なぜヒトだけが老いるのか (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065326404

作品紹介・あらすじ

人間以外の生物は、老いずに死ぬ。
ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があったーー。
生物学で捉えると、「老い」の常識が覆る!


【ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者による待望の最新作!】

・産卵直後に死ぬサケ、老いずに死ぬゾウ、死ぬまで子が産めるチンパンジー
・ヒトは人生の40%が「老後」
・長寿遺伝子の進化
・寿命延長に影響した「おばあちゃん仮説」と「おじいちゃん仮説」
・老化するヒトが選択されて生き延びた理由
・ミツバチとシロアリに学ぶ「シニアの役割」
・昆虫化するヒト
・不老長寿の最新科学
・85歳を超えたら到達できる「老年的超越」というご褒美
・老化はどうやって引き起こされるのか
・生物学者が提言する「最高の老後の迎え方」とは ……ほか

「老いの意味」を知ることは「生きる意味」を知ることだった。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は細胞の老化研究をしている細胞学者。
    タイトルの答えは単純に他の生物は老いる
    前に搾取される弱肉強食の世界にいるから。

    後半は学者の範囲を超え、シニア世代を
    どう生きるかを言及しており、正直、
    大衆向けになっており、期待はずれの
    内容だった。



  • 前著「生物はなぜ死ぬのか」で話題となった著者の続編。
    前著で、生物は「変化と選択」を繰り返す「進化のプログラム」によって、今ある姿・形・性質の全てを獲得したこと、「生物はなぜ死ぬのか」ではなく、死ぬものだけが進化できて、今存在している、死は進化に必要である、ということを示しました。
    本書では、死ぬことは必然としても、人間だけが老化するという現象はなぜ起きているのか、ということに着目しています。著者に言わせれば、前著同様、「なぜヒトだけが老いるのか」ではなく、老いた人がいる社会が選択されて生き残ってきた、ということになるそうです。
    生物としての老化にどのような意味があるのか、それを理解し、私たちは老いとどのように付き合っていくか、シニアが社会に果たすべき役割は何か、と考えさせられる内容が満載です。前著ほどのインパクトはなかったものの、難しい内容も丁寧に優しい言葉遣いで解説してもらっていますので、非常に読みやすくなっています。高齢社会を迎えるにあたり、ぜひ読んでいただきたい一冊だと言えます。



    ▼著者の提案
    ①元気なときには、本能のおもむくままにやりたいことをやり(もちろん公序良俗に反しない範囲で)、
    ②老いを感じ始めたら、少しずつ中心を自分から周りに広げて(老いを感じる年齢は個人差があります)、
    ③「シニア」になり、無理のない範囲で公共に尽くし(選手兼コーチもOK)、
    ④最後は皆に惜しまれて天寿を全うしてピンピンコロリと死んでいく(いつ死んでもいいようにご準備を)、
    という考え方で生きるのはどうでしょうか

    <目次>
    はじめに
    第1章 そもそも生物はなぜ死ぬのか
    第2章 ヒト以外の生物は老いずに死ぬ
    第3章 老化はどうやって起こるのか
    第4章 なぜヒトは老いるようになったのか
    第5章 そもそもなぜシニアが必要か
    第6章 「老い」を老いずに生きる
    第7章 人は最後に老年的超越を目指す
    おわりにー幸せについて

  • なぜ人が死ぬのかのくだりはとても興味深かったですが、老いるところはあまり目新しさを感じませんでした。なぜ死ぬのかについての本が先に出ていたようなので、そちらを読んでみたいと思います

  • 部活の同級生からの課題図書。読んでみて感想、聞かせて欲しいと。執筆当時59歳の細胞の老化の研究をしている生物学者のシニア論です。なるほど…ヒト以外の生物は老いずに死ぬ…のか。まさに「ピンピンコロリ」がほとんどの動物のスタンダードであることを初めて知りました。ヒトだけが死の前に老年期という時間を過ごすようになったことをこの前半で生物学者として、DNAの老化の専門家としてグイグイ語ります。(でも、暮らしの中で目にするおじいちゃん、おばあちゃんの犬はどう考えればいいのか?質問したくなりました。)その老いという時代を、どう生きるべきか?というテーマが後半に繰り広げられます。前半が学問の啓蒙的であるのに対して後半は研究というより著者の試論の様相を呈して来ます。人間ならではの「シニア」という存在に対する「おばあちゃん仮説」「おじいちゃん仮説」ぐらいからちょっとアレレ…って感じに思えます。そこには研究者のライフステージの移行に対する著者自らの問題意識の反映も感じます。本書ではシニアを『生物学的な「年齢」とは切り離して、知識や技術、経験が豊富で私欲が少なく、次世代を育て集団をまとめる調整役になれろ人」と定義づけします。いわく「徳のある人」…ホント?これって定年延長で給料が下がる説明会に集まったおじさんたちの心のモヤモヤを顕在化したみたい…。こうならばいいな、という願望としては理解できます。当事者の願望と社会のニーズがうまくマッチングするためには本書に書かれている以外の新しい仕組みが生まれないと難しいような気がします。死の前の「老い」という季節は個人の意識の問題なのか社会の仕組みの問題なのか?自分の別の友人は「高齢者に出来る社会貢献は消費税だけだ!」と嘯いて高額のオーディオ商品買いまくる人もいます。ちなみにこの新書を読んでいる間に買ったばかりのスマホを紛失してしまい1時間ぐらい死んだ気分になりました。幸い直前にいた場所に落ちていて助かりましたが、確実に「老い」に直面してボロくなっている自分に落ち込みました。それがこの本に対する辛口気分の源泉かも。勧めてくれた友人と「老いの過ごし方」談義してみます。

