「複雑系」入門 カオス、フラクタルから生命の謎まで (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065316245

作品紹介・あらすじ

複雑系は、科学が築きあげてきた「近代のパラダイム」を根底から覆した。人間の予想とはかけ離れた、しかし自然のなんらかの真理を表している複雑系が、科学の王道からこぼれ落ちた人々によって発見されていくさまを物語仕立てで描き、複雑系の本質を誰にもわかりやすく解き明かす!

感想・レビュー・書評

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  • 「複雑系」入門 カオス、フラクタルから生命の謎まで
    著:金 重明
    ブルーバックス B2227

    おもしろかった
    見えざるルール、微細なものに潜む隠れた真実、まさに、「神は細部に宿る」だ!
    科学万能の現代、わからないものはほとんどないとみんな思っているに違いない
    だが、それは誤りである。古代から現代、いまも、世界は、複雑系というなぞに包まれている

    気になったのは、以下です。

    ニュートンの有名な言葉 万有引力を発見したときの視野をさして
    「わたしが巨人の肩に乘ったからです」

    微分方程式は解ける、教科書にはそうある、でも、真実は違う、教科書にあるのは、人が解くことができる微分方程式しか載っていないのだ。それが証拠に、別の教科書に、微分方程式の数値的解法というものが用意されている

    ■バタフライ効果

    天体の三体問題は解けない

    初期条件の微小な変化が結果に大きな差をもたらすもの、それをバタフライ効果と呼んでいる

    ロジスティック関数、初期値によって大きく変動する

    複雑系の研究は、数値の膨大な計算によって始まる、つまり、コンピュータの登場とともに始まったといっている

    近代のパラダイムの第1の矢は、「バタフライ効果」である

    ■フラクタル

    コッホ曲線

    あらゆる部分が全体と相似にである図形のことを、フラクタルといっている

    数学は、壁にぶち当たると、その壁をぶちぬくために、定義を拡張する、それを一般化という

    フラクタル図形は、微分ができない。

    海岸線を計測するとき、計測する単位を小さくしていくと、海岸線の長さはどんどんと伸びていく

    人体にもフラクタルが存在する、肺胞、小腸の柔突起、腎臓の糸球体、そして、脳の表面のしわも、フラクタル的構造である

    シェルビンスキーの三角形

    メンガーのスポンジ

    ジュリア充填集合、その境界をジュリア集合という

    マンデブロ集合

    近代のパラダイムの第2の矢は、「フラクタル」である

    ■ライフゲーム

    セル・オートマトン

    ウラムのゲーム 単純だが、予想もつかない変化をとげるパネルゲーム

    ■細胞

    従来の生物学のアプローチ:生物を種、生物体、器官、組織、細胞、細胞小器官、分子に分解して理解スルアプローチ

    DNAは同じなのに、生成されるたんぱく質が全く違う
     ⇒ つまり、DNAを調べただけでは、どんなたんぱく質がつくられるかわからない
     ⇒ DNAがすべてを決定しているわけではないようだ
     ⇒ 細胞の中には、全体を統制しているコントローラがみあたらない

     ⇒ 一つの受精卵が、人間のあらゆる器官をつくる不思議

    たんぱく質に別の物質が結合して形がかわってしまう ⇒ アロステリック効果

    生物の細胞の種類は、その生物の遺伝子の数の平方根に等しい

    ■生命の誕生

    隕石には、1万種をこえる、有機物が含まれていた

    DNA,RNA自体では、自らを複製することはできない
     ⇒ カウフマン仮説 DNAやRNAのような複雑な分子ではなく、アミノ酸やヌクロチドなどの基本的分子がネットワークとつくったのが生命の始まりではないのか

    大村智氏 あたらしい微生物をみつけるとかならずその生成物質を調査していた
     ⇒特効薬、新素材である可能があり

    生命の不思議 なぜ生命は雌雄にわかれているのか?
     ⇒ 多くの生命は、子孫を残すためには配偶者を探さなければならず、そのために膨大ナエネルギーを浪費している

    目次

    はじめに
    第一章 近代のパラダイム
    第二章 カオス
    第三章 フラクタル
    第四章 ライフゲーム
    第五章 カオスの縁
    第六章 生命
    第七章 経済・歴史・社会
    おわりに
    さくいん

    ISBN:9784065316245
    。出版社:講談社
    。判型:新書
    。ページ数:256ページ
    。定価:1000円(本体)
    。発売日:2023年04月20日第1刷

  • あえて「複雑系」と括弧に入れているところの意図はあるのだろうか。本書は、複雑系の科学に大いに刺激を受け、自分の小説の中にも複雑系の思想を組み入れたという作家が、関係するトピックスを渉猟してまとめてブルーバックスに書いたものだ。
    カオス、フラクタル、ライフゲーム(人工生命)、カオスの縁といった複雑系の科学の中で出てくるアイテムが一通りとても分かりやすく解説されている。

