教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏の中学受験に関するスタンスのエッセンシャル版と言える一冊。

中学受験で、意中の学校に必ず受かる"必勝法"は存在しないが、親子ともどもにとって中学受験を良い経験・意味ある経験とする"必笑法"なら存在する――

中学受験の目的、というと、志望校への合格や、進学先での恵まれた環境で送る充実した6年間を手に入れること、がまず思い浮かぶ。
しかしそれ以上に中学受験のプロセス自体に意義があることに目を向けるべし、というのが著者のスタンスだ。

少々長いが引用。
「中学受験勉強の目的は、どんな手段を使ってでも第一志望に合格することではなく、定めた目標に対して努力を続ける経験を積むプロセス自体にあります。さらに、どんな結果であれそれを最終的には前向きに受け入れ、人生の新たな一歩を踏み出す姿勢を学ぶことにあります。
 つまり、自分の努力で自分の人生を切り拓き、仮に結果が100%の思い通りでなくても、腐ることなく歩み続けることのできるひとになるための経験なのです。」

中学受験はともすると、誰よりも親が"合格"に向かってのめり込みすぎてしまいがちだが、そうではなく、あくまで"子"の挑戦であり、成長機会であると説く。

読者が、受験をそう捉えられるよう、本書では、心構え、塾との付き合い方、志望校の考え方、親子関係の4つの切り口から解説されている。
各章の間に挟まれる生々しい親御さんからの実際の悩み相談なども交えて、著者の受験観のエッセンスを余すところなく表現した一冊と思われる。

どうしても我が子には大きな期待を持ってしまい、暫くすると視野が狭くなっていく。
そのたびに戻ってきたい境地である。

2022年12月24日

読書状況 読み終わった [2022年12月24日]
カテゴリ 暮らしとお金

冒頭に掲げられている本書の目的は「みなさんのお子様が通うことになる学校の良さ、その魅力を見出すきっかけを作るところにあります。」
まさに、タイトル通り。

第一章「変わる中学受験」。中学受験を取り巻く最新の環境を概観します。
第二章「令和の中高一貫校」。時代の流れを受け、また学校の生き残り競争のなか、私学は今まで以上に?学校ごとに特色ある教育を打ち出してきている。その実例をいくつか紹介している。
第三章「男女別学、共学という選択」。これは表題通り。書かれている内容も前著や類書でもよく語られている内容。
第四章「進学校、大学附属校、そして寮制という選択」。これも表題通りの内容。それぞれの学校の特色をいくつか学校をピックアップしつつ紹介。
第五章「志望校選びで親が悩むこと」。これはAERAの連載に寄せられた保護者からの相談集。参考にはなる。

さて、上述の通り5章構成の本書だが、個人的には本書の一番良かったことは、それ以上に各章の間に挟まっている「学校訪問」というコラム。
実際に著者が私学を訪問しインタビューした内容が9校分掲載されている。
今まさに、私学の校長らは何を考え、今後どのような子たちを育てていきたいと思っているのか、どんな個性をもった学校なのかが生き生きと伝わってくる。
このコラムだけでなく、全体を通してとにかく学校へのインタビューをベースに書籍化しており、私学の息遣いが感じられる一冊。

必ずしも、自分が興味ある学校が取り上げられているわけではないわけだが、本書を読みとおすことで、志望校を見る際にどのような切り口で見ていこうか、という参考には大いになる。

2022年12月10日

読書状況 読み終わった [2022年12月10日]
カテゴリ 暮らしとお金

ジャーナリストのおおたとしまさ氏が送る、実話に基づく体験談的小説。
と言っても、創作部分は台詞と心理描写の部分のみで、事実関係は全て実話そのままとのこと。
3つの過程の中学受験・最後の三週間が描かれる。

一つは、「中学受験について詳しい・理解がある」はずであった父が主導する家庭。
二つ目は、天才児を授かってしまったばかりに、過度の期待を押し付けて子の個性を潰してしまった家庭。
三つ目は、長女の時の手痛い失敗を次女の際に上手くいかせた家庭。

著者はたまたまこの3家族に取材したというが、気持ちいくらい著者のかねてからの主張、「偏差値に振り回されない受験こそが幸せな結果を生む」を傍証するかのようなラインナップ。