  • ヒトには老後がある理由とそれをいかして少子化の歯止めと知見の継承もできる提言がなされています。こういうアプローチもありだなと思いました。

  • 生物はなぜ死ぬのか?それは進化するためである。
    そして過酷すぎるこの地球環境の中で生き残るためである。死ぬ種族だけが生き残って来れた。人間以外老化して死ぬ生物はなかなかいない。ホモサピエンスの中で、老いる事に意味があり、繁栄出来た者だけが生き残れた。その生き残りが我々である。老いには十分に意味があると言うことだ。おばあちゃんがいるから、生存確率が上がったという理論だ。

  • 興味深い。人は必ず歳をとる。その時にどう過ごすか… 社会に還元、そして最後は老年的超越で幸せに過ごす、自然に得た心境である意味ご褒美だと。
    死への恐怖から解放されて大きな後悔もなく死んでいける。
    野生の生き物は基本的に老化しない、老化は突然やってくる。

    細胞の老化=個体の老化
    幹細胞は寿命が長く、一生涯生き続けるものもある。
    血液の細胞は約4ヶ月でワンサイクル
    骨の細胞は約4年周期

    ヒトの寿命は50〜60歳くらい、その根拠は
    1. ゴリラ、チンパンジーの寿命からの推定、ゲノム遺伝情報はヒトとほぼ同じで50歳前後の寿命

    2. 哺乳動物の、総心拍数は一生でほぼ20億回仮説
    2〜3年寿命のハツカネズミも60年のゾウもほぼ同じで15億〜20億、ネズミは1分間に600回、ゾウは30回とゆっくり。

    3. がん  ヒトは55歳くらいからガンで亡くなる人が急増、年齢以上に生きることを想定していない進化の選択のためかと。野生動物はがんにほぼならず、その前に寿命で死ぬ

    ヒトは本来の寿命55歳くらいから30年ほど生きるのは、強力な免疫機構のおかげ。十分な栄養で臓器も元気に。また、集団としての優位性を保つ社会性の生き物。

    よって、細胞が壊れるまでの程よい過程が「老化」

    人の社会の2層構造、想像力豊かなクリエイティブ層と、自由度を支えるベース層。若者と年配者、それぞれの活躍の場が結局互いを支え伸ばすのではないか、と。

  • タイトルとは違って、老いるのがヒトだけではない、と知ったのが一番の驚きであった。シャチやゴンドウクジラには老後の時期があるということだ。つまり生殖能力がなくなった後にまだしばらく生き続けるということ。何のためにか。それは子育て(孫育て)に協力するため。ほとんどの生き物は生殖能力をなくした後はすぐに後進にその場をゆずる。川を元気に遡上し産卵した後すっと命を落とすサケのように。僕自身、シニアと呼ばれる年代に入っている。孫の面倒を見るのはもう少し先になりそうだが、後進を育てる役を担わなければならない。ところがだ。ICTだか何だかで、我々世代は教えることよりも教わることばかりなのだ。システム自体が大きく変わってきており、もうそれについて行くのは不可能になっている。昔が良かったなどと言っても誰も相手にしてくれない。絶対変わらない、変えてはならないものがあるはずなのだけれど。30年間続けてきたことが全否定されるのか。今のやり方の方が良いということをだれがどこで、どう判断するというのか。それくらい大きく変わろうとしている。テクノロジーの力で。教育の現場がである。本書の内容から大きく離れてしまった。徳のあるシニアにならなければいけない。元気な間は利他的に生きなければいけない。定年後、何ができるかをもっと真剣に考えなければいけない。そして、利他的に死ななければいけない。

  • 老いると言うことが肉体的な事で精神も老いてしまっては、老害になりかねない!年齢を重ねたがゆえに、出来ることがいっぱいある気がします!

  • 老後って何だろう。
    そんな年齢になったため、手に取った本。
    子孫を残せる年齢を過ぎても、人はまだまだ生きる。何のため?
    高齢になったら自分の知識を公共化する、なるほど、と納得した。
    死んだら今までの知識が0となる。
    他の人に伝えて、更なる進化&発展をする。
    人類全体でみる。
    大きなメタ。

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著者プロフィール

生物学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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