黄土館の殺人 (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065347287

感想・レビュー・書評

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  • 超推し★5 待ってました館四重奏シリーズの第三弾! 交換殺人から始まる館ミステリー #黄土館の殺人

    ■あらすじ
    ある世界的な芸術家を殺害するため、山中に建てられている館に向かっている男がいた。しかし突然地震が発生、土砂崩れが起こってしまい、館への唯一の道が閉ざされてしまったのだ。途方に暮れていたところ、土砂の向こうから交換殺人の相談をされて…

    一方、大学生になっていた探偵、葛城と田代たちも同じ館に訪れていた。かつての事件で関わりのあった飛鳥井から相談を受けていたのだ。ただ彼らも土砂崩れによって分断されてしまうことに。その後この館では、連続殺人が発生するのだった。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    面白い!超推し★5

    現代でオーセンティックな本格ミステリーを書かせたら、もはや日本一といっても過言ではないですね。さすがは阿津川辰海先生、待望の館四重奏シリーズの第三弾、黄土館の殺人です。

    いきなり交換殺人ですよ。(大好きな名作を思い出しましたが、タイトルは言えない)この種明かししてどうなるんだろうと思ってましたが、なんと序盤は倒叙ミステリー形式で進行していく。ほんと読み手を惹きつけるのが上手いし、楽しませるのもプロの技です。もちろん後半になって、この前半部分にあるシーンの数々もしっかりと回収されるのもお見事。

    黄土館での事件も、今回も様々な不可能犯罪を放り込んでくる。声を大にして言いたいのですが、阿津川先生の作品の魅力は、難解な事件を丁寧にまとめながら進行してくれるところなんです。本格ミステリーはどうしても読み手の推理に負担をかけすぎてしまう。定期的に時系列や問題点を整理してくれており、推理に抜け漏れや間違いがなくて理解しやすいんですよね。

    それでも、真相はよくわからんという、この見事なバランスですよ。後半に入ると、なんとなく犯人はあたりがつくのですが、自信をもって説明がつかない。点と点が見えることはあっても、線にならないんですよね。まさに煙にまられるような、楽しみをじっくりと味わえる本格ミステリーです。

    また登場人物も魅力たっぷりなんです、特に芸術家一家の面々が秀逸ですね。芸術に関する議論や考え方なんて、もっと聞きたくなるし、人間性もしっかりと伝わってくる。いくらかは殺害されていなくなっちゃうんですが、なんとも惜しい気持ちになっちゃうんですよね~

    そして本作メインの謎解き部分の真相なんですが…納得感がエグイ。だからよくわからんかったのか!だからこんな構成になっているのか!読み終わると膝を打ちすぎて痛いくらいでした。今年を代表する本格ミステリーですね、楽しかった!

    ■ぜっさん推しポイント
    本シリーズのもうひとつの読みどころ、名探偵論というテーマ。謎を解くことと解決することの違い。何故、誰の為に、何を目指して謎を解くのかが密に語られているのです。

    私は時折、人が殺害されるような本を読んで何が楽しいのかと聞かれることがあります。人道的に非難されるような物語だし、不可能犯罪なんて現実離れしてるし、もっと人生の役に立つ本を読めと。

    でも私はミステリーほど知的な読み物はないと思ってるし、人生の学びになることも多く、生きる指針も照らしてくれることもあるんですよね。好きになるっていうことが最大の原動力で、正直に生きるということがその燃料なのでないでしょうか。

    • アールグレイさん
      人が何と言おうと、
      好きな本を読むことが
      一番!人は人、自分は自分
      ですね!
      人が何と言おうと、
      好きな本を読むことが
      一番!人は人、自分は自分
      ですね!
      2024/03/17
    • autumn522akiさん
      アールグレイさん、ありがとう~
      ほんとそれなんですよね、考えすぎたり、人のことを気にしたりしても
      人生楽しくありませんから。
      アールグレイさん、ありがとう~
      ほんとそれなんですよね、考えすぎたり、人のことを気にしたりしても
      人生楽しくありませんから。
      2024/03/17
  • 大好きな作家は何人かいます。
    今風に言えば「阿津川辰海」は私の推し。

    そんな辰海の「館」シリーズ第三作です。
    辰海風に言えば本シリーズは「館四重奏」、すなわち既刊の「紅蓮館の殺人」・「蒼海館の殺人」、本書「黄土館の殺人」の後にもう一冊くるんです!

