「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義 (講談社+α新書)
- 講談社 (2023年9月22日発売)
本棚登録 : 189人
感想 : 17件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784065328330
作品紹介・あらすじ
衝撃の数理モデル「資本主義が続く限り、人口はゼロになる」
なぜ少子化対策は失敗するのか?
人口減の根本にあるメカニズムは何か?
まったく新しい着眼が拓く、日本再生の道!
「人間の数が減ればどういうことになるのか、どういう打撃をこうむるのかについて、私たちは永らく無関心でいましたが、人口減はその深刻さを認識させつつあります。最近は政府でさえ「人間への投資」を主張するようになっています。しかし、日本社会の基本は全然その方向に進んでいません。実質賃金は30年近くも減少した上、2022年以降の物価上昇でさらに大きな切り下げが進行しています。政府が「少子化対策」と称しているものを確認しても、それらで人口減が解決するとはとても思えません。政府は「やってる感」を出すことにしか関心がないのでしょうか。これはこの問題が相当大きな日本の構造転換を必要とし、それに手を出せないことから来ている反応と考えざるを得ません。何より今の少子化は、人々が望んでもたらしているのではない、子供をつくろうとしてもできない状態に労働者がおかれているからこそ起きているのです」――本書「まえがき」より大意
本書のおもな内容
・経済学は少子化問題をどのように論じているか
・「ヒトの軽視」が生んだ将来不安
・社会格差が歴史的にも人口減の最大要因
・非正規労働者は「好きな相手との結婚」を諦めよ!?
・結婚と出産を乗り越えても立ちふさがる高いハードル
・必ず貧困者をつくらなければ持続しないのが資本主義
・ジェンダー差別は「生命の再生産」を阻害する
・AIに人間はつくれない
・賃金格差を広げよ!? 新自由主義が社会に根強い理由
・途上国の発展が日本の不利益に?
・教育の無償化は人口政策
・企業行動への国家の強制介入も必要に
・資本主義からの脱却へ
【著者略歴】
大西広 おおにし・ひろし
1956年生まれ。1980年京都大学経済学部卒業、1985年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。1989年京都大学経済学博士。1985年立命館大学経済学部助教授、1991年より京都大学大学院経済学研究科助教授、同教授を歴任。2012年より慶應義塾大学経済学部教授。2022年3月31日慶應義塾大学定年退職、同年慶應義塾大学名誉教授。世界政治経済学会副会長。主著に『マルクス経済学(第3版)』(慶應義塾大学出版会)、他にマルクス経済学や中国問題に関する著書多数。
みんなの感想まとめ
資本主義の持続可能性と人口減少の関係を新たな視点から考察する本書は、少子化問題の根本的なメカニズムを探求しています。著者は、労働者の生命維持が困難になることで次世代の労働力が減少するという論理を展開し...
感想・レビュー・書評
-
【奥が深い資本主義】
資本主義を搾取する側、される側という浅い思考でとらえていましたが、人の再生産も資本主義の中に含まれていることに驚きです。
資本主義自身が「資本」と「賃労働」を再生産する必要があるということですが、下記の①~③で①の労働者の生命維持が危ぶまれると②、③はおのずと無くっていくことになります。
①労働者の生命維持
②次世代労働力の量的形成
③次世代労働力の質的形成
今、①がきびしくなり②、③に手が回らない状態になっています。お金に余裕がないと子供をつくり育てることができなくなるのです。
資本主義に生命の再生産が含まれているのであれば、このままでは資本主義は終焉をむかえるでしょう。世界人口が減少に転じる2090年ぐらいには資本主義に代わる別の「主義」が台頭してくると考えます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マルクス経済学が世紀を超えて未来を言い当てようとしている。産業革命以後、資本投資はヒトから機械・設備に重きを置くようになった=ヒトの軽視。これが人口減の要因という主張を本書は展開する。数理モデルは難解だった。資本主義と相性の良い新自由主義は貧困を自己責任に帰す考え方だろう。経済格差が少子化を招き、人口減で滅びの道を選ばないためには、平等主義equalized societyが重要という主張は理解できた。しかし、国から個人レベルに至るまでパラダイムシフトを起こさない限り、その実現は困難だが諦めてはいけない。