    著者は、カオス、フラクタルなどを知ったときに、それがどうしたのだといった感想をもったそうだが、カウフマンの著作(おそらく『自己組織化と進化の論理』や『カウフマン、生命と宇宙を語る』)を読んで複雑系の科学が第二の科学革命としての可能性をもつものであると理解したという。それは自分が『自己組織化と進化の論理』を読んだときに持った感想とほぼ近しい。実際、『自己組織化と進化の論理』読後のレビューとして次のように書いている。
    ------
    「複雑系の科学」の射程と可能性についてこの本を読んで初めて理解ができたような気がする。その昔、「複雑系の科学」というものが華々しく出てきて、サンタフェ研究所がその最先端の研究をやっているとして紹介された時代に、ミッチェル・ワールドロップの『複雑系』を読んだ。フラクタル図形はきれいで不思議だけれども何の役に立つのかわからない、バタフライエフェクトは何だか胡散臭い、という印象を持ち、それ以来真剣な興味の対象にしてこなかった。
    ------

    「複雑系」は誤解を恐れずに単純化すれば、単純な規則からそこから想定を超える複雑で多様な構造ができあがるというものだ。生命や社会は複雑系であり、その生成と変成は複雑系から生まれる創発によるものだ。生命は、ニュートンや量子力学などの物理学に従うが、物理学を超えた存在となりうるのである。それを正しく理解するためには、複雑系の探究が必要となってくるのだ。

    「複雑系」の入門としては適切な本であり、優れてブルーバックス的な本である。

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    『自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則』(スチュアート・カウフマン)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4480091246

  • フラクタルやライフゲームなど、この分野の初期の話題が中心。
    カウフマンは出てくるが、ストロガッツは全く出てこない。
    けっこう昔の本かと思って出版日を確認したが、ごく最近のもののよう。文章としてはエッセー風で読みやすいが、、、
    Jグリッグの「カオス」の出版が1991年だが、内容的にはそこから新しいものはなく、今この本を出す必要があるのか疑問。

  • 2023/05/26 amazon 990p

  • 年末年始の帰省のお供に一読。
    カオスやフラクタルなど用語は聞いたことはあるが具体的なイメージができていなかったことに対して、一定の理解が進んだことはよかった。
    一方、説明や章ごとのバランスが悪かったり偏りがあるようなところ、章間のつながりがいまいちわからなかったりと後一歩に感じるところも。

  • 20年くらい前にブームになった複雑系から
    何もアップデートできていない。
    複雑系の科学は、結局何ができて(できそうで)、
    これまでの科学と何が違うのか、を示せていない。
    とても残念な本

  • ・ロジスティック写像
    昆虫。0はこの生物が絶滅。1は環境全体にあふれる。ある年の生息数がxであった場合、その次の年の生息数は、ax(1-x)。aは0~4。xは0以上1以下。
    ・コッホ曲線
    最初長さ1だったものが、コッホ曲線の長さは∞になる。右と左に端があるのに長さが無限大とは理解不能。コッホ曲線のフラクタル次元は約1.26となる。
    シェルピンスキーの三角形
    最初の面積は1だが、その三角形の面積は0になる。フラクタル次元は約1.58。
    ・バーンズリーのシダ
    ・ジュリア集合
    ・マンデルブロ集合
    ・ライフゲーム
    ・カオスの縁  サンタフェ研究所
    ・「ここまで、カオス、フラクタル、セル・オートマトン、カオスの縁などを見てきた。これらの 現象はそれ自体、非常に興味深く、現在も研究が進められている。しかし、複雑系の科学が目指している目標がここにあるわけではない。敵の“本陣”は誰が何と言おうと、人類最大の謎である生命であり、そして、その生命がつくり出した人間の社会、歴史、経済なのである。」
    「コンピュータ上のシミュレーションでは、原始のスープの中で相転移が起こり、カオスの縁で 生命誕生の創発が起こることは確認されている。しかし、実験室では成功していない。もし実験室でそれが実現したら、地球がひっくり返るような大騒ぎになるはずだ。何しろ四十 億年ほど前に地球上のどこかで一度起こったのはほぼ確実だが(生命の起源は宇宙のどこかだ、という説もあるが・・・・・・)、 それ以後は一度も確認されたことのない事件なのだ。しかし複雑系の科学にもとづくシミュレーションはかなり信憑性があり、その線にのっとった 実験が日々おこなわれている。もしかしたらわたしの目の黒いうちに、実験室で生命誕生、というニュースを聞くことができるかもしれない。」
    筆者の上記の言葉のように、この本はカオスとフラクタルだけについて述べているのではなく、まさしく複雑系の話で、カオス、フラクタルからはじまり、生命、社会まで複雑怪奇な状況を示している。細かいところは読み飛ばしたけど、じっくり読んでみたいもんだ。

  • とてもわかりやすく、簡潔にまとまっていて面白かった。微分積分も線形代数も大事だが、こういう数学が、数学自体の今後の進歩や新しい応用の基礎になっていくように思う。広く読まれてほしい。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/563926

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。1997年『算学武芸帳』(朝日新聞社)で朝日新人文学賞、2006年『抗蒙の丘―三別抄耽羅戦記』(新人物往来社)で歴史文学賞、2014年『13歳の娘に語るガロアの数学』(岩波書店)で日本数学会出版賞を受賞。そのほか『小説日清戦争ーー甲午の年の蜂起』(影書房)、『13歳の娘に語るアルキメデスの無限小』(岩波書店)、『方程式のガロア群』『世界はeでできている』(いずれも講談社ブルーバックス)など、数学分野の著書も多数。

「2023年 『「複雑系」入門 カオス、フラクタルから生命の謎まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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