    わかってるんです。
    でも、我慢出来なかったんですт т

    だって辰海の新刊ですよー

    えっ、何の話???ってなりますよね^^;
    いやぁ~、何を隠そう「紅蓮館の殺人」「蒼海館の殺人」は未読なんです‪(*´꒳`∩)‬

    かなさんから本書の発売日を教えて貰ったので、それまでに読むぞー٩( •̀ω•́ )ﻭ
    って、本棚からは引っ張り出してきてはいるんですが...
    間に合いませんでした(´>∀<`)ゝ

    という訳で、シリーズ第三作からの初読みとなりましたが、さすが辰海です。

    609Pの本作、中弛みすることなく読了。
    ってか、やっぱ辰海なので
    ((* _ω_)ゴロン(_ω_* )ゴロンひっくり返されます。

    最後には驚くべき真相も待ち受けていました。

    クローズド・サークルでの殺人事件、ミステリーの大道ですが、単なる謎解きミステリーじゃないんだよなぁ。
    だからシリーズ物なんでしょうが。

    短編・中編のイメージが強い辰海ですが(勝手なイメージです)、そんな辰海が描くシリーズ物なので、ガチです。

    早く「紅蓮館の殺人」から読まないとね^^;;;;;;;



    <あらすじ>
    殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。そのとき土砂の向こうから女の声がした。声は、交換殺人を申し入れてきた――。

    同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。

    この小説は、土壁の向こうで起きる連続殺人と、孤立した館での推理とサバイバルを描いたスリリングな作品です。登場人物の心理や動機、そして驚くべき真相が待ち受ける。



    土壁の向こうで連続殺人が起きている。
    名探偵(ぼく)は、そこにいない。

    孤立した館を連続殺人が襲う。
    生き残れ、推理せよ。

    シリーズ累計18万部
    若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ

    ☆☆☆
    殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
    復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
    そのとき土砂の向こうから女の声がした。

    声は、交換殺人を申し入れてきた――。

    同じころ、大学生になった僕は、
    旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
    荒土館に滞在することになる。
    孤高の芸術一家を襲う連続殺人。

    葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。

    著者について

    阿津川 辰海
    1994年東京都生まれ。東京大学卒。2017年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により『名探偵は嘘をつかない』(光文社)でデビュー。以後、『星詠師の記憶』(光文社)、『紅蓮館の殺人』(講談社タイガ)、『透明人間は密室に潜む』(光文社)を刊行し、それぞれがミステリランキングの上位を席巻。’20年代の若手最注目ミステリ作家。

    • ヒボさん
      ゆっきーさん、こんばんは♪

      辰海いいですよね(*´ω`*)
      本作もきっと期待を裏切らないと思いますよっ(*・ω・)ノ
      ゆっきーさん、こんばんは♪

      辰海いいですよね(*´ω`*)
      本作もきっと期待を裏切らないと思いますよっ(*・ω・)ノ
      2024/02/17
    • かなさん
      ヒボさん、こんばんは!
      わ…もう、読んだんですねぇ…!
      さすが、ヒボさんっ(*^^*)
      私も、昨日本屋さんでチェックしてきました。
      ...
      ヒボさん、こんばんは!
      わ…もう、読んだんですねぇ…!
      さすが、ヒボさんっ(*^^*)
      私も、昨日本屋さんでチェックしてきました。
      でも、買うのは我慢しました…1200円はお高い(^-^;
      ということで、図書館に入るのを待ちます…。

      でも、面白かったようですね!!
      早く図書館に入らないかなぁ~♪
      あ…でも、この次もあるんですかぁ?