-
経済学とか苦手だが、わかりやすく書かれていた。数字はやっぱり苦手だけど。
人口減はわかりきっているのに、表面的な対策ばかりで一向に改善されない。それどころか少子化は進むばかりだ。
富める者はどんどん富み、貧しい者はどんどん追い込まれる。資本主義は貧しい人たちを放置してこそ、成り立つものなのか。はー
資本主義に変わる政策に、急には無理だから、徐々にでも転換していくべきなのに、そうなってるとは思えない。権力を持った人たちも、自分が生きている間はなんとか逃げ切れると思っているから、目先の自己利益だけを追求し、庶民にはやってる感だけを示す。
子育て現役の人たちの施策を充実させればさせるほど、お金がなく結婚もできない人たちからの搾取が酷くなる、というところはわからなくもないのだが、すでに生まれて来た子供を確実に真っ当な大人にするというのも、やはり重要であろう。
-
マルクス経済学における人口論を根底に、現在日本が抱える人口減少の原因を探っていく。
個人的には「個人の選択、利益」の総和が、まわりまわって「個人の不利益」になるロジックや、欧米の外国人労働者問題ははるか昔からの歴史的背景があること、そして生命の再生産という捉え方がとても勉強になった。
なぜ結婚しないのか、なぜ子供が欲しいと思わないのか、様々な要因が絡み合うが、いま一つの答えとして日本の抱える貧困という問題が注視されていることは、本書でも例外ではない。国が言う異次元の少子化対策はもちろんやったほうがいいが、なんか違う感が世間を覆う。この先の日本に不安を覚える。 -
人口の減少と経済成長
経済格差からくる「生命の再生産」の阻害
戦前や戦後は地方の耕作従事者を東京なとの都市へ供給することで、労働力を賄ってきた。地方が先細り、日本国内で将来の労働力を得ることができない場合、海外に活路を見出すことになる。
日本の成長率が圧倒的であった時代は外貨を求めて日本まで出稼ぎに来る労働者が多かった。
現在、円安や各国の最低賃金を見ても、日本のメリットは大きく減り、国内でも労働力の確保が難しくなる
改めて人口を維持して労働力を確保することは、長期的な国家的な視点で見る必要があるのだと感じました。
4万円の減税還付という一時的なカンフル剤で、どうにでもなるものではないなと。 -
昨年(2023)の年末から読み始めたことになっていますが、読みかけて放置されていたものをGWの部屋のお掃除で発掘しました。読みかけの部分まででレビューを書こうとしましたが、面白そうな内容だったので本日残りを読み終えました。
タイトルにある「人口ゼロ:とは、現在の人口を維持する必要な出生率(2.07)を上回らない限り、遅かれ早かれ人口は是疎になっていくということを示しています。これまで日本人を含めて、氷河期などで何度も人口減少という危機を乗り越えてきたので絶滅することはないとは思いますが、今と同じような生活が徐々に送れなくなるという覚悟はする必要があるように思いました。
思い起こしてみると、私が小学低学年の時に日本の人口が1億人を越えて人口がどんどん増えて、年金制度が拡充された時、当初は余った予算をどう使うべきか頭を悩ませていたと思います。今は別の悩みがあり、常に課題を探して議論することは大事なことのように思いました。
以前は男(夫)が金を稼いで、女(妻)が、毛底を守り子育てをしていました。私の両親がそうだったので、そのスタイルはその時代に適していたもので、それを否定するものではなく両親には感謝しています。今は、当時とは状況が変わったので(私が妻と一緒に子育てしてきた時と今との比較)娘たちには彼女たちの考え方を尊重したいと思っています。この本を読んでそのような思いを感じました。
以下は気になったぽいんとです。
・韓国、香港、台湾の合計特殊出生率は日本より低いが、日本が深刻なのは、今後に子供をもうける潜在的な人口層である0−14歳や、現役の15−64歳の厚みでは、日本の方が圧倒的に縮小しているからである(p24)
