題として哲学を勉強しておかないといけないなと思った。

  •  人間の思考が言語で出来ている以上、言語そのものがどのようなものなのかを知らなくてはならない。私たちは言葉で対象をつかむが、掴んだ時にはもう言葉の性質に従っている。哲学の基本が言葉の学問であることを改めて考えさせられた。

  • 練習問題というか、言語ゲームの入り口を非常に丁寧に説明してくれている
    宇宙人は地球の言語を理解できるのか?という入り方は哲学的思考に慣れていない人にも想像しやすいのではないかと感じた

  • ヴィトゲンシュタインの言語ゲームの入門編の序、的な一冊。学生時代、言葉が先か、モノが先か、という議論で盛り上がったのを思い出した。言葉で世界を表現しているとふだんは思っているけれど、言葉はそうやって世界を映す鏡ではなく、言葉そのものが出来事だ、という考え方は面白い。ことばは「ふるまい」であり、それがもともと確定した意味を持っているわけではなく、言葉を交わす中で一定のルールが見えてくる、という捉え方。
    事実と規範を分け、いったん世界は事実でできている、と基礎固めしてみる。その後を自分の頭で考えていくのは難儀だけれど、それが哲学の面白さなのだと思う。もう少し「分かってみたい」と思わせてくれる本。難解なものを平たい言葉と質問に分解してくれていて読みやすかった。

  • ヴィトゲンシュタインの言語ゲームの雰囲気だけでも味わいたかったので、その目的はやんわりだが遂げる事ができた。平易な言葉で解説を挟みながら思考実験の世界に読者を誘う。人類が滅亡する前に、我々の存在を宇宙に示すためには、なんていうスタートは面白い。

    言語ゲームそのものの出発点もよく分かる。英語を英語で説明されても、全くその言語を理解しない人には伝わらない。我々は自然と日常生活から日本語を身に付けた。そのプロセスについてを解き明かす。作者と共に思考実験の設問に沿ってあれこれ考える。新鮮な読書体験になった。

  • ヴィトゲンシュタインの言語ゲームは普遍的であり、近代が終わった後の社会、機械主義(mechanism)を考えることができるという。刺激的ですね。機械人(humachine)という言葉も初めて知りました。

  • Q&Aで構成されている本書を気楽な読み物として手に取ったが、哲学の深みに導く内容であり読み疲れた。社会の成り立ちにつき、深い思考を積み重ねたヴィトゲンシュタインの論説を準えながら、彼が提唱した言語ゲームなる考え方を紐解いていく。例として、ある椅子を見て、イスという言葉が浮かび、それは細かな定義を超越して人々に共通の理解をもたらす。ここに言語ゲームの本質があり、彼は人々の一致したふるまいに帰着させる。この言語ゲームの思考訓練として練習問題が繰り出されるが、そこに何の意味があるのかいい加減飽きたところに、突然現代の問題、国際法に関する理解の問題が提示される。この部分の掘り下げこそが、言語ゲームの重要性として説明を尽くすべきだと、不完全燃焼で読み終える。
    ヴィトゲンシュタインは、8人兄弟の末っ子として生まれるが、長兄から三兄が自殺でなくなっている。突き詰める性格の災いなのか、疑問を感じた。

  • 言語ゲーム、哲学、橋爪大三郎。そのあたりのワードに惹かれて入手・読了。ヴィトゲンシュタインに特別な関心を寄せてはいなかったけど、なるほど、興味深い。宇宙人との意思疎通を入り口として、言語に関する前提が、次々疑問へと変わっていく。なかなかに味わえない、貴重な知的体験。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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