      ヒボさんはその前に
      「紅蓮館の殺人」「蒼海館の殺人」
      読まなきゃですねっ(*^^*)
      2024/02/18
    • ヒボさん
      かなさん、おはようございます♪
      辰海のシリーズ物、ちゃんと順番通りに読まないといけないのはわかっちゃいるんですが、我慢出来ませんでした^^;...
      かなさん、おはようございます♪
      辰海のシリーズ物、ちゃんと順番通りに読まないといけないのはわかっちゃいるんですが、我慢出来ませんでした^^;

      「館四重奏」と題されたシリーズなので、きっともう1作品きますよ。

      「紅蓮館」「蒼海館」は本棚から引っ張り出していますが、今日も返却本を持って図書館に行くし、予約してた本の受け取りもあるので...
      もはや何から読めばいいのかわかりません( ˘•ω•˘ ).。oஇ
      2024/02/18
  • ミステリー書評
    読書レベル 中級
    ボリューム 611頁
    ストーリー ★★★★★★!
    読みやすさ ★★★★★
    トリック  ★★★
    伏線・展開 ★★★★★
    知識・教養 ★★★
    読後の余韻 ★★★★★
    一言感想:
    「紅蓮館の殺人」を読んだ方、長編の本格ミステリーが好きな方にオススメの一冊です。

    これは良かった!シリーズ3作目。「紅蓮館の殺人」「蒼海館の殺人」も読みましたが、この作品が一番好きです!ジェットコースターのようなテンポの良さで途中からページを捲る手が止まらなくなりました。

    ストーリーは「紅蓮館の殺人」の出来事を前提に進みますので、読んでおいた方が断然面白くなります(逆に「蒼海館の殺人」は読んでなくても十分楽しめます)。

    また、令和の十角館の殺人と言っても過言ではない「衝撃的なの一行」に出会えました(笑。

    個人的に第1章がかなり自分好み!名探偵の葛城が犯人の心を見透かしたかのように軽快な話術で犯人を追い詰めていく様は最高に面白い!もはや私の大好きな古◯任三郎でした(笑。

  • 「災害」+「クローズドサークル」から始まるシリーズ三作目の本格ミステリー。

    本格ミステリー好きには、たまらない一冊だと思います。「交換殺人」「館もの」「閉鎖空間」「不可解な殺人現場」「仮面の人物」「名探偵」と、これでもかと本格ミステリー要素が詰まってます。
    600ページ超えの大作で、どっぷりこの世界観に没入できて、大満足でした。

    本作〈館四重奏〉シリーズとのことで、次は「風」をテーマにしたクローズサークルのようです。火事→洪水→地震ときて、次は台風?竜巻?落雷?とかでしょうか、予想するだけでも楽しいですね。次回作にも期待大です。

  • 大地震によって発生した土砂崩れで道は塞がれた。その前で立ち尽くす男・小笠原。彼はその道の先にある荒土館の主・雷蔵へ復讐を果たすつもりだった。これでは犯行は不可能!そんな時に土砂崩れの向こう側から女の声がした──「交換殺人をしませんか?」と。

    時を同じくして、大学生になった「僕」こと田所、その友人の三谷は、「名探偵」の葛城と土砂崩れによって引き離され、荒土館に滞在することになる。芸術一家を襲う連続殺人事件!その場には名探偵はいない。探偵であることを辞めたあの女性と、僕たちは惨劇を生き残ることができるのか?!

    『紅蓮館の殺人』から始まる「館四重奏シリーズ」の第三弾。この作品だけ読むと登場人物の関係性がつかめないので、一作目から順番に読むことをオススメしたい(特に二作目が好き!)。なぜかと言えば、一作目で登場して葛城と対決した元探偵・飛鳥井光流(ひかる)の復活を描いた物語だから!ぼくは飛鳥井の復活をぜひ描いてほしいと思っていて、それが叶って感慨深かった。一作目を読むことで、この物語の構成やドラマが組み上がる趣向になっている。残るはあと一つ。テーマは「風」なら嵐、台風のクローズドサークルが舞台かな?色で言うと、緑。三谷の名前が緑郎っていうの、もしかして関係ある?!