1つめのエピソードは、散々「受験は結果が全てではない」という助言を吸収してきたはずの父が、最終的には完全に偏差値だけで結果の良し悪しを受け止めているさまが生々しい。そして、肝心の我が子の望みが、父の視点からすっぽり抜け落ちていたことを最後に思い知らされる。
2つめは完全に偏差値至上主義の業界の闇に飲み込まれてしまった話と言える。外ヅラだけを気にする中学受験を経て、天才肌の我が子を勉強嫌いにさせ、夫婦関係は破綻する。そしてそれを煽ったのは、受験塾であるとはっきり描かれる。
3つめは、進学先だけ見れば上記二つの子よりも完全にしただし、チャレンジした第一志望校にも合格していない。にも拘わらず、間違いなく最も幸せな中学受験をした家庭として描かれる。
「中学受験を家族にとってのいい経験にできるかどうかは、子供の成績や第一志望合格よりも、自分たちの歩んできた道のりに納得感を得られるかどうかにかかっているのかもしれない。」

なぜ我が子に中学受験を勧めたか?
単に高偏差値の学校に入れるためか?
でも何のために?

きっと各家庭、それだけが理由ではないという所が殆どのはず。でも、最後まで家族全員でその信念をもって、偏差値信仰に踊らされずに走り抜くのは、想像以上に難しいのかもしれない。
きっとこの本は、我が子が塾に通い始めたタイミング、そして6年生になるタイミングに読み返すべき一冊なのだと思う。

2022年12月10日

読書状況 読み終わった [2022年12月10日]
カテゴリ 暮らしとお金

自身は開成を卒業後、公文国際学園の立ち上げに参画し、その後は学校カウンセラー等の職務を経験してきた著者が語る、中学受験のススメ。

なぜ、中学受験を勧めるのか?
それは、中学受験のプロセスが、子が親離れして一人の人間と育っていくために、そして同時に親が子離れしていくために、格好の装置だからである。

私立中高一貫校の教育が個性に富み、工夫されていること、厳しい受験を潜り抜けてきた学友たちと6年間を過ごすこと等は分かりやすい長所である。

それにも関わらず中学受験の世界に踏み出すのに躊躇いを感じる親はいるであろう(私がそう)。
しかし、時にハードな中学受験勉強は、その過程において子供にとって一生ものの"宝物"を身につけることができる素晴らしい体験である。
親ができることは、子供にチャレンジングな体験をさせずにかくまうことではなく、我が家・家族という子供が安心できる"安全地帯"を整備し、そこから子供の挑戦を応援することではないか。
いつまでも子供の手を握り締めていてはいけない。
著者はそう説く。

いま、目の前にいる7歳の我が子はまだまだ頼りなく見え、中学受験の世界に送り込むことに躊躇いと葛藤を覚える日々であったが、読むべき時にこの良書を読めたことに感謝したい。
悩める親の背中を押してくれる。

書店で平置きになっていたので新刊かと思い手に取ったが、よく見ると2016年の刊である。
にも拘わらず何冊もそろえて平置きしていた池袋のジュンク堂には感謝するしかない。

2022年10月28日

読書状況 読み終わった [2022年10月28日]
カテゴリ 暮らしとお金

夢想渦巻く夢幻の世界へ。
幻想きらめくシュルレアリスムの世界から始まりSFの世界に着地する、一幅の奇譚。

3部構成は、少しずつ主要人物と時系列をずらしながら繋がっていく。
さて、話を要約してしまうと面白くとも何ともないレビューになってしまうのが悩ましい。
感想だけ述べるなら、情景描写も世界観も、話の展開もすべて心地よく、作品世界にすっかり埋没し、感動させられた。各部とも、その結末部で鳥肌が立った。

本書が分かりづらい、という感想も見かける。
最初から理屈で考えると難しい作品に見えるのかもしれない。しかし一言でいえば、これは"夢"である。
夢だと思って、まずはその奔放なイメージを素直に受け止めて頭の中で情景をそのまま展開すると、そのうち作品のほうから割とサービス精神旺盛に秘密を次々披露してくれる。
そういう意味ではテンポが良いし、しかも各部ともしっかりとオチをつけてくれる。
その種明かしが、どれも美しく、どこか物悲しく、そして、人は一人で生きられないという人間の本能に根差した世界観が根底にあるように感じられ、それが得も言われぬ共感と感動を呼ぶ。

