- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065332436
作品紹介・あらすじ
『サイコーの通知表』『だれもみえない教室で』など学校における子どもたちの生きづらさに寄り添った作品を生み出し続ける児童文学作家・工藤純子。朝日中高生新聞の連載小説に大幅加筆した最新作のテーマは、ずばり「校則」です!文芸部に所属する中2の朝比奈知里(あさひな・ちり)が校門を出てすぐ、スマホがヴヴッと震えた。登下校中のスマホの使用は、保護者との連絡以外は原則禁止。かけてきたのは姉で、コンサートの申し込みを代わりにやってほしいというお願いごとだった。通話を切った知里は、チケット販売のサイトにアクセス……そのとたん、背後からスマホの使用をとがめたのは生徒指導の三崎先生だった。スマホを没収されてしまう知里。しかし、級友たちの証言で、三崎先生は、通話するところからずっと知里を監視し、サイトにアクセスするのを待ち受けていたかのように声をかけたことがわかった。同じ文芸部の晃太郎(こうたろう)は、生まれつきの髪型がモヒカンのようだから切ってこいと言われた。父がドイツ人、母が日本人で赤茶色の髪をした友樹(ともき)は、地毛証明書を出せと言われた。校則って、何のためにあるのだろう? 生徒を取り締まるためにあるのだろうか?もやもやした思いを抱えた文芸部員たちは、理不尽な校則を変えようと立ち上がる。しかし、当の生徒たちの中から校則を変えたいという声があがってこない。学校生活の規律や校則を自分たちで考えることは、途方もなく大変だという現実に突き当たる。はたして、知里たちは、校則を変えることができるのでしょうか? 現実の社会でも、あまりに理不尽な「ブラック校則」に注目が集まり、校則の変更や撤廃の議論がなされている中、校則とは何なのかという疑問を物語の力で伝える一作です! 巻末には、朝日中高生新聞紙上で行われた、中学生たちと名古屋大学の内田良教授、そして著者の工藤純子さんによる校則にまつわる座談会を掲載します。
感想・レビュー・書評
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私の通っていた中学校では女子は制服がなくて、ジャケットとスカートという指定はあったもののスラックス履いてる子もいたし、割合自由だったのかもしれない。
先生に引っ叩かれた生徒がいた。でも正面切って「それはおかしい」などと言える生徒はいなかった。内申をカタにとられていたから。
でも、おかしいものはおかしい。どんな理由があっても暴力を受ける謂れはない。時代は流れ、子どもが主張することのハードルは確実に下がっていると感じる。
「でも、どんな大人もかつては中学生だった。」
(本文157ページより)
戦う知里たちにエールを送りつつ、中学生だった頃の自分が重なり、熱くなる。頑張れ。理不尽と戦え。
巻末の校則対談も読み応えがある。 -
#校則の見直し
#中学生らしさ
#見守る#見張る
#校則だから -
「ブラック校則」というものが世間で話題になってから少し時間が経ち、社会の注目度も下がってきているような気もします。
もちろん、それぞれの学校に個別の事情や歴史がありますから一概にパッと見た印象だけでその是非を論じることはできない部分もありますが、その校則で様々な規制を受ける生徒自身がその校則の意義や必要性について考えることが必要だと思います。
指導する教員も「校則で決まっているから」という理由で、指導される生徒も「校則は守らなければならないから」という理由で、それぞれが思考を停止させて無批判に状況を受け入れてしまっている現状は、「それが社会の常識だから」「政府が決めたことだから」と社会の様々な事象を問題として捉えることなく漫然と生きることにもつながる、危険な行為だと思います。
校則が「悪」で、何が何でも改正したり撤廃したりしなければならないとは思いません。一見、不自然で不条理に思えるような規範であっても、それによって守られる人がいるのかもしれませんし、その規範を制定した拝啓には忘れてはならない過去や教訓が込められているのかもしれません。そういったことも含めて、きちんと当事者が考え、意見が異なる人と(対決ではなく)対話を繰り返す事、安易に多数決に流されるのではなく少数意見もきちんと汲むことなど、「校則」の在り方について考えることは、実社会に活かせる経験を得る貴重な機会でもあります。
