だれもみえない教室で (文学の扉)

  • 講談社
4.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065303931

作品紹介・あらすじ

『となりの火星人』『あした、また学校で』『サイコーの通知表』と、小学生の生きづらい現実に寄り添った話題作を放った工藤純子氏の書きおろし最新作。

「よくあるよね。大人に無理やりあやまらされたり、握手させられたり。本人同士は納得していないのに」
「なんで、そんなことになるんだろう」
「まあ、問題を大きくしたくないとか、さっさと終わらせたいとか……大人の都合もあるよね」

オレたちの気持ちは、いつもどこかに置き去りにされたままだ。(本文より)

小6のクラスで起きた、ランドセルに金魚のエサを入れるといういじめ。被害を受けた子も、エサを入れた子たちも、いじめが起きている空気を感じつつ声をあげられなかったクラスメートも、そして、過去に加害者としていじめに荷担した担任の教師だって、いじめという「現実」からはけっして逃れられない――。痛烈なメッセージが込められた一冊です。
カバー装画は、ミニチュア写真家・見立て作家としてNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックや、一般文芸作品の装画で活躍中の田中達也氏が担当します。

感想・レビュー・書評

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  • 小学6年男子の5人の仲間が、ちょっとしたきっかけで、1人が仲間外れにされ教科書を隠されたり、ノートに落書きされたり…。
    それがランドセルに金魚のエサを入れられているのを母親が見つけたことから次第に事が大きくなる。

    あやまって、反省文を書かせて、握手させて、はいそれで仲直り…なんて簡単なものでもない。
    未だにそれが通用すると思っている大人がいれば、おかしいだろうと思う。

    子どもたちもいじめを知っていて誰も声をかけたりしないことが問題で…。
    確かに勇気もいることだし、逆に自分がいじめを受けてしまう、といったことも考えてみて見ぬふりをしているのがほとんど。

    担任の先生も過去の自分の過ちを告白したけれど、大人になってもずっと後悔している。

    親も初めての子育てのことを誰も教えてくれないし、間違っているなどと思わずに育てている。
    正しい子育てなんてあるのだろうか?と思ってしまう。

    誰が悪いわけでもなく、誰のせいにもできない。
    声に出して自分の気持ちを言うしかない。

    大人になる前に子どもたちに読んでもらいたいと思う一冊である。

  • 表紙とタイトルに惹かれて読んでみた。

    仲良しだったはずの5人。
    颯斗が他のメンバーをけしかけて、清也のランドセルに金魚のエサを撒いたのはちょっとしたいたずらだったはず...。
    でも、本当にただの悪乗り?悪意はなかった?
    6年生という微妙な立ち位置は、自意識と自立、親からの干渉などエネルギーとストレスの間に身を置き、ともすればあらぬ方向に走り出してしまう。
    颯斗も走り出してしまった自分の行動を抑える術を、まだ知らなかったのだろう。
    そんな彼を受け止める誰かがいれば、もう少し早い段階で止めることができたのかもしれない。

    けれど、頼りなかった担任も、葛藤しながらも傍観していた連も変わり始める。
    颯斗も自分自身に問いかけ、気持ちをぶつけるべき相手が誰なのか向き合うようになる...。

    なかなか息苦しいストーリーだが、最後まで一緒に悩み考えることで読み手も大きく成長する、そんな物語だった。

  • 全世代へのメッセージが強く届く一冊。

    これは良書。

    小学6年生男子5人の輪の中で、ある日突然起きたいじめ。

    遊びといじめの感覚のズレはもちろん、した側、された側、教師、親の向き合い方と、さまざまな視点で描く全世代へ向けてのメッセージ本。

    何度、心に強く届く言葉と、子供たちの心に出会っただろう。
    何度、涙と共に心揺らいだことだろう。

    見て見ぬふりの世の中なんて嫌。
    そう強く思える子供たちに育て、心を守れるのは大人だけ。

    そういう大人の姿を見て学んだ子供がやがて大人になり次世代の子供たちへ…その連鎖が何よりも大切、そう思う。

  • いじめた人を、今の自分は許せても6年生の自分は許せない。
    いじめた本人がやったことは一生ついて回る。
    誰にもみつからなくても、自分自身が覚えていて逃れられない。
    いじめをしている人、いじめを傍観している人に是非読んでもらいたい。
    大人としては、子どもの小さなSOSに気付ける自分でいたいなと思った。