少しとっつきにくいところもあるかもしれないが、個人的には大変お勧めできるエンタメ作品だと思う。
すっかり魅せられてしまったな。

2022年10月16日

読書状況 読み終わった [2022年10月16日]
カテゴリ 日本文学

タイトル通りの年齢層を想定に、どのような"家庭学習"を行うことが将来子供の大きな飛躍につながるのかが書かれている。

著者の持論は「よく遊び、少し学べ」の一言に象徴されている。
最優先は、熱中できることや遊びを思いきりさせること。
では、「少し学べ」では何をさせるかというと、読書を挙げている(あと、漢字と計算の訓練をちょっと)。

ここまでの主張は昨今の子育て論の主流であるので違和感はないし、ではどのように子供の生活に読書を取り込んでいくのか?と言った点については、かなり具体的に書かれており、親として子への接し方も含め参考になることが多い。
また、遊びについても結構な紙幅を割いており、すっかり子供と遊ぶのが苦手になった感のある現代人(もちろん私自身も)にとって、参考になる部分も多い。

著者の上記の考えの背景には、今後は物事を的確に早く処理できる画一的な"優秀層"ではなく、自分の趣味関心を突き詰めた個性派が活躍する時代が到来するという信念が見受けられる。(こういう時によく引き合いに出される"さかなクン"をやはり挙げている)
そして詰込み型の教育とは距離を置く姿勢を示す。中学受験も詰込み型と切り捨て、公立に温情的だ。

個人的には、確かにそういう個性派"も"活躍できる時代は既に到来していることは間違いないと思う。
一方で、日々の経験から言って、資本主義社会である以上、従来型の秀才もまた、この世には引き続き重要な人材であり続けると思う。
受験に関しても、私立中学側も詰込み型の時代は過ぎ去ったという認識は当然あり、受験問題も思考型へシフトしつつあるし、学校での教育も多様化している。著者にこの辺りの認識があるのだろうか。

もちろん、どちらの教育が良くてどちらが悪いというわけではない。
二元論で割り切らず、どちらも大切にできると素晴らしいと思う。
さてさて、二兎を追えるかは我が子の特性次第だが、まずは本書に記載のある遊びと読書とで、一兎めは捕まえに行きたいと思う次第である。

2022年10月13日

読書状況 読み終わった [2022年10月13日]
カテゴリ 暮らしとお金

本書は通史の要約的な本ではなく、著者なりの「教養を深める歴史の読み方」である。
どちらかと言うと、通史がある程度頭に入っていてもう事実の列挙を学ぶのに飽きた人ほど、面白く感じると思う。

例えば、個人的に読んでいて興味深かった(通史の勉強では触れられずあまり知らなかった)内容をいくつかピックアップすると
・「文明」と「文化」の違いは
・メソポタミアやエジプトでは発達しなかった民主政が、ギリシア文明で発達した背景は
・ローマ帝国衰退の一因にインフラの維持管理問題があった
・アルファベット、一神教、貨幣の誕生に共通の背景があった(かも)
・ゲルマン民族大移動から予測する現在のヨーロッパ難民が引き起こす(かもしれない)問題
・人間にとって「神」とは何か
・太古の人間には「神の声」が聞こえていた
・文明の発達とともに聞こえなくなった「神の声」の代替品とは
・アメンホテプ4世とモーセの繋がりは
・共和政と共和制の違い
・なぜギリシア諸ポリスは閉鎖的で、ローマだけが開放的だったのか
・東洋に共和政・民主政が根付かないのはなぜか

歴史の教科書には書かれていない、歴史の「奥行き」とでも言えるようなもの。そういった知識がちりばめられているだけでなく、歴史家は、歴史を読む中でどのように想像力をめぐらし、どのように現実世界を眺めているのか。そんな一端が感じられるようで、非常に興味深い一冊であった。

2022年10月1日

読書状況 読み終わった [2022年10月1日]
カテゴリ 歴史

中学受験するか否か、いろんな観点がほしく関連書籍を読み漁る。
教育ジャーナリストであるおおた氏が一歩引いた目線で、プロ家庭教師である安浪氏がリアルな現場目線で、以下の5テーマについて持論を語る。
・なぜ中学受験をするのか
・「本当の学力」をあげる勉強法
・塾を使い倒す新常識
・志望校選びの玄人的着眼点
・親子の信頼関係の育て方

おおた氏の書籍は過去に二冊読んでいるので、ふむふむと持論を確認する感覚で読んだ。
安浪氏の担当の章が勉強する子たちのリアリティをのぞかせる。
まだ我が家は受験期に突入していないが、例えば公文式とそろばんどっちがいい?とか、読書量が国語の成績を決めるか?とか、一定の時間一定の努力をすれば誰でも結果が出るのか?とか・・・・
今の時点でも興味深い論点が多かった。

