- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065306390
作品紹介・あらすじ
人生の折り返し点を過ぎた男たちが、平凡な地方の町を侵食する欲に塗れた悪事に立ち上がる、一発逆転のリベンジゲーム。
どんなお話?)鄙びた港町にある銭湯、みなと湯は地元で暮らす昭和世代にとっての密かな憩いの場だ。第一線を退き地元の支局に異動してきた新聞記者の弘之、老朽化した風呂釜修繕の金策に走る銭湯主人の邦明、暴力団を首になった釜焚き係の吾郎、儲からない骨董屋の跡を継いだ富夫らは、それぞれ人生に諦念を抱きながらも日々そこで交流を深めていた。彼らの前に突然現れたのは、不審死したみなと湯の銀行融資担当・丸岡の元婚約者・礼美。彼女は丸岡の死の真相と銀行の悪行を四人に訴える。
【本読みの達人たちから大絶賛ぞくぞく!】
しなしなのアラ還オヤジたちが巨悪との勝ち目薄き闘いに挑む。人生を取り戻していくその姿は勇気の塊。なんて愉快なおじさん小説!―文筆業 門賀美央子
こんな俺たちにも命がある。そう簡単にふみ潰されてたまるかよ――そんな呟きが聞こえてくる、見事な人間賛歌だ。―ミステリー評論家 杉江松恋
「人生の終焉が見え始めた男たち」が、本当に初めて見たもの。とんでもない「幸福の王子」に胸熱必至!―書評家 藤田香織
闇に迫れるのは、正攻法か、裏の手か。力なき庶民の巨悪への挑戦を、きめ細かく描いた著者の筆致に感服した。―ミステリー評論家 千街晶之
目を覚ましたならず者たちによる、あっと驚く逆転劇が素晴らしく小気味よい。―ミステリー評論家 吉野仁
うわあ、してやられた。「老い」は何かを諦めた時から始まるのだ。正攻法と搦め手を駆使し巨悪に挑む男たちの姿が眩しい!―ミステリー評論家 西上心太
今のままでいいのか、と強く問いかけられた。これは後悔を抱えたすべての人へ贈る、悲しくも力強い逆転のミステリだ。
―書評家 大矢博子
優れた社会派ミステリー。だけど、それだけじゃない。この物語、裏がありすぎる。―文芸評論家 細谷正充
著者の地元を舞台に設定した汚職禍を、果敢にミステリーに仕立て上げる作家魂を尊敬します。―担当編集
人生のたそがれ時を迎えた男たちに贈る応援歌。どんなにかっこ悪くても、最後までジタバタするべし。―著者
感想・レビュー・書評
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丸岡将磨という銀行員が松山市内の川で溺死体で発見されます。欄干から落ちた事故死とみなされますが、同じ銀行で働いていた恋人だったという友永礼美が、初老の男5人が集まるみなと湯にやってきて「あれは殺人であり、銀行と病院のあいだの不正融資を知って殺されたのだ」とみなと湯に集まっていた初老の男たち、新聞記者の宮武弘之らをたきつけます。
弘之は事件を調べ出し、病院で医療過誤があったことを発見します。また、みなと湯の常連客の小松富夫は元暴力団の巽達郎と組んで氏家という悪徳金融ブローカーからみなと湯に融資されるはずだった一千万円を横取りしようとしますが、果たしてその辺のおじさん達のたくらみが上手くいくものなのか…?
そしてまた、あとになって死んだ丸岡には10年来の彼女がいて礼美とは恋人同士ではなかったことが発覚します。礼美は銀行を辞めて姿をくらましています。なぜ、礼美は他人の丸岡のためにみなと湯にやってきたのか…?