    内容は三部構成。一部は交換殺人のために町へ向かった小笠原と、避難した名探偵・葛城が鉢合わせしてしまうという倒叙ミステリ仕立て。名探偵恐るべし!ぼくだったらすぐ諦めるな…。ここまでは前奏で、二部からが荒土館での事件に踏み込んでいく。探偵助手・田所が葛城不在の中、手がかりとなるように手記を残しつつ、自ら謎を解きにかかる!三谷とのコンビが絶品。変わり者だらけの芸術一家を相手に、数々の死と直面しつつも目を背けない田所がカッコよかった。この活躍だけでも心躍る。

    三部は元探偵・飛鳥井のターンへ。荒土館を持つ土塔(どとう)家の長男・黄来(こうらい)の婚約者として事件に遭遇するも、とある過去から探偵であることを頑なに拒否していた。そんな彼女がいかに復活するのか。すべてはここに通じる物語だった。それだけで充分満足。

    館ものとしてのお約束、仕掛けなども完備!外と分断されたクローズドサークル!交換殺人!という要素が絡まり合うも、図やタイムテーブルなどもあってわかりやすい(逆にミステリファンとしてはわかりやすすぎるのが難点かも?)。ドラマのカタルシスほどに、ミステリとしての盛り上がりはそこまでなかったのが唯一残念(これも計算の内か。偶然の極致への挑戦というか)。ただ、真相を解明するだけではなく、いかに事件の幕を引くかという部分についてはこれでよかったんだと思う。

    最後に、雷蔵の「芸術家は死んでこそ完成する」という話が印象深かったので引用しておきます。現代だからこそこの問題は根深いんだと思う。

    p.249,250
    「そりゃあ君、生きている芸術家は、自分の作品に対する評価に、作品で返すことが出来るからさ」
    「え……?」
    「言っておくが、君ら世代がやっているように、インターネットを通じて直接反論するようじゃ芸がない。批判には作品で返さないとな。芸術家は批評に作品で返す。だが、そうすると、どうだ? 本来、作品と芸術家は切り離されているべきで、作品単体をありのままに鑑賞した時の感動を、鑑賞者は感じるべきだ。だけど、芸術家が批判に作品で応えるなら、ありのままには感得出来ない。その後の芸術家の反応が、勘定の中に含まれてしまうからだ。今みたいに、相互監視が進んだ世界だとなおさら、そういう息苦しさを君も感じるんじゃないか?」

  • 装画: 緒賀岳志

    発売日に本屋さんでゲット!
    地震がおこる内容なのは本の後ろに記載があったのですが…びっくり
    名探偵と助手は離れ離れになってしまう
    今回は名探偵が現場から離れて推理する羽目に。
    現場にいる助手が頑張って推理していくけどやっぱり名探偵には敵わない

    今回もおもしろかった〜
    予想の斜め上を行って、何回も目を丸くしている自分がいた(゚o゚;;

  • 館四重奏シリーズ第3段、黄土館の殺人は葛城、田所、三谷、飛鳥井が、発行とともに年齢も成長し大学生となっていた。これを最初に読むと登場人物がわかりにくいかもしれないが、上手い具合に連続したミステリーになっている。館四重奏というだけあり次の作品が最後だろう?(4作という意味?)が、楽しみであり、また次々と続編を読みたいというのもある。
    また、石川能登地震のことも作者は出版延期や中止も考えていたようだが、担当編集者とたもに誠実に出版したことにも納得した。

  • 阿津川さんの【館四重奏】の3作目。
    旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。
    今回も惜しみなくミステリーたっぷり、エンタメ要素満載といった内容で読み応えがありました。
    1作目の落日館での事件が関連しているので、そちらを読んでからがおすすめです。
    葛城・田所・三谷も大学生となり、それぞれの成長した姿も良かったです。
    シリーズが進むに連れて、クオリティが高くなっており、阿津川さんの進化を感じられます。すごい作家さんです。最後の続編も楽しみです。