全体を通して感じたこと。
中学受験をなぜするか、志望校をどうやって選ぶか、親子にとって不幸にならない勉強法とは何か、受験したこと自体からどのような意義を得るか・・・・
その全ては偏差値至上主義から脱することで得られるのであろう。。。

2022年9月17日

読書状況 読み終わった [2022年9月17日]
カテゴリ 暮らしとお金

自身も名門女子校出身である著者による女子校紹介記。
女子校出身者や現役の女子校関係者へのインタビュー、また女子校のイベントや会合に参加して見聞きしたことを、自身の女子校体験も交えながらコラム的に紹介している。

前半部分は特にそうだが、謙遜しているのか茶化しているのか分からないテンションでの女子校生の生態紹介が続き、礼賛どころかdisってるようにすら感じるが・・・・
全体的には、広く浅いコラムが続くので散漫な印象はありつつも、それらを積み重ねることで結果的に「女子校とはこんな世界」という雰囲気をほんのり疑似体験できる仕上がりになっていると思う。
現時点で関心を寄せている学校に関する話題は特に興味深く読んだ。
でも最後まで、本心で女子校を持ち上げているのか皮肉を言っているのかよく分からなかった。笑

これ一冊で女子校のすべてが分かるわけでは勿論ないが、肩の力を抜いて女子校マニアの女子校OBの話を軽く聞き流すくらいに読むと程よい感じの一冊。

2022年9月1日

読書状況 読み終わった [2022年9月1日]
カテゴリ 評論・エッセイ

我が家は夫婦ともに公立育ち。かと言って公立がとても良かったと思っているわけでもない。
中学受験は気になるものの、お互い私立中高への知識はゼロ。
そんな状況で手に取った一冊。

著者は中学受験をメインフィールドに長年取材を続けている教育ジャーナリスト。本書はその著者の「中学受験観」を凝縮した一冊である。
本書では大きく4章にわけて受験の意義が語られる。
①中高一貫校に入る意義、②私学に入る意義、③受験を通して子が得るもの、④受験を通して親子が得るものの4点である。

結論を言ってしまえば、
①大学受験対策ができること以上に、豊かな思春期を恵まれた環境で謳歌できることの意味が大きい
②その学校でしか得られない生きる指針を授かり、卒業後も教育力が持続すること
③数々の試練を経験し乗り越え、ひととして成長するための大冒険であること
④親子で正しさを話し合い、新たな信頼関係が結ばれ、それが親子双方の人生を支える
となる。
各章に著者のこれまでの経験を活かし、様々なデータと生の声の両方を駆使した著述でなかなかに具体性に富む。

著者の受験観は一貫して、高偏差値信仰を排して「偏差値では表せない果実に目を向ける」べし、である。
①~④の結論にそれがにじみ出ている。
「親がべったりつきっきりにならず、そのぶん偏差値が多少低くなってしまってもそれを良しとして本人の頑張りで入れる中高一貫校に入り、そこで豊かな思春期をすごすのが、私のおすすめだ。」それが著者の中学受験観だという。

中学受験というと、名門校に子を入れるために(子以上に親が)血と汗と涙を流す狂騒曲、というイメージすらあるが、その受験観では親子ともに幸せにならない。
ということである。

本書を読んでぼんやりした受験へのイメージはまた一つ明確になってきたように感ずる。得るものは多かった。
さて、ではこうなると、次は「世の中にはどんな個性の学校があるのか?本当にわざわざ苦労して進むべき学校が世にあるのか」が気になってくるのである。

2022年8月20日

読書状況 読み終わった [2022年8月20日]
カテゴリ 暮らしとお金

ずっと共学育ちの男である私にとって、未知の存在すぎる女子校。しかし我が子の進路の選択肢の一つとして存在するため、手に取った。

女子校ならではの教育のメリットはいくつか挙げられている。
その中で一番目に留まったのは、
「男性の目線がない世界だからこそ、「女らしさ」を意識しないで、一人ひとりの個性を育める。」「男性の助けをアテにしない自立した女性が育つ。」
という点。
ジェンダーバイアスから比較的自由な環境での6年間というのは、社会に出てから壁にぶつかることもあるかもしれないが、それすら乗り越えられる「個」としての力が育める場なのではないか。
そう感じた。

