人間の条件 (講談社学術文庫)

  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065314272

作品紹介・あらすじ

1957年10月4日、ソヴィエト連邦によるスプートニク1号の打ち上げによって、人類は初めて人工衛星を軌道周回させることに成功した。これは「その重要性において並ぶもののないこの出来事」だったが、「奇妙なことに、湧き起こってきたのは勝利に満ちた喜びではなかった」――翌1958年に英語版が出版された『人間の条件』は、そう始まります。こんな書き出しをもつ哲学書は前代未聞と言えるでしょう。
では、人工衛星の実現が人類にもたらしたのは何だったのか。そのとき人類は「これでようやく「地上という牢獄から人間が解放される第一歩」が踏み出されたという安堵の念」を抱いた、と本書の著者ハンナ・アレント(1906-75年)は言います。確かに、人々は「地上」で十数年前まで激しく戦われていた二度目の世界大戦がもたらした凄惨な状況を鮮明に記憶していたことでしょう。その悲劇を引き起こした原因を、アレントは7年前に大著『全体主義の起源』(1951年)で分析してみせました。今や、それを「人間の生活(生)」という観点から哲学的に考察することを企てたのが、本書『人間の条件』にほかなりません。
科学と技術の進化によって実現された地球からの脱出――それは、アレントから見れば、「地上」の世界からの「飛翔(flight)」であるとともに「逃避(flight)」でもありました。その二重の意味を込めて、アレントは「世界からの疎外(world alianation)」と呼びます。その疎外はいかにして始まり、人間の生(生活)をいかに変えたのか。この問いに答えるために、アレントは人間の生活(生)の重心が「観照的生活(vita contemplativa)」から「活動的生活(vita activa)」に移行したことを明らかにします。その上で「活動的生活」を「労働(labor)」、「仕事(work)」、「行為(action)」の三つに分類し、それらの絡み合いの中から科学と技術が生まれ、進化を遂げるに至る道筋を細やかにたどっていくのです。
本書が書かれてからすでに半世紀以上が過ぎ、科学と技術は当時では想像もできなかったほどの飛躍的な進化を遂げています。AIの登場によって「人間」とは誰なのかが不分明になりつつある現在、「人間の条件」を考えることの重要性と必要性がさらに増していることに異論はないでしょう。長らく待望された本書の新訳を、第一人者による正確にして平明な日本語でお届けできる時がついに訪れました。

[本書の内容]
プロローグ
第I章 人間の条件
第II章 公的領域と私的領域
第III章 労 働
第IV章 仕 事
第V章 行 為
第VI章 活動的生活と近代
謝 辞
訳者解説
索 引

感想・レビュー・書評

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  • 0341夜 『人間の条件』 ハンナ・アレント − 松岡正剛の千夜千冊
    https://1000ya.isis.ne.jp/0341.html

    『人間の条件』(ハンナ・アレント,牧野 雅彦):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000365277

    --------------
    新刊 立岩真也『増補新版 人間の条件 そんなものない』: 新曜社通信(2018年5月 4日)
    https://shin-yo-sha.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/post-e0f1.html

  • 高校の時以来のアレント.
    いんやぁ!難しい!
    はるかに読みやすくなっているし,学んだ分だけ理解できた点もあるけど…
    これは西洋哲学史やキリスト教が身に染み付いてないと本当の理解はできないと思う…
    しかし断片的理解にしても読む価値はあるし,現代社会を思考するためには通るべき1冊だと思う.

  • N120

  • AI時代に、何をもって「人間」とするかを考える上で、必読だ。
    われわれははたして、アレントの言う「行為」をしているだろうか。「政治」をしているだろうか。
    人間ではなくなってしまう前に、読んでおこう。とくにⅤ章「行為」を。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/563216

  • B1/1/2704/K:東2法経図・6F開架

  • 新訳!

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著者プロフィール

1906-75年。ドイツに生まれ、アメリカで活躍した哲学者・政治思想家。主な著書に、本書(1958年)のほか、『全体主義の起源』(1951年)、『革命について』(1963年)など。

「2023年 『人間の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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