  • 館シリーズ三作目は「蒼海館」に匹敵するボリュームだったけど、面白さも加速していて数日であっという間に読んでしまった。
    毎回ミステリーと自然災害とを掛け合わせているが、今回は地震と土砂災害が襲う中、「黄土館」で殺人事件が発生。土砂崩れにより葛城、田所、三谷の大学生三人組は館の中と外に分断されてしまう。名探偵である葛城が不在のまま、孤立した館で発生した連続殺人事件をどう解決するのか? 
    これが一つの見どころになっている。

    さらに今回は一作目「紅蓮館」以来の飛鳥井も再登場。元名探偵の飛鳥井の動向と葛城との因縁の行方も今回の見どころでなの、ここはシリーズを通して読むべき。
    館の中と外の出来事がつながりを見せたときの謎解きといい、予測不能な地震も一連の出来事に絡んでいるところといい、今作もミステリーとしての読み応え満載だった。最初に提示された「交換殺人」がそんな決着をみせるとはなぁ…

    今回は一度落ち込んでいた葛城も完全に復活し、田所、三谷とともに成長しているのを感じた。
    シリーズも残すところあと一作品。これまでのストーリーがどんな風に繋がっていくのか、最後まで見届けたい。

  • Amazonの紹介より
    土壁の向こうで連続殺人が起きている。
    名探偵(ぼく)は、そこにいない。孤立した館を連続殺人が襲う。生き残れ、推理せよ。
    シリーズ累計18万部
    若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ
    殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
    復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。そのとき土砂の向こうから女の声がした。
    声は、交換殺人を申し入れてきた――。
    同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、荒土館に滞在することになる。
    孤高の芸術一家を襲う連続殺人。葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。


    約600ページというボリュームのある量でしたが、次々と展開する不可解な連続殺人やクローズドサークルならではの恐怖さが相まって、面白かったです。

    2つの現場で同時進行で、様々な犯罪が繰り広げられていきます。前半では、名探偵・葛城が、荒土館で起きる犯罪を防ごうとします。犯人側の視点なので、犯人がわかっているのですが、どのようにして見破っていくのかが面白かったです。
    自信ありげな葛城が、未然に防ごうとコミカルに行動している描写は、犯人の張りつめた空気感とは裏腹にちょっとした息抜きの感覚もあって楽しめました。
    ラストでは、地震によって埋もれた荒土館にいた人たちが救助されるということで終わります。何人殺されたかわからぬまま、時を遡ります。

    中盤からは、メインとなる荒土館での連続殺人が描かれています。
    地震による土砂崩れで、離れ離れになってしまった助手の田所。田所が主人公となって、荒土館での殺人に巻き込まれます。それも一見不可能殺人と思えるような事件が次々と起きて、よく思いつくなと思ってしまいました。

    不可解な殺人、謎を解こうとする「探偵」たち、そして恐怖に駆られる登場人物たちの描写にじわじわとくる恐怖も相まって、世界観に引き込まれました。

    後半では、2つの物語が一つとなって、救助された後の物語へと繋がります。
    犯人は誰なのか?殺人のトリックは?
    一つ一つ丁寧に表や図を加えながら、謎解きが始まるので、頭がこんがらがっている自分も、ラクに楽しめました。
    様々な証言や荒土館ならではの立地を有効活用して、全てを巻き込む展開は、スッキリ感もありましたし、驚きもありました。犯人は、段々と被害者が多くなるにつれて、もしかして・・・と思う人物でしたので、なんとなくわかるかもしれません。ぜひ犯人が誰なのか挑戦してみてください。

    「館」シリーズ第3弾ということで、次作が最終作。どんな物語なのか楽しみです。

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著者プロフィール

1994年東京都生まれ。東京大学卒。2017年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により『名探偵は嘘をつかない』(光文社)でデビュー。以後、『星詠師の記憶』(光文社)、『紅蓮館の殺人』(講談社タイガ)、『透明人間は密室に潜む』(光文社)を刊行し、それぞれがミステリランキングの上位を席巻。’20年代の若手最注目ミステリ作家。

「2022年 『あなたへの挑戦状』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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