本書全体の構成でいうと、
著者の持論としての女子校の教育の特徴及びメリットが1・2章。ここは一般論的。
そこから、3章は数十校の女子校の個性を紹介。4・5章は女子校卒で社会で活躍している女性のインタビュー。そして6章でまとめである。
正直3章はかなり薄く広くという観はあるものの、4・5章と合わせて読むと、何となく女子校という世界や女子校が目指しているものが多層的に捉えられるようではある。

女子校に子を入学させて良いことあるのかな?
という読む前の私の素朴な疑問に対して、一つ二つ以上の回答をくれたと思う。読んでよかった。

2022年8月20日

読書状況 読み終わった [2022年8月20日]
カテゴリ 暮らしとお金

我が家は私も妻も公立育ち。でも公立がすごく良かったと思っているわけではない。
なので子の私立中学受験に興味はあるものの、公立育ちなのでそもそも私立中高に通う意義からしてさっぱり分からない。
そんな状況で手に取った。

本書は、中学受験のメリットから説き起こし、受験における様々な実態、そして「得する」塾選び、勉強法、学校選びから小3までに家庭でしたいこと・・・で結んでいる。
なお、著者が言う「得する」受験とは、「お子さんが一番頑張れる方法で、無理なく中学受験を終えられる」こととのこと。

本書の帯に「中学受験が気になりだしたらまず読みたい超入門書」とある。
そのものずばり、内容は広く浅く、一般的に中学受験について気になるテーマを取り扱っており、自分のような読者にはフィットした。
著者らが中学受験業界の関係者ゆえ、中学受験について当然前向きな記述にはなるわけではあるが、中学受験の実態・受験生の3年間はどんな生活になるか、のイメージを掴める本になっていると思う。

この一冊で、受験すべきか公立で良いかの結論は出ないだろう。
だが、確かに取っ掛かりとしてまず読む一冊としては悪くなかった。

2022年8月7日

読書状況 読み終わった [2022年8月7日]
カテゴリ 暮らしとお金

独学で勉強しているが、「理解することはできるのだが、すぐに忘れていってしまう」ため、「忘れないようにどう復習を計画すべきか」を悩んでいたところに、ドンピシャのソリューションを提供してくれるという本書を発見し、手に取った。

本書は、「覚えたことを忘れないため(記憶に定着させるため)の勉強計画方法」を説いた本である。
主な想定読者は、資格試験に臨んでいる人たち。
個人的には資格取得は目指していないが、それでも年々忘れやすくなっている自分がまさに求めていた内容となる。

本書で説く手法は拍子抜けするほどにシンプルである。
しかしシンプルであるがゆえに誰でも真似できる。
これは長所。
また、「耳学」と銘打って、自分でオーディオ学習ツールを作ってしまおうという発想は新鮮だった。

たった一つの、しかも凄く簡単な方法についてのみ記述しているので、肝心の活用方法(参考書選びや日々の学習の進め方)がかなり具体的なレベルで説明されているのもイメージがわきやすく良いかと思う。

資格試験を目指しているわけではないので、受験テクニック的な項は流し読みしたが、それでも買ってよかった。

また実践してみて感想があれば追記する。

2022年6月16日

読書状況 読み終わった [2022年6月16日]
カテゴリ 自己啓発

最新の脳科学の観点から捉えた効果的な勉強法に関する一冊。
本書の特徴は何と言っても
・脳科学の研究結果という根拠に基づいている(我流勉強法ではない)
・それをベースにした具体的な学習方法・読書術が"数を絞って""具体的に"紹介されていること
の2点だと思う。

世に数ある勉強法の本も、現在では脳科学や心理学に基づいた手法を紹介しているものが主流にはなってきている。
ただ、本書ほど「根拠となる研究成果」→「勉強法」の関連付けが明確で、しかも勉強法が実に具体的で明快なものは過去に読んだことがない。
また、紹介する勉強法・読書法の数が非常に絞られているというのもポイントだと思う。
網羅的にあれもこれもと紹介する類書が多いのと対照的に、本書は切り口に一貫性がある手法を、章が進むごとに徐々に深めていっているので、取り組む意義をしっかり理解しながら自分のペースで実行に移せると感じさせる。

記述形式が講義式・対話スタイルなので大変読みやすくもある。いままで勉強本はいくつか読んだが、唯一即座に実行に移した本である。

2022年2月12日

読書状況 読み終わった [2022年2月12日]
カテゴリ 自己啓発

昨今(と言ってももう少し古い感もあるが)流行りの育児スタイルのうち、「早期教育(英才教育)」と「褒める子育て」の2つを主に疑問視し、非認知能力を高める子育てを推奨する一冊。

