室町幕府論 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065319345

作品紹介・あらすじ

〔あなたはまだ、義満の"本当の凄さ"を知らない〕

朝廷権力の「肩代わり」から「主体」の政権へ――室町幕府を読み直す画期的論考!

かつて京都には百メートルを超える巨大な塔が建っていた。この「大塔」、眩く輝く金張りの仏閣、華やかな祭礼―
首都京都の強大な経済力を背景に空前の「大規模造営」を為した室町幕府は、朝廷を凌ぐ威光を確立したのである。
弱体政権論を覆し、足利政権が「権力」と「権威」を掌握してゆく過程とはいかなるものであったか。
絶頂の義満時代を軸に、鋭い筆致で描き出す!

【本書より】
「当時の人々は相国寺大塔を見上げ、また北山第の意匠に驚かされつつ、新たな天下の到来を実感していたのである。」

【本書の内容】
はじめに
第一章 天龍寺―足利尊氏・義詮の時代
 1 軍事政権としての室町幕府 
 2 荒廃する朝廷社会 
第二章 相国寺―足利義満の時代2
 1 後円融朝の失政 
 2 足利義満の朝廷改革
第三章 相国寺大塔と北山第―足利義満の時代2
 1 相国寺大塔 
 2 北山殿足利義満 
 3 財政史から見た義満の権力
第四章 南北朝期の公武関係―研究史的考察
 1 「京都市政権」という罠 
 2 権限吸収論批判
第五章 復興期の社会―足利義持の時代1
 1 復興ビジネス 
 2 室町時代の首都圏
第六章 守護創建禅院―足利義持の時代2
 1 守護による寺院創建 
 2 足利義持の政治 
 3 公武統一政権 
おわりに―虚空を突く大塔 
あとがき 
参考文献一覧 
索引

*本書の原本は、2010年に講談社選書メチエより刊行されました。

感想・レビュー・書評

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  •  「今から600年ほど前の京都に100メートルを超える塔が建っていた」、この掴みで興味関心が一気に呼び起こされる。それは七重の塔で、高さ約110メートルにおよび、中世で最大の高さを有した塔であった、と始まる。
     この巨大な塔を建てた人物は、足利義満。最初に落成したのは応永6年(1399)、場所は賀茂川と高野川が合流して鴨川となる地点、糺の森よりやや西の地点。
     院政期が六勝寺などの大規模造営時代であるのと同様、著者はこの大塔や金閣寺、天龍寺、相国寺等の建造物が相次いで建てられたこの時代にも着目すべきとする。

     最近、室町時代の研究が盛り上がっているが、本書もそのような一冊である。本書では、室町幕府が創建した大規模な建築物や儀礼の再興に焦点をあてて、それらが進められた背景や目的について分析し、さらにそれに必要だった資金調達のあり方を検討するとのことである。(「財政史的観点」というらしい。確かにお金の工面がつかなければ箱ものを建てたり、しっかりした儀式はできない。お金の出し入れから国家のあり方を見ようとする試みとのことで、ある意味当たり前のことだが、それを史料により歴史的事実として明らかにしていくことが求められるということだろうか。)

     相国寺大塔、義満の居所北山第については第3章で述べられる。当初厳しかった幕府財政、柱としては守護からの出資、土倉酒屋役であったが、遣明船による莫大な利潤が、これらの大規模造営や儀礼の復興を実現したとのこと。
     第4章は、幕間と言うには重いテーマであるが、室町時代研究を牽引した佐藤進一の「京都市政権」論についての批判的考察に当てられる。(この辺り研究史的には大変興味深いところなのだろうが、残念ながら文字面を追いかけるに精一杯だった。)
     第5章、第6章は義持の時代について。南北朝動乱からの復興期に当たるこの時代は、復興の資金需要を賄うための土倉や酒屋の発展、神人集団による商業活動の広域展開、また幕府が京に置かれたことから、首都京都と地方との結びつきが強まり都鄙の相互作用が進んだなどの動きが説明される。

     本書は、終わりに大塔のその後を語る。義満死後建造途中で放置されていた大塔が応永23年に焼亡すると、義持は再建を指示する。そして大塔は北山第ではなく、相国寺の寺域に建立されたが、文明2年(1470)雷火により三度目の焼亡を遂げてしまう。しかし、それらの状況を記した資料は驚くほど少ないという。「室町幕府は、みずからの権力を巨大な営造物で誇示する必要はもはやなく、都鄙の交流を通じて肥大化した京の都に軸足を置き、根をはっていたのである。…すでに爛熟していた京にあって大塔という存在は、単なる時代遅れの大きな飾り物の一つに過ぎなくなっていたのだろう。」(293ページ)。義満の時代から義持の時代へと、時代は大きく変わった。それを象徴的に表すものが大塔の運命だったことを深く感じさせられた。

  • 足利政権が「権力」と「権威」を掌握してゆく過程を義満時代を中心にまとめた本になります。
    「今から600年ほど前の京都に100メートルを超える塔が建っていた」というのは非常に興味深い内容でした。

  • 京都府立大学附属図書館OPAC↓
    https://opacs.pref.kyoto.lg.jp/opac/volume/238540?locate=ja&target=l

  • 東2法経図・6F開架:B1/1/2767/K

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著者プロフィール

関西学院大学文学部教授

「2019年 『中近世武家菩提寺の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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