以下、ネタバレ含む感想なので、これから読まれる方はお気をつけください。
出てくる人物は初老のおじさんばかりですが、事件はとても上手く解決します。
警察や法の力を借りず、みなと湯に集まる5人の男達が大活躍します。
病院の不正は明るみに出て、悪徳ブローカーから取ったお金は大変有意義に使われます。
おじさん達、あっぱれ!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
可愛いキャラに痺れる!沈みゆく夕日に、今一度立ち上がるオッサン達が熱いミステリー #逆転のバラッド
■あらすじ
銭湯を営む邦明であったが、経年劣化した風呂釜修繕のため、銀行に資金の融資を相談していた。しかしある晩、銀行の担当が亡くなってしまい、融資の話は流れることに。
途方に暮れる邦明は、銭湯の常連、新聞記者の弘之、骨董屋跡継ぎの富夫、従業員の吾郎に相談するも、解決せずに途方に暮れる。
ある日、亡くなった銀行担当の彼女が銭湯に訪れ、銀行の不正と不可解な死を訴えるのであった…
■きっと読みたくなるレビュー
おもろい! ストーリーもまとまってるし、抜群のエンタメ度。
裏社会の犯罪を描く社会派ミステリーでありつつも、嘆かわしくも微笑ましい登場人物たちが超可愛い(おっさんだけど)。
プロットはもちろん、文章を読ませる芸当も上手。ユーモアも小気味よく、さすがはベテランの作家先生です。どなたでも読んでもらえる、楽しいミステリーでした。
本作はあまりにもキャラクターたちが可愛いので、個々レビューしちゃいます。
○新聞記者:弘之
昭和のバリバリの新聞記者、ただしそれは過去のこと。
仕事場で戦ってきた男の悲哀。時代は変わりましたが、気持ちわかるなぁ。同じおっさんとして、読みながら応援しちゃいました。
○銭湯主人:邦明
可愛すぎ。愛媛弁が良いんですよ。「これ、な~んぞっ」とか、最高!
こんな人が友達なら、一緒に楽しく過ごせるでしょうね。
○銭湯釜焚き係:吾郎
これまた可愛すぎ。セリフ、行動、何もかも人柄の良さがにじみ出ている。
前向きなところが素敵、一緒に居酒屋でいっぱい呑みたくなる人。
○骨董屋跡継ぎ:富夫
9割の男は、こんなもんですよ(私も含め)。親近感、愛着があって大好きですね。
素寒貧で影響力もない、もう人生の終焉が見えつつある彼らが、とある事件をもとに逆転のバラッドをしたためていく。イケメン、金持ちがカッコイイのはわかりますが、こんなおっさんたちも十分絵になる! カッコいいんです。
そして本作は、社会派小説としても良くできてます。
最初は半沢直樹かと思いましたが、中盤からに厚みがでてくる展開に。登場人物もどんどん生き生きと活躍していく様は、読んでいてスカッとしますね~
そのままドラマ化できるような、素晴らしいエンタメミステリーでした。
■きっと共感できる書評
最近はネットニュースに個人の考えや意見をコメントできるようになりましたね。
例えどんな悪事であっても、様々な背景やいろんな人の感情があって起きた事件はず。しかしコメントする人たちは、安全な場所から正義を振りかざし、当然のように断罪するコメントばかりです。
罪を犯せば罰が与えられるのだから、それでいいでしょうに。親や子ども、友人知人がそれを見てどう感じるか、考えたことはないのでしょうか。
きっと本作に出てくる彼らなら、どうすればより良い社会に改善できるかなど、前向きな提案や行動をしてくれるでしょう。自分も大した社会貢献ができてないダメ親父ですが、こんなカッコいいおっさんになりたいと思いました。 -
いいねぇ〜
初老を迎えたちょっとくたびれたおっさんたちが一念発起して巨悪と闘う物語
人生に疲れ故郷に戻り安穏とした日々を過ごす男がかつての輝きを取り戻しながら足りなかったモノに気付かされる物語
う〜んベタや
またしてもベタ設定や
でもそこがいい!( ・∀・)イイ!!
ベタ大好きのワタクシといたしましては
ベタ設定に少しのスパイス
ちょうどいい味変
( ・∀・)イイ!!