幼少期から習い事や通塾ばかりする子は、頭が良くても指示待ち人間を生み出しかねない。そのうえ社会で成功できるか否かはIQよりもEQが大事である。
褒める子育ては、挫折を乗り越える力が育まれずストレス耐性の低い、頑張り切れない人間を育てかねない。。。
というのが著者の見る昨今の育児が生み出す弊害。
あまりその因果関係を示すデータは示されないが、まあ論理的に理解できる主張だからそこは気にならない。
ただ、同じ主張が本書全編を通して、あまりにもしつこい印象はある。

さて、代わりに大事と説くのが「非認知能力」や「レジリエンス」。
そのために、しつけの重要性や幼少期に友達と自由に遊びまくることなどを説いている。親の子に対する接し方についても助言はある。
ただ、著者は教育心理学者であるものの、育児の専門家ではない。ゆえに、具体的な育児シーンを想定したノウハウの記述は非常に少ない。

「非認知能力」という言葉を聞いたこともない、という人は手にとってもいいかもしれない。

2022年2月12日

読書状況 読み終わった [2022年2月12日]
カテゴリ 暮らしとお金

世界史の画期となった137の出来事について、「何がどうなった」「なぜ起こったか」「それでどうなった」を概ね3ページずつでまとめた軽めの読み物。
割と近現代史に手厚いところが気になり手に取った。

項目ごとにやや出来不出来のばらつきがあり、企画の意図通りに、出来事の遠因や後世への影響について体系的な理解を与えてくれる項目もあれば、単にその出来事を挟んだ時系列の紹介みたいになってしまっている項目もある。
個人的にはヨーロッパ史はともかく、どうしてもアジア史の理解が薄いので、そのあたりの項目については勉強になるところも多かった。

難点としては、通史の紹介ではないため、どちらかといえば一通りの歴史の流れはぼんやり知っている人の知識固め向きの本なのに、あたかも初学者向けのような売り文句が背表紙にあるところと、誤字脱字が多いところか。

2022年1月8日

読書状況 読み終わった [2022年1月8日]
カテゴリ 歴史

非常に簡略なトルコ(民族)の通史。

殆ど政治史に的を絞って、淡々と通史を記述している。
オスマントルコ及びトルコ共和国の歴史の一通りの流れ、というか重要な人物と政治制度くらいはある程度網羅されている。
元がそういうコンセプトなのであろうが、それ以上でもそれ以下でもない。

難点はいくつかあり、国際情勢への言及が少ないため近現代に近づくほどに「なぜ?」が分かりづらくなる。サファヴィー朝との関係なんて、ただ延々戦っていただけという風にしか読み取れないが、本当だろうか。
また、トルコという国を理解するために一歩踏み込んだ分析というものが乏しい。例えば、オスマントルコがあの時期にビザンツ帝国を飲み込み東欧諸国を脅かすほど強勢となった要因や、逆に17~18世紀以降すっかり停滞し欧州に逆転されていく要因とか、いつまで経っても近代化(欧州化?)が上手くいかない理由など、何が良くて何が駄目だったか(と思われるか?)の記述が非常に少ない。個人的にはこの辺の著者の一歩踏み込んだ見解が歴史関係の本の一番面白い部分だと思うので、残念な部分。
また、平易で簡略な文章を心掛けた結果、簡略化しすぎて意味がつかみづらい文章が散見されるのもつらいところ。

初学者向けにも拘わらず、初学者にとってほど、面白みが感じられないし分かりづらい本になってしまっている気がする。

2021年11月28日

読書状況 読み終わった [2021年11月28日]
カテゴリ 歴史

「はじめに」に記載のある通り、本書は、経済史をベースとして、経済的覇権(=ヘゲモニー)の変遷を軸に、世界の変貌を叙述した教養書である。

一言でいうと、とても面白かった。
経済、物流、ネットワーク、それらを構築した人々の動きに焦点を当てて叙述し、経済的な覇権を握ることがすなわち政治的な覇権に繋がっていたことが浮き彫りになっている。その点が目からうろこであった。