YA文学として「エンタテインメント性」や「中学生でも活躍できるという爽快感」を含んでいますから、この作品の主人公たちはやや強引な手段を取って大人(教員)たちの裏をかくこともあって、もう少しきちんと根回しをしたほうが実際にはうまくゆくでしょう。そういった部分はさておき、彼らが自分自身の言葉で考え、自分事として校則に向き合っている姿は、多くの中学生の希望になるのではないかと思います。 -
2024-015
中学生にもぜひ読ませたい一冊。自分が中学生の時は本当に何も考えずにただ従ってた。自分で考えて動くことの大切さを学んだ。でも、今の中学生にどれくらいできる子がいるだろう。 -
前向きな中学生の姿、よかった。多様性の時代と言えども、抗って何になる?と、タイパやコスパを求める子供たちへ、自分達のことは自分達で決めよう!と背中を押してくれる物語。読書で準体験が出来る貴重な機会を与えてくれた工藤純子さんにも感謝。
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文芸部の2年生 知里(ちり)は校門を出たところでスマホを使い、没収されてしまう
理由はそれが「校則」だから
原稿用紙3枚の反省文を書くように言われ、理不尽な思いを部員と共有
校則を変えようと動き出すが…
《現実の社会でも、あまりに理不尽な「ブラック校則」に注目が集まり、校則の変更や撤廃の議論がなされている中、校則とは何なのかという疑問を物語の力で伝える一作です!》──出版社サイトより
・下着は無地の白
・モヒカン、ツーブロックなど、極端に髪の長さに変化をつけない
・入室の際は挨拶をする
「校則は、こっちの事情なんておかまいなしだもんな」
現実に問題になっている校則は変えられるのか
通知表、いじめなどをテーマに生きづらさを抱える子どもたちに寄り添った作品を書いてきた著者が「校則」に一石を投じる
「朝日中高生新聞」の連載小説(2022年4月〜9月)に加筆・修正して単行本化、2023年10月刊
巻末には校則問題に詳しい内田良(名古屋大学)、中高生、作者による「校則座談会」を収録 -
5.6年から。中学校の校則で理不尽にスマホを没収された主人公。反省文を読み上げさせられることに反感を覚え、生徒会と協力し、中学生の主張に挑む。上からの圧力の世界を感じていると、大人の読者でもモヤモヤと怒りが湧いてくる。子どもの思いを代弁するだけでなく、取り残さない今の時代を反映して未来に繋ぐ。
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校則のおかしさについて、正面から見つめ直し、正しく変えていこうと挑んだお話。少数意見を無視せずに考える姿勢が良かった。中学生に勧めたい。
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ストーリーの中や座談会にも生徒、教師、地域、保護者など多様な意見も入れて欲しいなと思いました。学校は生徒の学習のための場所だが、先生や保護者、地域の方の支えなくしては成立しないことを、生徒が理解しているようには思えない。安心して学べる場所があることの幸せを自覚せずに勉強以外の自由を声高に主張することに疑問を持ちます。ヨーロッパを見るのもよいが、学ぶことさえままならない地域と比べると登下校中にスマホを自由に使いたい!という主張についてどう思うのだろうか。何のために学校へ行き、なんのために学ぶのだろうか?と思う私は古い人間なのだろうなあ。学校よりもっと大きな社会の流れに未熟な子どもたちが呑まれることが私はこわいです。資本主義社会は子どもをも消費のターゲットにしています。幼い頃からスマホを持ち、スマホの奴隷になってしまったり、安価な化粧品を安易に手に入れてルッキズムにとらわれたりしないでしょうか。中高生の親である自分は学校の先生も嫌われ者になってくれるほうが本当にありがたいと思っています。親が言うだけでは社会の流れに抗うことは非常に苦しいのです。