世界はおわらない

  • 主婦の友社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784072483329

作品紹介・あらすじ

世界は悪魔でいっぱい?人間はもうおしまいなのか?世代をこえて読みついでいきたい名作。2004年度ウィットブレッド賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 聖書のノアの箱船のおはなしを、主に“聖書には出てこない”《ノアの娘》ティムナの視点から描く。

    久々に小説を夢中になって読む。
    洪水前後~その後の臭いまで漂ってきそうな箱船内の様子がリアリティあります。
    日光と食糧不足で歯が抜けちゃうところなんか恐ろしい。
    主人公が《ノアの娘》ということで小説の方向性はだいたい決まったようなものですが、興味を失うことなく一気に読めました。
    ティムナは父と神を信じている。それが洪水後起こる様々な出来事に混乱しつつもやがて“じぶんの信じること”を肌で会得していく。
    一風変わった終末青春小説なのかも。

  • すごい小説を読んだ、と読み終えて閉じながら詰めていた息を吐いた。
    ノアの箱舟の物語を、名も残らず、結婚や出産することもなく、家に仕えて終わる運命のノアの娘の視点から書いた作品。
    間に別の視点も入るのだけど、動物達が語るところもあり、非常にシビア。
    神の言葉に従ったとはいえ、家族以外の人間や舟に乗らない幾多の動物を見捨てる行為をただ受け入れて良いのか、そもそも神はいるのか。
    信者でない私にもかなりの衝撃だったので、キリスト教を信仰する人々の間ではどう受け止められたのだろう。
    聖書に記されたノアの箱舟にもっと詳しければ更に深く読み込めただろうことが残念だが、知識が少なくともついていける。
    装丁もとても良い。

  • ノアの方舟伝説をモチーフにしたパロディーです。聖書には語られず、後世に存在を忘れ去られたとされるノアの娘・ティムナが、おもな主人公です。

    やたらと動物を集めたりしているノアの一家は、変人として近所中から白い目で見られていました。一方、ノアとその息子たちは、自分たち家族を神に選ばれた者と見なし、それ以外の人を悪魔と呼んで軽蔑しています。
    実際に洪水が起こると、ノアは助けを求める人々を冷酷に突き放します。そんな中、ティムナと末っ子ヤフェト、ヤフェトの妻にするため拉致されてきたツィラが、流れついた二人の子どもをひそかに助けたことで、物語は急激に動き出します。狭い方舟の中で繰り広げられる絶望的な人間関係の果てに、ティムナが見出した新しい世界が、胸に迫ります。

  • ノアの方舟のおはなしを聖書には出てこないノアの娘の視点から書いたもの。ノアの方舟じたいぼやっとしか知らないので、背景をきちんとしっていればもっと楽しく読めるのかもしれない。

  • ノアの箱舟を、聖書には書かれない少女ヤフェトの目から見た物語。船底から覗いた世界。裏返った信仰。

  • ちょこちょこ読んで、きのう読了。
    ノアの末娘の視点を中心に語られる、ノアの箱舟の語り直し。箱舟の「死守」がすさまじい。ノアはただ祈り、神の言葉をきくだけだけれど、「神の手」となったセム兄さんは、だんだん「神」になりかわってゆく。舟に乗るそれぞれの立ち位置の違いと選択が興味深かった。でも、動物に語らせるのはちょっとやりすぎかなと思う。三人称で外側から描かれていれば、また違ったかもしれないのだけど。
    凝った造本がすてき。

  • ノアの箱舟からこんな作品が生まれるとは驚きでした。
    非常に現実的な視点から描かれた「ノアの箱舟」だと思います。
    人間の傲慢や独善、それのもたらす狂気が恐ろしく、しかし現実に起こりそうだという気になるところがいっそう怖い。
    本能のままに生きる動物の美しさというか豊かさのようなものを感じる反面、人間は心底ろくでもない生き物なんだけど心底嫌いにもなれないな、とも感じます。

  • 古書店で見つけ、内容もあまり確かめずに装丁買いした一冊です。

    よくある三方背ボックスではなく、両方から取り出せる紙スリーブに包まれた目を引く本でした。
    スリーブのポップなデザインと、中の、チョコレート色に金文字のシックな装丁のギャップ。
    素敵だなと思いました。

    ウィットブレッド賞受賞(イギリスの権威ある文学賞。現在はコスタ賞という)。
    ”世界は悪魔でいっぱい”というコピーに、なんとなく「ファンタジーだろう」と深く考えず購入しました。

    実際に読んでみると、ノアの方舟を題材とした宗教色の強い内容。
    実は宗教的内容の本はあまり好みではないので、「失敗したかな…」と思ってしまいました。

    夥しい死の上に浮かぶ方舟。

    方舟の中は、血と腐臭と、その他たくさんの悪臭にまみれています。
    その描写がとてもリアルで生々しいです。

    選ばれた彼らは、救いを求め方舟に手を延ばすたくさんの人達を見殺しにします。

    作者の創作である娘の視点や、その他乗せられている動物たちの視点で描かれたり、展開にリズムがあって面白いと思いました。

    好きな内容ではないはずなのに、なぜか飽きること無くどんどん読み進めてしまいました。
    方舟の中で起こるさまざまな事件が「人間」の姿を浮き彫りにしていく過程が興味深く、短時間で読了。
    ラストの緊迫した展開が面白かったです。

    失敗したかな、と最初は思いましたが、読み終わってみると、好きではないけどなかなか興味深い本でした。

  • 神様をしんじること。
    とてもきれいな話でした

    「この動物たちはみんな、生まれるのを待っている。生命は始まりのときにもどってしまったのだ。新しい始まりよ、子どもたち。前とはちがうの。離れちゃだめよ、子どもたち。楽しくなるようなお話をしてあげるから。」

    「でもキティムはだめだ。
    キティムをゆずるつもりはない。あたしがなぜあんなことを言ったのか、箱舟にいる悪魔が本当はどこにいるのかも説明するつもりはなかった。あたしはキティムをゆずらない。父さんにも。あたしがずっとキティムをかくまっていたのは、ケクゾランみたいに殺されるのを見るためじゃない。神さまはご自分のおもちゃの舟を四十日と四十夜しっかりつかまえていた。あたしはキティムをしっかりつかまえていよう。何があっても。」


    「この人生でひとつ確かなことはね、いつか、どこかで自分に起きることは、ほかのだれかにまず起きているってこと。」

  • 旧約聖書創世記7,8章に語られる洪水が起こってから収まるまでの、ノアの箱舟の中でのあったであろう出来事。動物と一緒に一年ちかく船の中・・・匂いは大変でしたでしょう。マコックランは、「ピーター・パン・イン・スカーレット」の著者。

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著者プロフィール

1951年生まれのイギリスの作家。『不思議を売る男』で88年にカーネギー賞、89年にガーディアン賞を受賞。2004年に『世界はおわらない』でウィットブレッド賞児童書部門受賞。18年には『世界のはての少年』で二度目のカーネギー賞受賞という快挙を成し遂げた。

「2022年 『世界のはての少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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