・非婚化の進行については、29歳までに結婚する男性の比率が1990年の34.9%から、2020年には27.1%に縮小、女性も、59.6%から38.6%へ少数者化している。39歳まで延長しても、80.9→65.5、92.5→76,4%に低下している(p32)30年ほど前までは、男性の場合、50歳までに結婚しないことは殆どあり得ない状況であったが、今では25%である(p39)
・人間は利益で行動する、従って、子供の数の選択行動についても、やはりこの考え方で、つまり、教育費を含む子育てコストと親の所得、子供の効用という3者の関係をめぐるモデルで説明されることになる(p55)
・欧州諸国の、外地を開発の対象としてみて様々なインフラ建設に一生懸命の日本や中国とは対照的である。フランスのODAのほとんどはフランス語を教えるために使われている、これは事実上のフランス植民地として支配続けることを目的としているし、彼らがフランスにきて有効な働き手となるためのトレーニングにすぎない(p89)
・そもそも下人は奉公人として家庭を持てなかった人々がいて、貧困になるほど有配偶率が低くなる、この現象は歴史を遡っても見られる(p104)
・1)室町後期までは、荘園経済の停滞、2)室町後期〜江戸前戯、次男以下、隷属農民の排出、小農自立+皆婚化、3)江戸後期、武家・地主・富農の人口増、隷属農民・非農業人口の停滞、4)近代、少子化による農村の人口増、工業発展による都市人口増加(p102)
・夫婦のどちらか一方しか正規労働者になれないという事情、従って家事労働の一切が妻に課せられるという事情は、資本側が異常に強いという特殊な労使関係によって決められている(p122)
・日本のパワーは末端職場の仕事のクオリティであると表現されている、末端労働者にもちゃんとした賃金が支払われ、有り余る能力がつけられることによる見えない生産力がある(p150)
・資本主義は、その始まりは本質的に低賃金で働かせる労働者群を必要としており、経済格差は最初から必要事であったということになる(p152)それぞれの先進国は外国人を安価な労働力としてしか考えていないので、思い切り低賃金とする、すると国内で彼らと競合する底辺労働者層は困る、それにつられて低賃金で働くことになる、人口減→労働力不足→外国人労働者への依存、という負のループになる(p156)
・大卒女性が産む子供の数が19年ぶりに増加したことが明らかになった、有配偶者に限った場合の出生率が1990年以来上昇し続けている(データは2010年まで)(p180)
2024年5月31日読破
2024年5月31日作成 -
資本主義が続く限り人口はゼロになる、という扇動的なタイトル。中国の少子化対策が高学歴化につながってる説なるほどと思った。人口減少が資本主義の崩壊に繋がる。一人一人の労働生産性を上げるには格差の是正や人的資本経営の考え方が重要。合計特殊出生率2.07に戻すには、社会の思い切った変革が必要。
-
「人口ゼロ社会」が現実味を帯びてきた。経済学者・大西広は著書『人口ゼロの資本論』で資本主義が人口増加を前提にしてきたことの脆さを突く。成長神話の裏で少子高齢化と過疎が進む日本は縮小の時代に入った。転じて大西は「成長なき豊かさ」への視点を示す。人が減るからこそ自然と共生し無理のない経済の再構築が可能になるというのだ。利潤ではなく人間の幸福のために資本主義は変われるのか。
-
経済学部 金江亮先生
推薦コメント
『資本主義の下では少子化は必然的になることを多くのデータで考察されている。将来予測と、解決策について学べる。』
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1335453 -
流し読み
移民の是非、スウェーデンとの比較 -
人口減少が続く日本の現状、今後について、マルクス経済学を用いて論じている本。前半の日本の人口減少の原因分析については興味を持って読み進められたが、マルクス経済学の人口論に入ってからついて行くのがキツくなったのが本音。経済学の勉強をサボったのがいかんかったかな。
-
20231210読了
-
東2法経図・6F開架:334.3A/O66j//K
-
帯に「日本民族が消滅する……」とある。ということは「日本民族」という新しい概念を提唱するのだろうか。だとするとマルクス経済学者にしてはかなり国粋主義よりだ。
中身は、政治(人口に関する政策への)批判を多分に含んでいる。あと水野和夫が引かれている。
著者プロフィール
大西広の作品
