小林一茶 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 18
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087200225

作品紹介・あらすじ

哀しいのにユーモラス、田舎くさいのにモダン、わかりやすいのに奥深い-誰も知らなかった一茶がここにいる。一茶の神髄330句。

感想・レビュー・書評

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  • 一茶の俳句の中から330句を取り上げて解説をおこなっている、鑑賞案内というべき内容の本です。

    著者は、芭蕉や蕪村と比較して、一茶の句にはどこまでも人間へのまなざしが中心にあることを指摘し、その近代性に一茶の独創性を見出しています。個人的には、蕪村のコスモロジックな世界に比べると、一茶にはユーモア感覚の卓抜さは見られるものの、少しもの足りないように感じてしまうのですが、それを「近代性」と特徴づけ、放哉や山頭火などによって試みられた近代の自由律俳句と関係づけようとする著者の観点は興味深いと感じました。

  • [ 内容 ]
    哀しいのにユーモラス、田舎くさいのにモダン、わかりやすいのに奥深い―誰も知らなかった一茶がここにいる。
    一茶の神髄330句。

    [ 目次 ]
    一茶の生
    一茶の俳句(新年の部;春の部;夏の部;秋の部;冬の部)
    一茶の世界
    一茶の位置

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 小林一茶の名は知らなくても
    「痩せ蛙 負けるな一茶 これにあり」
    「雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る」
    「やれ打つな ハエが手をする 足をする」
    といった句なら聞いた事があるだろう。

    松尾芭蕉の俳句は、いかにも「芸術」という感じだが、小林一茶の俳句には「作者の体温」というか「生活臭」まで感じられる。
    ひらたく言えば、松尾芭蕉の句は洗練されていて、小林一茶の句は泥臭いのだ。

    例えば、天の河を詠んだ句でも
    「うつくしや 障子の穴の 天の河」(小林一茶)
    「荒海や 佐渡によこたふ 天の河」(松尾芭蕉)
    という違いがある。

    どちらもすぐ情景が思い浮かぶ。
    松尾芭蕉の句は、さりげなく引用したりするとカッコいいと思うが、共感するのは小林一茶の句の方だ。

    が、一方で
    「日(ひ)の本や金も子を生む御代の春」
    「是がまあ 終の棲家か 雪五尺」
    「元日や 我のみならぬ 巣なし鳥」
    といった自嘲や皮肉を込めた句もあれば、
    「はつ雁も 泊るや 恋の軽井沢」
    「恋人を かくしたススキ かれにけり」
    「散りがての 花よりもろき 涙かな」
    といった、作者名を知らなければ、別の人の作品かと思ってしまうような作品もある。

    かと思えば、
    「懐の 子が喰いたがる 桜かな」
    「名月を にぎにぎしたる 赤子かな」
    「這え笑え 二つになるぞ けさからは」
    という句もある。
    これだけならば、親バカ全開の句だが、小林一茶は子供を幼いうちに亡くしている事実を思うと悲しい句でもある。

    実際、小林一茶は小さい頃に母親を亡くし、継母とソリが合わなかったり、子供を早くに亡くしたり、とかなりの苦労人らしい。
    小さいもの・弱いものに対する暖かい眼差しを向けつつも、生活感漂う句や皮肉や自嘲的な句も作り、親バカ的な句も作る。
    俳人として一筋縄ではいかない人物だったようだ。

    生涯で作った俳句は約2万句と言われている。
    本書で紹介されているのは、そのうち330句。
    著者曰く、おもしろくない句も多い、そうだが、他の句にも興味が湧いてきた。

    ただ本書の構成にについて1点。
    句をいくつか紹介した後、その解説があるのだが、それが離れているため、どれがどの句の解説か分かりにくいのが難点。

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著者プロフィール

詩人・評論家・仏文学者(1919~2006年)。


「2015年 『混声合唱とピアノのための 宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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