今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 984
感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086802345

作品紹介・あらすじ

会社で頑張るすべての人々に捧げる、ちょっとブラックなお仕事小説!

あこがれの会社に入社した玲美。だが些細なことがきっかけで直属の上司・岸本の執拗な嫌がらせが始まった。社内では優秀な社員として通っている岸本に逆らうことはできない。疲弊しきった玲美は、彼を殺したいと夢想するようになる。こいつの頭をぐしゃりと潰してやれたら――。
(第一話『今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います』)

正社員として採用してもらえるか、微妙な立場である契約社員2年目の麻里子。成果も出しているのに、主任の鈴木からは不当に厳しく扱われている。人格まで否定されるような日々を過ごすうち、麻里子は鈴木主任の後ろに見えるあるモノが気になって…?
(第二話『天井の梁』)

妊娠を機に異動した奈々。だがこの部署は、コネをタテに傍若無人に振る舞う豚上司を閉じ込めておく檻だった…。被害に遭っている同僚たちと共有する、愚痴を書き殴るためのテキストファイル。そこにある日書かれていたのは…?
(第三話『引き継がれ書』)

感想・レビュー・書評

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  • 酷い上司に苦しめられる主人公たちの3作短編お仕事小説。

    破廉恥な表題名に釣られて手に取った作品。

    そこはもはや地獄のオフィス。
    3話共通して、鬼畜な言動を平気で宣うパワハラ上司が登場する。

    ある主人公は撲殺を、ある主人公は首吊りを、ある主人公たちは呪いを、、、と逆襲を企てるさまがオカルトテイストで描かれている。

    初著者だったが、人の気持ちの描写が上手い。
    上司の嫌味、それを受ける主人公の反論感情と自責感情は、共感できるところが多かった。

    特に1話目は表題名のストーリー作で、共感する場面も多く、感情移入しながらオチでゾッとするなど(これはおもろいヤツや)と本作への期待が膨らんだ。

    しかしながら、その後は上司の鬼畜度とホラー要素が高まり過ぎて「そっちに行ってしまうのか」と、終盤あたりから俯瞰状態で読了。

    表題名とのギャップを期待したかったのか、はたまた表題名通りを期待したかったのか、個人的にもっとスカッとしたかった。

    本書を通じ得たものとしては、本当にこんな上司が今の時代にも存在するのであれば、私はとても恵まれておるなと、感じられたことであろう。

    よし。今日もコトにツカえる仕事ではなく、ハタをラクにすべく働こうではないか。

  • ジャンルで言えばライトホラーとなるのでしょうか。
    本書は、上司からいじめ、パワハラ、セクハラ、マタハラ等の酷いハラスメントを受けている3人の若き女性会社員を主人公にした3つの短編集となります。

    第一話は、あこがれの大手旅行会社に就職した玲美が上司である係長にちょっとした意見をしたことが引き金となり、その上司から執拗な嫌がらせを受けることとなる『今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います』
    第二話は、契約社員2年目の麻里子がお局上司である女性主任からいじめターゲット指定を受け、もう自殺するしか逃げ道はないのかと思い始めてしまう『天井の梁』
    第三話は、妊娠したことがきっかけで奈々が配置された異動先の部署は、会社上層部とのコネをタテに好き勝手に行動するクソ上司を配置しておく掃きだめ部署で、そこには部下達が密かに記していた係日誌が存在した『引き継がれ書』

    の3作です。

    これだけ職場での『ハラスメント』が問題になっている今の時代、本書で描かれているような、例えば、女性の部下に何日も徹夜で仕事をさせていたり、詳しい理由も教えず「気持ち悪いから」という理由で仕事を一からやり直させるというような、ここまで露骨に酷いハラスメントをしていたらもう即裁判沙汰になっているだろと思いながら、そういった理不尽な上司の行為に黙って堪え忍んでいる彼女達の姿を見ていると、読んでいるこちらの胸も苦しくなってきます。

    ある上司は人事権をちらつかせ、また、ある上司は「次回の派遣社員契約を切る」と脅すなど、彼女達の最も痛いところを突いてきます。
    そんな彼女達は「私ががんばればいいんだ」「今だけ我慢すれば将来は開けてくる」と前向きとも諦めとも言える気持ちのまま日々の膨大な仕事をこなしていきます。

    しかし、そんな彼女達にも限界がきます。
    十分な睡眠も取れず、何をやってもダメ出しされ、個室に呼ばれて人格を否定され、罵倒され続ける。
    こんな毎日を過ごしていれば「上司を金属バットで殴り殺してやろうか」、「夜中に上司の机の真上で首をつってやろうか」と思うのはもうごく普通のことです。

    彼女達の唯一の安らぎは「上司をこの手で抹殺するということ」を毎日妄想することだけなのです。
    そのことは妄想だけでなく、毎晩見る夢にもその情景がありありと映り込んできます。
    そして彼女達が迎えた結末は・・・。


    本当に面白かったです。
    特に表題作の『今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います』は、主人公の玲美の心情描写が秀逸で、まるで自分のことのように出来事が迫っています。そしてこの結末、皮肉とペーソスの効いたO・ヘンリーの傑作短編『警官と賛美歌』を読んだときと同じような満足感を味わえます。

    はっきり言って僕がもし彼女達のような待遇を受けたら、ここまで耐えきれないでしょうね。
    後先考えずに辞表を上司の顔に叩きつけているか、実名でマスコミにでもなんでも暴露記事を出してもらうかしてると思います。

