宇宙になぜ、生命があるのか 宇宙論で読み解く「生命」の起源と存在 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065325827

作品紹介・あらすじ

宇宙に「命の星」はいくつあるか?宇宙物理学者が、この宇宙における「生命の発生確率」を真剣に考えると――。これまでも生命の発生については、「ミラーの実験」や「ドレイクの式」など、さまざまにそのアプローチが提唱されてきました。それではビッグバン理論、インフレーション理論などの最先端の宇宙論・物理学をもとに、RNAの合成、生命活動のはじまり、それらの発生頻度をあてはめたとき、我々の知る138億年の宇宙には、地球以外にも生命は存在するのでしょうか?2023年4月17日、木星氷衛星探査計画 ガニメデ周回衛星「JUICE」が打ち上げられました。日進月歩で進展していく宇宙探査・理論をもとに考える「生命」とはなにか?本作のもとになるものは、2021年、2023年に同著者より発表され、世界的にも大きな話題となった論文です。なぜ、われわれは存在するのか? われわれは孤独なのか?――その究極の問いに迫る!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの通り、たまらんくらい興味深いテーマで、全般的には知的好奇心を刺激してとても面白い。
    でも結論については、大変壮大で、大変肩透かし。
    「何も分からない」と言っているに等しいので・・・。
    いや、分からないものは分からないからしょうがないんだけど。笑

    まず本書の特長は、生命の起源に迫る以上、天文学、物理学が専門の著者が、専門外の生命系化学に足を踏み入れたがゆえに、著者自身も初学者として学び・習得した生命科学系の基礎を、一般の読者同様(知的レベルは遥かに高いが)初学者の立場から平易に解説することに努めている部分である。
    著者と共に生命科学の基礎を習得したうえで、著者の専門たる天文学の観点から、宇宙に生命が存在するのは何故か、そして地球外生命体は存在しうるのかという謎に迫っていく。

    その本書の構成自体はとても意欲的だし、壮大な範囲の必要知識を、完全に門外漢の私にも分かりやすく説いている部分も素晴らしいと思う。

    ただ、そういった周到な前提知識の整理をもとに行った「生命はどうやって誕生したか」という核心部分については、理屈のうえではこうだが厳密には結局どう発生したかよく分からん。という結論。
    生命誕生は、地球だけに起きた奇跡的な現象だったのか、割と普遍的な現象だったのか(≒宇宙に他にも生命体が存在するか)という問いに対しては、あり得ないくらい低確率の話だが宇宙はあり得ないくらいデカいので確率論的にはどこかで起こってると言えなくはないよね。という結論。

    煮え切らねえ~~~~。
    まあ、繰り返しになるけど、分からないものは分からないんだからしょうがないんだけど。。。。
    未知の世界を切り拓いていこうとする、研究者の情熱みたいなものは節々に感じられるため、知的エンタメとしては大変面白かった。

  • フェルミのパラドックスに対する著者の考えという本か。
    前半は、生命とは何か、どうやって宇宙は今の形になって来たか、という話がまとまっている。
    主題は後半で、人間の様な高度な複雑性を持つ有機物が発生する確率はみっちゃ低いけど、宇宙の地平線を越えたガチの宇宙の広さを想定すれば、普遍的なことという結論。

    風が吹けば桶屋が儲かるというか、桶屋が儲かってるだから、こんな風が吹いた筈というか。
    研究者にとっては面白いんだろうが、だからどうしたって話と取った。

  • 2023/12/22
    「地球に」ではなく「宇宙に」というところで手に取って見た。
    著者は天文学者らしく宇宙の始まりから現在に至るまでの流れや、宇宙空間に普遍的に存在する元素の説明、雪線やハビタブルゾーンなど判りやすかった。
    本論の生命の始まりについては既視感のある内容が綴られているが、自己複製可能なRNAの発生は地球に限定しないで宇宙全体とした場合でも確率的に非常に難しいという視点を、地球を含む観測可能な宇宙に限定せずに、他の宇宙全体(有無も含めて未知のそれこそ無数の)でみると確率的には十分有り得るという趣旨。
    その後は副題に「…「生命」の起源と存在」とあるように、宇宙での生命存在の検出に関する内容に重点が移る。
    地球から宇宙全体へ、そして観測可能な宇宙に限定しない無限の宇宙全体へと舞台を拡げることにより確率論としての生命発生の可能性はあるものの、知性の発現・発達は未知としているようだ。
    個人的には生物と非生物との境目の問題に比べれば、単細胞生物の環境検知能力と人間の知性の差は小学校のクラスメートの差程度の問題と思えるが。
    果たしてその知性は、生命の誕生の理由とその仕組みを自分たちを滅ぼす前に見つけられるのかな…。

  • 請求記号 440/To 73/2236

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/566412

  • 【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます
     https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/477224

  • 専門的な内容ですが平易な言葉で分かりやすく説明されており、通読が容易です。タイトルを見て興味湧いた人なら誰にでもおすすめしたい良著です。

    過去から現在にかけて多種多様な生物種が存在してきた(存在している)理由については、進化論によって説明が為されていますが、「最初の生命」がどうやって誕生したのかは実は明らかになっていません。さまざまな仮説はあれど決着は見えておらず、宗教的・神秘主義的な解釈までちまたに溢れている状況です。
    本書は、その難攻不落の問いに科学者の立場で正面から切り込んだ一冊であり、多くの人が興味を持って読める本ではないかと思います。

    本の内容は、タイトルにもある2つのキーワード「宇宙」と「生命」が中心に論じられています。著者は、生物学というよりかは天文物理学のエキスパートであり、本の内容の比重が「宇宙論」に置かれすぎているようにも思えます。専門的な知識を少しでも備えた方なら、宇宙についての知識は既存の知見の読み直しに過ぎず、退屈されるかもしれません。しかし、生命の起源を探るにあたっては、宇宙の成り立ちを理解しておくことが非常に重要な前提となっていることがよく理解できる内容でした。生命の起源を論じるのに、宇宙の起源まで遡ってしまう「究極のなぜなぜクエスチョン」こそがこの本の魅力ではないでしょうか。

    著者のような宇宙物理学の専門家が、生命の起源に関するテーマでこんなにおもしろい本を書いてくれて、ありがたい限りです。

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著者プロフィール

1971年、愛知県生まれ。1998年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。国立天文台助手、プリンストン大学客員研究員、京都大学准教授などを経て、現在は東京大学大学院理学系研究科天文学専攻教授。専門は天文学、宇宙物理学(特に、宇宙論、銀河形成や高エネルギー天体物理学)。観測を意識した理論的な研究が主体。著書に『新・天文学事典』(共著、講談社ブルーバックス)『宇宙の「果て」になにがあるのか』(講談社ブルーバックス)など。

「2021年 『爆発する宇宙 138億年の宇宙進化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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