愛されなくても別に (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 797
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065317129

作品紹介・あらすじ

第42回吉川英治文学新人賞受賞作!
祝デビュー10周年!

時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。
息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の代表作!


遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惹かれて購入。帯に書いてあった通り、一気読みしました。
    星5つじゃないのは、私の年代よりは、高校生や大学生くらいの若い子向きな小説かなと思ったからです。厳しい家庭環境で育った20歳前後の二人が、大学で出会って、生きる力を得ていくストーリー。
    同じような境遇で、進路や家族関係に悩んでいる高校生とかが読んだら、「大学」といういろんな人間が集まる場所に行けば、一人でいても別に大丈夫だし、もしかしたら理解し合える人との出会いがあるかもしれない、と希望が持てると思う。(そういう意味でも読書習慣って本当に大事だと思う。救いのない環境に育って、本を読むことも知らないままだと救われるきっかけが得づらい)。
    主人公のヒイロは母親が浪費家で、自分のアルバイト代に依存してくる。家事も一人で全部こなし、母が「愛してるわよ」ということを疑うこともできず、愛されているから親を許さなければいけない、と思わされている。
    大学で出会う訳ありの友達、「エナガ」は、父親が殺人犯と噂されていてみんなから避けられている。
    ヒイロは、自分より不幸そうな人に興味があり、「それでも私の方がまだ不幸だ」と思うことで自分を保っているところがあり、エナガに興味をもって近づく。
    二人は友達のようになっていくわけだが、正直言って、「親からここまでヒドイ扱いを受けて育って、そんな簡単にお互いの心の内を打ち明けられないはずだ、だから現実はもっと複雑なんだ」と突っ込みを入れながら読んでいた。
    しかし、物語の終盤、なぜ二人が友達になれたのか、ネタばらしのような仕掛けもあり、「おぉ!なるほど!」と納得。テーマは重いけどライトノベル?と思ったけど、ライトノベルと言い切れない完成度だった。
    (解説によれば、著者はライトノベルから出発して、最近では一般文芸として高く評価され始めているらしい。本作も確かに、ライトノベルの筆致ではあるがライトノベルとは言い切れない作品だと思った。←偉そう。

  • 「家族」「友達」「恋人」そういった人々の存在が世間ではもてはやされている。
    時にその存在が人生の全てで、そこから逃げ出せないような感じすらしてくる。
    でもそうじゃないだろ!!
    そう叫び出すみたいな、潔さと勢いのあるお話だった。

    「この人のためになら生きてもいい」
    そう思えることがとてもかけがえのないことで、時に「愛」よりも救いになる。
    宮田と江永は、名前のつけ難い緩やかな関係性の中で、お互いの存在に救われている。
    それは世間の言う「愛」とは少し違うのかもしれないけど、確実に生きる力になっている。

    人と人との関係って、こうあってもいいんだと思えて、心がなんだか軽くなった気がする。

  • 親がいること、何不自由なく生活できていること、身の回りのありがたみを改めて感じられた。ひどい扱いを受けても親だからと母親を嫌いになりきれない宮田と家族なんて幻想と考えている江永。愛情はすべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない、というセリフに感銘を受けた。
    しかし宮田と江永が共依存しているような感じがして心地よくはなかった。

  • 実の親との確執を持つ社会のはみ出しモノ同士の共同生活。

  • 2人のそれぞれの過去を共有して依存し合ってる姿が生々しくて良かった

  • 4.0
    ところどころ自分に刺さるフレーズがあった。こういう本はまた読み返したい。

  • 余韻残るストーリーに心奪われました。
    あの2人にはこれからも自由に生きてほしいな。

    物語の内容は、毒親が胸糞悪くて正直辛かったですが、読み終えると2人の関係性にほっこり。

    血の繋がった家族であれば無条件に支え合わなければならないんでしょうか。心に残ったのは“ーーー愛されてたら、子供はなんでも許さなきゃいけないわけ”⁉︎という言葉。愛してるの言葉って捉え方によっては呪縛にもなってしまうのかと考えさせられました。読了後に見るタイトル「愛されなくても別に」の文字は読了前のそれとは言葉の重みが全く違って見えます。

    今作で初めて武田綾乃さんの小説を読みました。何気ない日常のリアルな幸せを描くのが上手でしみじみ。まるで映像を見ているかのような作品でした。

  • 愛されなくても別に
    タイトルから依存系百合作品かな、と思ったけど
    惜しいけど違った。

    自分が不幸と思う気持ちは、人と比べてもなんの意味もなく、本人が不幸だ、と感じていれば、他者からそれは不幸なんかじゃないと言われても関係ない。
    隣の芝は青く見えるもの。
    家族というものは、無条件に愛し愛され、許し合わなければならないのか?
    親は愛する義務があるかもしれないし、子はそれに応える義務があるのかもしれない。
    でも、そんな依存的な関係は歪だ。
    親と子だって、結局は同じ人間じゃない、他人だ。
    子は一人立ちするまで育ててもらった恩はあるかもしれない、だからと言って個人としての尊厳を脅かされる必要はない。一人の人間だ。
    愛してる、という言葉は美しいようで呪詛のようだ。
    愛してる、だから私のことを許してね
    そんな言葉にも聞こえる。
    私は誰かに対して、愛してるという気持ちは分からないが、誰かを必要だと思えるようになりたいなと思った。

  • 愛されなくても別にいいじゃん。って言ってる江永が陽彩の愛に救われてるのがすごく良かった。愛は必要かもしれないけど、別にいーやって思ってるだけで強くなれるんだなあと。欲しい欲しいって思ってると疲れるしね。

    親子の問題は本当に深いと改めて感じさせられる。自分が子供を持ったらまた違う観点から読めるかも、、自分の一つ一つの言動が子供の人生や性格を左右してしまうことは凄く恐ろしいように感じるし、未知の世界すぎてわからん。自分が気にしてないような振る舞いが子供の心を傷付けちゃうんじゃないかなって恐怖でしかないよね。子供が、親も人間だし間違えるし結局他人って 思れば楽になるのかな

    お金にだらしない親を持つヒイロと、学費も払ってもらって仕送りも沢山もらってるのに不幸だと感じる大学の同級生の子の対比が良かった。「私を苦しめるものが、もっと分かりやすい不幸なら良かったのに。」が印象的。やっぱり人の苦しみはそれぞれだし、結局は自分にしか分からないよね。自分は苦しくても他人にとっては高望みだと思われるかもしれない。それでも寄り添うことはできるから、寄り添ってくれる誰かがそばに居てくれるといいよねって思った。

  • 武田綾乃さんは「響け!ユーフォニアム」シリーズで元々知っていた。
    物語は大学生の日常で一見よくありがちな設定だが、「孤独」に焦点を当てている。家族や友達でもない人間関係、恋愛以外の「誰かに愛されたい」気持ち。日常を描いているのに何故か今まで考えたこともなかったことを考えさせられたり感じたりできる物語だった。

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著者プロフィール

1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化、コミカライズなどもされ人気を博している。2020年に『愛されなくても別に』が第37回織田作之助賞の候補に、また2001年には同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著作に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』『嘘つきなふたり』などがある。

「2023年 『愛されなくても別に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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