宇佐美まことさん
もうちょっと追ってみよう-
2023/05/03
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2023/05/03
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2023/05/03
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アラ還オヤジたちが巨悪に立ち向かう姿に応援したくなる。
ひとりの銀行員の死に疑問を持つことから始まった。
みなと湯の融資の為に親身になってくれた彼が何故という疑問から常連客である新聞記者の宮武が動く。
病院の不正融資を計画した金融ブローカー絡みだけでなく、難病治療においての問題など背後には人間の欲望、邪念、自己保身、傲慢さ、脆弱さなど数々の感情が溢れていた。
アラ還オヤジたちの家庭の在り方などもまた興味深くて楽しみながら読み進めた。
しかし、元チンピラヤクザで、みなと湯の釜焚きで、へたくそな手品師で、天狗堂に出入りして玩具や古道具に歓声を上げる無邪気な男にやられたなぁ。
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何これ!めちゃくちゃ良かった‼︎
風呂屋、骨董屋、元ヤクザ、新聞記者
頼りになりそうなのは新聞記者だけで残り3人は初老?老人?
元ヤクザの釜番のゴローが好きなキャラ♪
事件探っていくうちに1人くらい死ぬなんてよくあるパターンだし…ゴロー死なないでね!とハラハラしながら気が抜けない。゚(゚´Д`゚)゚。
1人の銀行員の転落死から事件が想像以上に広がっていく面白さ!
ラストが痛快で王道のハッピーエンド‼︎
施設にいるお兄ちゃんの絵葉書を章タイトルにしてるのもグッときた\(//∇//)
何かストーリーは全然関係ないけど
雲霧仁左衛門を思い出して読みたくなった笑
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2023/05/27
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2023/05/27
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2023/05/27
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初読みの作家さん。
読み進めるうちに、横山秀夫氏や塩田武士氏や薬丸岳氏の作品の傾向に似ているような気がしてきた。
私は彼らの全く明るくはないが緻密で骨太な作品が好きなのだ。
そういう途中の段階で、お名前からは性別がわからなかったが、調べたらすぐに本書の著者は女性であるということがわかった。
今の時代こういうことは言ってはいけないのかもしれないのだが、少なくとも私の今までの読書生活において、女性の作家さんが書いたこのような作品に出会ったことがない。
だからとても意外だった。
しかしもっと読み進めて行くと、途中途中で「きっとこうなんじゃないか?ああなんじゃないか?」と気付いて想像した通りの真相が徐々に明らかになっていき、ラストに向かううちに、冒頭に挙げた3名の男性作家さんとはやはり雰囲気が全く違うなという結論に至った。
ちなみに私は子育ての過程で「男の子なんだから」「女の子なんだから」「男の子らしく」「女の子らしさ」ということは一度も口にしたことがないし、思ったこともない。
(ついでに「お兄ちゃんなんだから」と言ったこともない。)
だから作家さんの作風を性別で考える必要はないのだと頭ではわかってはいるのだ。
しかし先の3名の男性作家さん達の骨太作品が好きな私が、途中まではその方々に似ている作風の女性作家さんて初めてだなと少し驚き、最終的には、「ああ『やっぱり』全然違う。もちろんあれはあれで良いが、これには『柔らかさがある』。これ凄くいい!」と思ってしまったのは事実だから仕方ない。
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グッジョブ!の一冊。
心枯れかけた初老のおじさん達が巨悪に立ち向かうストーリー。
ガラッと印象が変わる気持ち良さだった。
くすんでいた心が次第に磨かれて、自分を見つめ直し、成すべきことのために、相手のために一生懸命になる姿は人生経験を積み苦を知り尽くしたおじさん達だからこその沁み感。
読み手にも気づきの風を吹かすようなヒラリと舞い込む絵手紙も良いスパイス。
意外感、爽快感伴う展開は小説ならではのグッジョブ!