中国はなぜ早期に経済発展を遂げ世界一の帝国であり続けたのに、近世になりヨーロッパに逆転されてしまった
のか。
グーテンベルクの活版印刷術や、大航海時代がもたらした歴史へのインパクトがどれほど大きかったか。
また特に、産業革命以降、第一次世界大戦までのイギリスの覇権確立の流れについての叙述は、特に気づきの連続だった。
高校世界史で習ったときは、なんで産業革命の頁で、いきなり「飛び杼」や紡績機の話が始まるのか分からなかったし、なぜ第二次産業革命がドイツで盛んになり重化学工業中心になったのかも、よく腑に落ちた。

惜しむらくは著者の専門外の時代だからだろうか、古代~中世くらいまでの項と、現代史の項は幾分叙述が薄いところか。

いずれにせよ、世界の覇権の歴史を、経済史という側面から眺めることで、より多面的に世界史を理解できる一助となる良書だと思う。

2021年11月27日

読書状況 読み終わった [2021年11月27日]
カテゴリ 歴史

運動をしないことはや十余年。30代にしては随分身体が重く感じるようになってしまった。
特に我が子とが成長するにつれ、持ち上げるのも、一緒に走り回るのもしんどい。。。

そう思って筋トレに励もうと思って手を出したのが本書。
筋トレ本って、「アスリート向け」か「マッチョになる人向け」か「ダイエット向け」か「介護回避のため」のどれかであることが多く、そのどれも目的でない自分としては随分困ったけど、本書が割と丁度良かった。

体幹を中心としたトレーニングで、その主眼は「体を動かすときの連動性を良くすること」にある。
つまり動きやすい体を作るのだ、という趣旨が目的に丁度合致した。

少し広いスペースと、ヨガマットくらいは必要になるが、自宅でできるトレーニングが殆どであり、案外と実践でき、成果も上がったので、引き続き愛用している。

2021年5月7日

読書状況 読み終わった [2021年5月7日]
カテゴリ 暮らしとお金

中国史の小説をものする著者による28人の皇帝の簡単な評伝。
「創業の英雄」(王朝の創始者)
「血塗られた玉座」(クーデターで皇帝になった者)
「見果てぬ夢」(帝位につけなかった者や短命王朝の皇帝)
「天涯をめざして」(精力的に外征を行った皇帝)
「愛すべき皇帝たち」(個性派のいわゆる名君たち)
というカテゴリーで選ばれた皇帝たちについて、各8ページ前後で、簡単な時代背景、主な事績の紹介を通じ、その人となりを著者なりに読んでゆく。

平易な文体で実にサクサク読める。
著名な皇帝はもちろん、高校世界史レベルでは名前を知っている程度の人物まで、するするとその人物紹介が頭に入ってくる。
気になった人物についてより詳細な書籍に移っていきたくなる。中国史に関する興味を広げてくれる一冊だ。
人物から見た中国史の入門書ともいえる好著。

2021年8月13日

読書状況 読み終わった [2021年8月13日]
カテゴリ 歴史

受験用ではなく、社会人の世界史の学びなおし用として。

世界史の基礎知識を改めて頭に刻むために『大学入学共通テスト 世界史Bの点数が面白いほどとれる本』を利用してインプットをするのと並行して、やっぱりアウトプットをしてこそ定着するよね。
ということで利用したのが本書。

上記の書物のレビューでも書いたが、社会人の世界史教養に、難関大学を受験するために要するような細かい知識は必ずしも必要ではない。というより、大きな流れを捉えるうえでは邪魔でさえある(何せ学習時間が全然取れないので)。

本書は、世界史を学ぶ上で「さすがにこの程度の知識は頭に入っていないと・・・・」というレベル感だと思う。
また本書のいいところは、余白が非常に大きいところ。
自分なりに理解を深めるための、ちょっとした時代の流れや背景を書き込んで、自分仕様に仕上げられるようになっているのが気に入った点である。

何冊かアウトプット用の教材を探したがこれに落ち着いたので、ここにレビューする次第である。

2021年10月17日

読書状況 読み終わった [2021年10月17日]
カテゴリ 歴史

私はおじさんなので、受験用ではなく「世界史の学びなおし用」として本書を利用している。

私もかつては難関大学を受験した身なので、正直どうしても細かい知識を追いがちだったのだが、社会人になってからの世界史の学びなおしは何せ時間が取れないし、そもそも細かい知識が求められているわけではない。
でも色んな書籍を読んでいくにあたって、ベースとなる基礎知識くらいは改めて頭に刻んでおきたい。
そういう意味で、共通テストをターゲットに絞った参考書が実にちょうど良かった。