    ・・・って、ここではこんなこと書いているけど実際、そんなことって出来ないんですよね。人間って弱いものです。第一話の玲美のように縁切り神社に行って絵馬を奉納することすら出来ないと思います。

    20年以上社会人を続けてきているそんな僕ですが、長く社会人をしていて一番感じたことは、本当に、どこの職場であってもクズ野郎(男女とも)は存在するってことです(笑)。
    パワハラ・セクハラ上司なんて当たり前で、逆に「何でこんなヤツがここまで出世してんだ」と思うくらい全く何もしない無能な上司もいるし、仲間の足を引っ張ることしか頭に無い同僚、仕事中にスマホでゲームをしているベテラン、こちらが少し注意しただけでパワハラだと騒ぐ若手社員など、数え上げたらキリがありません。

    だけど、そういう人間をそれこそ毎回撲殺していたら自分の身体がいくらあっても足りないですよね(笑)。
    考えてみると、そういう時自分はどうしていたかというと、結局、どうもしなかった(笑)。

    結構、時間が解決してくれるんですよ。
    ある上司は、勧奨退職で職場を去って行ったし、他の人は左遷されたり、不祥事起こして自ら辞めていったり、凄くたまにですけど自分が栄転して部署が変わったり(笑)。
    まあ、春の来ない冬はないし、明けない夜は無いのです。

    だからと言って「黙って堪え忍べばいい」ということにはなりません。
    今の時代、必ず救済の道があります。
    上司が悪ければ、その上の上司に相談することもできるし、人事部門に相談することもできます。
    それが無いなら、弁護士や労働基準監督署に相談することだってできるのです。
    そんな職場を辞めることだって、考慮に入れるべき手段の一つです。
    日々の糧を稼ぐための職場の為に自分の命を失うことや、罪を犯して自分の人生を台無しにする必要など絶対にないのです。

    ただ、そこまで深刻な状況ではないけど「ちょっとあの上司ムカつくよね~」っていうくらいの時は、この本を読むのが一番の特効薬ではないでしょうか。
    もしかしたら心の奥底であなたが思い描いている妄想を彼女達が代わって実行してくれるかもしれませんよ。
    全ての働く老若男女に贈りたい、ちょっとブラックで、ちょっとホラーで、ピリッとペーソスの効いた珠玉のお仕事短編集、読了感は最高です(笑)。

    • goya626さん
      怖いもの見たさで、読んでしまうかも〃
      怖いもの見たさで、読んでしまうかも〃
      2019/10/17
    • kazzu008さん
      goya626さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!

      まあ、ライトノベルなのでそこまで怖くはないですよ笑。
      でも、自分...
      goya626さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!

      まあ、ライトノベルなのでそこまで怖くはないですよ笑。
      でも、自分がもしこの上司のような人間になっていたらと思うと夜、寝られなくなると思いますw。
      2019/10/18
  • こうゆう上司の下で働いて、過呼吸になったこともあるので、私も当時、こんなことを考えていたなぁと。

    今はそんなことはないので、いいんだけどね。

    自分は関係ないと思う上司の方、振り返ってみることが出来るうちが花ですよ。

  • ちょっとクスッとする感じなのかなって思って読み始めたら全然違った
    ホラーでした
    めちゃくちゃ怖い訳では無いけどゾクッとする
    パワハラマンは滅びてほしい~

  • 今の世の中は人間関係、子供も大人も関係なく複雑。
    人を罵ってもいいと思っている人が沢山いる。
    仕事ではパワハラセクハラ沢山ある世の中。
    その世の中を生きてる私がよんで
    スッキリした。

  • 【この仕事も上司もいつかこの手で終わらせる事を願って】
    ブラックな会社で仕事をする全ての人に捧ぐ物語。 

    働けど働けど我が生活、楽にならず。
    仕事が出来る人ほどそういう風に感じるのでは無かろうか?
    任せられる仕事は多忙を極めて、上手くいかない責任を自罰的に背負い込んで。
    謝罪で事無きを得ようとしても理不尽な叱責は止む事は無い。
    本当は仕事で頑張ってやり甲斐を得たいだけなのに。
    人間関係に恵まれない自分が情けなくて、恥ずかしくて、消えたくなったとしても。

    全てを己の手で終止符を打てる手段があるならどれだけ救われるだろう?

  • 惹き込まれるストーリーに一気読みしてしまいました。 特に、引き継がれ書には背筋にツゥーと伝う汗が…^^; とっても面白かったです。世にも奇妙な物語みたいな内容でした。映像化しても更に面白くなりそうですね。

  • 分かるぅ!!
    こういう上司いるよね~!
    ってお話でした ^^

  • 「世にも奇妙な物語」の小説版という感じ。
    すっきりよりイヤミス感のほうがあるかな。
    期待と違って自分に参考になる話はなく(笑)、普段のイライラが解消されるものではなかったけど面白かったです。

  • こういう本をだしてもらえると、うれしい。
    私もつらいじきあったからあのとき読んでたらわたしはどうしてただろう??

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著者プロフィール

第11回エンターブレインえんため大賞ガールズノベルズ部門奨励賞を受賞、『ヤンキ‐巫女逢桜伝』でデビュー。少女小説で多数の著作を持つ。ほか、ブラックお仕事シリーズ(『今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います』『神さま気取りの客はどこかでそっと死んでください』『会社の裏に同僚埋めてくるけど何か質問ある?』)や、『愛するあなたの子を授かって、十月十日後に死ぬつもり。』など多数。

「2022年 『死にたいあなたに男子大学生がお肉をごちそうしてくれるだけのお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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