人それぞれの正義、心が満たされてこその幸せも伝わる。
こういう最後にホロっと泣かせてくれる宇佐美作品、一番好き。 -
スカッとする一冊。人生の下り坂にいるオヤジたちが一念発起!ただの逆転劇じゃなく、しっかりとミステリー要素もあり、どんでん返しも用意されていて、読み応え十分でした。
冒頭である銀行員が殺されます。その銀行員の恋人という女性がオヤジたちの集まるみなと湯にやってきて、彼は殺されたのだと言い、気の良いオヤジたちは、彼女のため、事の真相を探ろうと動き出します。
その真相は、巨大な悪が潜んでいて、それが発覚した頃には彼女がいなくなり、殺された銀行員の恋人ではなかったことがわかり・・・。
色んな謎が絡んでいて最初から最後まで楽しく読めました。世の中の中年オヤジたちにエールと檄を飛ばしてくれる一冊。読後感もスッキリ! -
前半は事件と登場人物同士の繫がりがよくつかめず、自分には合わないかもと思いながら読みすすめた。
が、事件の真相が見え始めておじさん達が活躍し出した中盤から、急に面白さが加速。
そこからは一気に読んだ。
何が正義なのかよくわからないけど、こんな人の繫がり方もいいなと思った。 -
熟年を迎え、人生に疲れを感じ始めた男たちが義憤に駆られて、不正を働く町の権利者たちに立ち向かうサスペンスミステリー。
◇
宮武弘之。東洋新報松山支局記者。
東京本局での出世争いに敗れ、故郷の松山でルーティンワークをこなしながら定年退職を待つのみ。息子は独立して家を出て行き、妻からは熟年離婚を申し渡され、孤独な生活を送っている。
戸田邦明。町で唯一となった銭湯みなと湯の主人。
66歳になり、みなと湯の古い薪釜同様くたびれてきた。老妻と2人、できるところまでがんばろうとは思うが、風呂釜の交換時期に来ており、その費用に頭を悩ませる毎日だ。
小松富夫。邦明の幼なじみで怪しげな骨董品屋を営む。
家では自由気ままな父親と気が強く偉そうな妻との間で気を遣い、心の休まるときがない。そんな自分を情けないと感じながらも、みなと湯で邦明たちとたわいない話をするのが唯一の気晴らしだ。
定本吾郎。みなと湯の釜焚き。
元は暴力団員だったが、お人好しで悪事に向いていず組をお払い箱になった。流れ着いた松山で知り合った邦明に雇ってもらった恩は忘れていない。
みなと湯が休みの日は趣味の手品を活かし、ボランティアで施設を回るのが楽しみだ。
巽達郎。かつて暴力団で定本吾郎の後輩だった。取引でヘマをして窮地に陥ったところを吾郎に救ってもらったことを恩義に感じている。現在は大阪で特殊詐欺グループに属しているが末端扱いの人生に嫌気が差している。
こんなしょぼくれた男たちが立ち上がった。きっかけは、みなと湯の銀行融資を担当していた瀬戸内銀行三ツ浦支店の行員、丸岡将麿が松山市内の川で溺死体で発見されたことだった。そして、丸岡が太鼓判を押したみなと湯への融資話がなぜか凍結されていたことも判明する。
いつものようにみなと湯で集まり丸岡の死を悼み、融資凍結に憤っていた宮武たちのもとを友永礼美という女性が訪れる。
礼美は丸岡の婚約者で、丸岡は殺されたのであって、その死の裏に松山西部病院への不正融資が絡んでいて、丸岡はその不正について調べていたから殺されのだと訴える。
宮武の記者魂に火が着いた。
一方、邦明に恩義を感じている吾郎も達郎と計って一世一代の大博打に打って出ようとしていた。
* * * * *
巨悪に立ち向かうしょぼくれ男たち。ドン・キホーテに勝ち目は薄いように思うけれど、作戦実行に適した役者が揃っていたのです。
新聞記者の宮武。詐欺師の達郎。そして元暴力団員にして奇術師の吾郎。さらに怪しげなモノを店先に並べる富夫。
物語は正攻法を仕掛ける宮武を中心に描かれます。それはそれでおもしろかったですが、やはり時間がかかるし、大勝とはいきません。
大きな見せ場となったのは、物語終盤の吾郎と達郎の活躍です。
達郎が組織から大金を騙し取ります。富夫は邦明のために達郎を輔け、現金の運び役を務めました。ちなみに詐欺のネタになったのは富夫の骨董品屋にあった模造金塊でした。
そして吾郎はというと……。
中盤まではジリジリする流れだっただけに、この最後の展開にはシビれてしまいました。
社会正義だけでは裁けない悪は現然として存在します。そのもどかしさを身にしみて知っているだけに、痛快な読後感が味わえる、男たちの武勇伝でした。