また、世界史を概観する参考書は本書のように1冊で完結するものから3分冊のもの、果ては5分冊のものとバリエーションが多い。
個人的には、大部分忘れてはいるとしても、一度は高校世界史を一生懸命勉強した身なので、あまり手取り足取り平易に教えてもらう必要はないということで、1冊完結の本書がまた「丁度よかった」。

ページの左半分がレジメになっていて、右半分が開設というのも、かつて予備校時代に授業を聞いていたのと同じスタイルというのも親しみやすかった。

もし、昔世界史が得意だったけど、そのせいで学びなおしも最初から難易度の高い本や参考書に手を出している人がいたとしたら、一度プライドを捨てて共通テストレベルの参考書を利用してみることをお勧めする。
かくいう私が、妙なプライドのせいで最初から学術文庫などに手を出して、何も積み上げられないまま数年を浪費したので。。。。

2021年10月17日

読書状況 読み終わった [2021年10月17日]
カテゴリ 歴史

佐藤賢一氏なりの見方・切り取り方で語られる世界史である。
その観点は「おわりに」の冒頭に記されている通り。
曰く
「世界史は三世界史から成っている。西世界、東世界、イスラム世界の三世界が、しばしば帝国を形造りながら、それぞれにヘゲモニーを志向し、また究極的には他を容れないユニヴァーサル・ヒストリーを紡いできたため、その三つの流れを合わせたものがワールド・ヒストリーになる。」
との立場だ。
氏の言うユニヴァーサル・ヒストリーとは「ひとつの方向に向けられた歴史」、つまり色んな歴史が並行するのではない単一の歴史とのこと。
もし世界統一を果たした帝国があればその帝国史がユニヴァーサル・ストーリーになるはずだが、いまだかつてそのような国は存在しない。ならば、世界統一を志向した人たちの歴史が、それに準ずるものとして扱うことができるのではないか。
では、世界統一を最初に志向したのは誰で、それがどのように引き継がれていったのか。

以上のような前提のもとに、世界統一を志向した最初の帝国として、アレクサンドロス帝国から筆を起こすのが本書である。

良くも悪くも、なかなか学者では書けない、小説家らしいといえば小説家らしい舞台構想だと思う。
最初は何言ってるんだ?という感じもしたし、読んでいる途中では「東洋史がすっぽり抜け去っている」という点を欠点のようにも感じたが、最終章まで読めば著者なりに中国や日本、東南アジアも、著者の考える枠組みには入ってくると(あるいはなぜ途中まで入ってこないのかという理由が合理的に)説明される。

賛否はありそうだし、なんだかちょっと強引だなとも思える世界史理解だが、こんな切り口もあるのかと面白くもあった。
世界史の語り方なんて無限にあっていいものね。

2021年10月16日

読書状況 読み終わった [2021年10月16日]
カテゴリ 歴史

数年前から全く成果の上がらぬ世界史の学びなおしをしているわけだが、本書は遂に出会った「学びなおしのための最適な一冊」だと個人的には思う。

一言でいえば、世界史をあらすじで辿っているわけですが、そのような試みをしている類書は山とある。
本書が違っているところは、このような言いようが許されるのであれば「世界史のメインストリーム」に的を絞っているところが、成功の要因である。
世界史入門と銘打った類書でよくあるのは、単に高校世界史をまんべんなく切り詰めて短くし、文章を平易にし、図解を増やして何となく見やすくしただけ。というか、薄味にしただけのものが殆どで、書いてあることは分かるが結局何も残らないというのが殆どだった。

本書は違った。
どのようにして現代の世界が作られてきたか?という観点で最も影響の大きかった時代の流れに的を絞っていること。更にそれを構造化し、大きな歴史の流れの枠組みを提供していること、そして常に前後の「流れ」に力点を置いて、あたかも一本の大きな大河のように連続した物語として歴史を読めるようになっていることが、圧倒的に類書より優れていた。
世界史をどう語るか?は無論、論者の数だけパターンがあると思うが、本書は、これから様々なパターンの世界史を学んでいくにあたり、あるいは各時代の詳細な歴史を学んでいくにあたって、最初に備えておくべき基本形として最適なのではなかろうか。
私個人でいえば、ようやく自分の中で軸となる世界史理解が本書で形成されたと感じており、なぜ早くこの本に手を伸ばさなかったのかと悔いているくらいである。

2021年8月1日

読書状況 読み終わった [2021年8月1日]
カテゴリ 歴史
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