ピカソ (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202069

作品紹介・あらすじ

二十世紀最大の芸術家ピカソ!その巨大で迷路のごとき作品世界を、創作と人生に大きな影響を与えた女性たちとの関わりを通して浮き彫りにする。「人間」を生涯のテーマとしたピカソにとって、描いた女性はモデル以上の精神的な存在であり、女性がかわるごとにその芸術も大きく変化していったのである。一九六一年の「ピカソ展」、六二年の「ピカソ・ゲルニカ展」、六四年の大回顧展の企画実行者を務めて以来、ピカソ、ジャクリーヌ夫人、娘マヤ、孫マリーナ、そして画商カーンワイラーとも深く親交のあった著者が、没後三十年を経てなお「前衛」としてあり続ける巨人の真実に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • まあ、とんでもないおっさんである。
    その画業においても、前代未聞の成功ぶりにおいても、讃うべき長命と古希を前にしての実子誕生を可能にした精力においても、ピカソという人は、とにかく群を抜いている。
    それは女に関しても…というわけで、例によって私の興味はもっぱらその方面にあるのだが、この大芸術家のつとに有名な(といっても没後40年になろうとするこんにち、「知る人ぞ知る」になりつつあるが)家庭的スキャンダルに関しても、ひととおりのことは網羅されている。
    もっとも、著者はみずから語る経歴でも明らかなようにはっきりと「ピカソ寄り」であるから、それを割り引く必要はある。
    たとえば、ピカソ邸に何度も足を運んだ著者にして、長男ポールには「一度会っただけ」だそうだ。著者はそうとしか書かず、それがいかに異常なことであるかはひとことも説明しない。パブリートについても、あたかも祖父の亡骸に対面が許されなかった「だけ」で、あの壮絶な服毒自殺があったかのような書きぶりである。奢侈ばかりを愛した軽薄なところが芸術家・ピカソと合わなかったとか、離婚後もことあるごとにピカソに「つきまとった」とかいう、古典的なオルガ評も然り。ロザン・菅ちゃん言うところの、「書かないという嘘がある」というやつだ。
    ただ、くり返すが著者はみずから己の立ち位置を明確にした上で、本書を書き起こしている。その点紛れもなく誠実であり、また披露される秘話の数々は、直接親交を持った著者にしか書けなかったものである。現在手に入れやすい形での包括的・良心的ピカソ伝であることは疑いない。

    2011/12/17〜12/18読了

  • ピカソは生涯に2度結婚し、何人もの愛人をもち、3人の女性との間に4人の子供をもうけているが、生涯女性歴が切れることはなかった。人としてどうなんだろうと思う人も多くいるし、ピカソの作品は難解、デタラメ等々死後の評価も様々であるが、女性との関係性がピカソの作品に様々な影響を与え、付き合う女性が変わると様式が変わっていくことが解説されているのが、非常に興味深った。

  • 新書

  • 天才の天才たる所以に触れる

  • 未読本10

  • 前回帰国したときにランダムに購入した100円古本の中に、このピカソについての本があり、今月からAGO(アートギャラリー・オブ・オンタリオ)でピカソ展が始まるので読んでみた。

    「ゲルニカ」がとても有名だけど、社会的な画よりも女性の絵を好んで描き続けたこと、カミュやサルトルとの交流や、女性関係、面倒なことが嫌いだったことなど、様々なエピソード交えながら紹介があり、実際にピカソと親交のあった方が書かれているので、リアリティーがあって興味深く読んだ。

    たくさんの女性と情熱的な関係を持ったピカソ。子どもも多くいた。けれど、生前も死後も遺産争いやピカソ自身の愛情の行方で家族や関わった女性、子どもはかなりの犠牲を強いられたようだった。数人の家族がピカソの死後、自殺している。読みながら、「普通じゃ考えられない」と思うようなことに何度も出くわしたけど、常人の理解の範疇を超えた行動で人を傷つけても、「巨匠」としての名を失わず残り、多くを影響し続けるのは、超人的なアートの力なのだろうとも思った。