  • 久保塚連、三橋清也、関颯斗は五年生の間は他の2人も含め5人でつるむ友人だった
    6年生になり、いらいらし始めるようになった颯斗は清也に当たるようになり、やがて“いじめ”の
    形になっていく
    5人になる前から清也の友だちだった連は、あせるような気持ちに追い立てられながらも、颯斗に何も言えないでいる
    清也は傷つきながら、どうしたらいいのか動けないでいる

    教師2年目の担任・原島夏帆は、忙しい業務に振りまわされるなか、自分のクラスでいじめがあることを直視出来ないでいた

    ○4人の視点を切り替えながら、教室の出来事が語られていく
    ○読者は子どもか大人かで、感想が変わりそうだ
    ○先生の独白が読者に届くとよいな
    ○子どもたちの問題で、当事者たちはみんなが何かを抱え立ちすくんでいる

  • 小6の男子5人、仲良しグループだったが、クラスでも明るくて中心人物の颯斗が清也に嫌がらせをするようになり、ある日、ランドセルの中に金魚のエサを流し入れたところから物語は始まる。14章で、語り手が四人。三人は当事者の小学生で一人は担任。
    テーマが重苦しいから、読んでスカッとするお話ではないけど、小学校では配架すべき本だと思います。小学~中学のうちは、こういう心がヒリヒリするような本を選書する児童も多いですし。
    子どもからみたトラブルの解決に大人がどう手を差しのべるべきなのか、考えさせられました。

  • いじめられる子、いじめる子、そばで見ている子、担任の先生…色んな人の視点でいじめが描かれている。いじめを止めなかっただけでも、いじめに加担している。いじめられた側は、大人になっても忘れない。いじめた側には一生の傷が残る。よく言われることだけれど、それぞれの立場のリアルな気持ちがこの本に込められていて、改めて身につまされる。
    子どもたちが大人に意見することはとても勇気がいるし、怖いこと。そのことを、私たち大人は忘れてはならないし、教師も保護者も大人として、子どもたちを守る責任がある。そして、子どもの話をちゃんと聞いてくれる大人は必ずいるから、子どもたちは、大人に自分の気持ちを話すことを諦めないでほしい。
    現時点でいじめがある・ないに関わらず、子どもにも大人にも読んでほしい本。

  • 児童書と侮るなかれ。
    分かりやすい言葉でいじめ問題に真正面から向き合った作品。

    発端はランドセルに金魚のエサが入れられた事件。
    6年生のクラスで何が起きているのか。

    加害者、被害者、見て見ぬふりのクラスメイト、穏便に済ませたい担任、謝らせ握手させる事で一件落着とする学年主任、保護者、それぞれの思惑が入り混じる。

    皆の本音から自己保身や想像力の欠如が浮き彫りになり、怒りと悲しみで胸が苦しくなった。

    子どもの気持ちに寄り添う事、言葉に出して話し合う事、想像力を働かせる事。

    一人一人が意識して行動する事の必要性を強く感じた。

  • 各章で語り手がかわっていくが、いじめ問題に直面する担任の先生の内面が描かれている章に惹き込まれた。過去に自分がいじめに加担した友人との会話は、子供達が主人公の物語にインパクトを残している。

  • いじめについて書かれた本

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著者プロフィール

『セカイの空がみえるまち』で第3回児童ペン賞少年小説賞を受賞。『となりの火星人』、「恋する和パティシエール」シリーズ他作品多数。日本児童文学者協会会員。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。

「2023年 『リトル☆バレリーナ  きらめきストーリー☆3つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

工藤純子の作品

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