「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義 (講談社+α新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065328330

作品紹介・あらすじ

衝撃の数理モデル「資本主義が続く限り、人口はゼロになる」なぜ少子化対策は失敗するのか?人口減の根本にあるメカニズムは何か?まったく新しい着眼が拓く、日本再生の道!「人間の数が減ればどういうことになるのか、どういう打撃をこうむるのかについて、私たちは永らく無関心でいましたが、人口減はその深刻さを認識させつつあります。最近は政府でさえ「人間への投資」を主張するようになっています。しかし、日本社会の基本は全然その方向に進んでいません。実質賃金は30年近くも減少した上、2022年以降の物価上昇でさらに大きな切り下げが進行しています。政府が「少子化対策」と称しているものを確認しても、それらで人口減が解決するとはとても思えません。政府は「やってる感」を出すことにしか関心がないのでしょうか。これはこの問題が相当大きな日本の構造転換を必要とし、それに手を出せないことから来ている反応と考えざるを得ません。何より今の少子化は、人々が望んでもたらしているのではない、子供をつくろうとしてもできない状態に労働者がおかれているからこそ起きているのです」――本書「まえがき」より大意本書のおもな内容・経済学は少子化問題をどのように論じているか・「ヒトの軽視」が生んだ将来不安・社会格差が歴史的にも人口減の最大要因・非正規労働者は「好きな相手との結婚」を諦めよ!?・結婚と出産を乗り越えても立ちふさがる高いハードル・必ず貧困者をつくらなければ持続しないのが資本主義・ジェンダー差別は「生命の再生産」を阻害する・AIに人間はつくれない・賃金格差を広げよ!? 新自由主義が社会に根強い理由・途上国の発展が日本の不利益に?・教育の無償化は人口政策・企業行動への国家の強制介入も必要に・資本主義からの脱却へ【著者略歴】大西広 おおにし・ひろし1956年生まれ。1980年京都大学経済学部卒業、1985年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。1989年京都大学経済学博士。1985年立命館大学経済学部助教授、1991年より京都大学大学院経済学研究科助教授、同教授を歴任。2012年より慶應義塾大学経済学部教授。2022年3月31日慶應義塾大学定年退職、同年慶應義塾大学名誉教授。世界政治経済学会副会長。主著に『マルクス経済学(第3版)』(慶應義塾大学出版会)、他にマルクス経済学や中国問題に関する著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • マルクス経済学における人口論を根底に、現在日本が抱える人口減少の原因を探っていく。
    個人的には「個人の選択、利益」の総和が、まわりまわって「個人の不利益」になるロジックや、欧米の外国人労働者問題ははるか昔からの歴史的背景があること、そして生命の再生産という捉え方がとても勉強になった。
    なぜ結婚しないのか、なぜ子供が欲しいと思わないのか、様々な要因が絡み合うが、いま一つの答えとして日本の抱える貧困という問題が注視されていることは、本書でも例外ではない。国が言う異次元の少子化対策はもちろんやったほうがいいが、なんか違う感が世間を覆う。この先の日本に不安を覚える。

  • 人口の減少と経済成長
    経済格差からくる「生命の再生産」の阻害
    戦前や戦後は地方の耕作従事者を東京なとの都市へ供給することで、労働力を賄ってきた。地方が先細り、日本国内で将来の労働力を得ることができない場合、海外に活路を見出すことになる。
    日本の成長率が圧倒的であった時代は外貨を求めて日本まで出稼ぎに来る労働者が多かった。
    現在、円安や各国の最低賃金を見ても、日本のメリットは大きく減り、国内でも労働力の確保が難しくなる

    改めて人口を維持して労働力を確保することは、長期的な国家的な視点で見る必要があるのだと感じました。
    4万円の減税還付という一時的なカンフル剤で、どうにでもなるものではないなと。

  • 流し読み
    移民の是非、スウェーデンとの比較

  • 人口減少が続く日本の現状、今後について、マルクス経済学を用いて論じている本。前半の日本の人口減少の原因分析については興味を持って読み進められたが、マルクス経済学の人口論に入ってからついて行くのがキツくなったのが本音。経済学の勉強をサボったのがいかんかったかな。

  • 20231210読了

  •  なぜ資本主義は行き詰るのか。「人口」という切り口から資本主義とマルクス主義の違いとサステナビリティを描く。

     資本主義は搾取を前提としたシステムで西欧諸国は大航海時代からそれを営々と続けてきた。社会の下層に貧困層がいる、という前提で社会の富裕層(資本家)は儲けられる。貧困層がいなくなれば移民で補う。

     いまさらだが、欧米諸国がマルクス主義を蛇蝎のごとく嫌うのが再認識される。そりゃ、マルクス主義の旗印である平等が実現してしまったら…儲けられなくなる…!

     本書ではシンプルだが根本的な質問が投げかけられる。人口が減っていくのは、子をなそうとしてもできない層が増えているから。前出の搾取される側に当たる層だ。そこにメスを入れないと資本主義…どころか社会、国家が維持できない。

     そこでその世界を救うのがマルクス主義、というのが本書の主張。

     斎藤幸平氏の「人新世の資本論」ではサステナビリティという切り口から問題の解はマルクス主義、としたがこの本でも。

  • 東2法経図・6F開架:334.3A/O66j//K

  •  帯に「日本民族が消滅する……」とある。ということは「日本民族」という新しい概念を提唱するのだろうか。
     マルクス経済学者にしてはかなり国粋主義よりだ。

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著者プロフィール

慶應大学・京都大名誉教授

「2023年 『中国百科 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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