    2人の愛人、マリー・テレーズとドラがアトリエで鉢合わせし、ケンかになり、ついにピカソに「どちらか選べ」と迫ったとき、

    'それを決定することは難しかった。わしは別々の理由で、彼女ら二人とも好きだった。(中略)わしは決定することに興味がないと決めた。わしはあるがままのものごとに満足した。わしは彼女らに、徹底的に喧嘩すべきだ、と言った。それで二人は格闘を始めた。これがわしのいちばんの思い出の一つだ。 p128'


    この部分を読んでいて、思わず吹き出してしまった。当事者だったら堪らないけど、こういうの、嫌いじゃない。どうしようもない感じ。

    また、本書の中でどのようにピカソ展を日本で実現させたかの流れや交渉の内容などは、美術展示会の裏が少し見えたようで面白かった。

    マルクスの伝記も同時に読んだけど、後々まで大きな影響を残す人たちの生の流れって、なんだか良くも悪くも圧倒的・・・。展示を見に行くのが、とても楽しみ。

  • ピカソと交流のあった著者による評伝。

    著者は、ピカソの生涯を彩った数々の女性たちとの関わりを描き出すとともに、死の間際まで女性を描き続け、「女、女、いつでも女」を貫いた画家の歩みをたどってゆく。本書に描かれた彼の姿は、ある種のいかがわしさとほとんど目をそむけることが不可能なまでの魅力が同居している彼の作品と同じ雰囲気をまとっているような気がする。

    ピカソという人間は、強烈な情熱に溢れているが、彼はそれを宗教的感情や形而上学的な構想へと昇華させることはなかった。ピカソはその長い芸術の歩みを通して「コスモス」を描き続けたが、あくまで「マクロ・コスモス」(宇宙)ではなく「ミクロコスモス」(人間)を描き、それを究極の地点まで掘り下げたのだと著者は述べているが、至言だと思う。

  • 写真家のドラマールが取った写真があることを知りました。
    ゲルニカの制作時代の写真も本書に掲載されています。
    ピカソ、ゲルニカの本によって、焦点のあたっているところが違うので、すごく勉強になります。

    ps.
    ピカソはゴッホの次に好きです。

  • ピカソは夜型人間。彼は気さくな人柄で人生を反映するかのように作風が様々に変遷した。彼の過ごしたスペインへ行ってみたい。

  • [ 内容 ]
    二十世紀最大の芸術家ピカソ!
    その巨大で迷路のごとき作品世界を、創作と人生に大きな影響を与えた女性たちとの関わりを通して浮き彫りにする。
    「人間」を生涯のテーマとしたピカソにとって、描いた女性はモデル以上の精神的な存在であり、女性がかわるごとにその芸術も大きく変化していったのである。
    一九六一年の「ピカソ展」、六二年の「ピカソ・ゲルニカ展」、六四年の大回顧展の企画実行者を務めて以来、ピカソ、ジャクリーヌ夫人、娘マヤ、孫マリーナ、そして画商カーンワイラーとも深く親交のあった著者が、没後三十年を経てなお「前衛」としてあり続ける巨人の真実に迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 青春の光と影
    第2章 「洗濯船」の美女フェルナンド
    第3章 二つの間奏曲エヴァとギャビー
    第4章 「クラシック」との出会いオルガ
    第5章 危険な愛マリー=テレーズ
    第6章 「ゲルニカ」の告発
    第7章 闖入者ドラ・マール
    第8章 女神たちの闘争フランソワーズ
    第9章 ジャクリーヌとの晩年
    第10章 ものみな死で終わる

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著者プロフィール

1931-2011 東京生まれ。美術評論家。著書に『ピカソ』『画狂人北斎』『アヴァンギャルド芸術』など。テレビ「開運! なんでも鑑定団」の鑑定士としても出演。

「2020年 『画狂人北斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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