電力と国家 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206135

感想・レビュー・書評

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  • 電力会社がなぜ今日のような地域独占の形になったのか、民間企業と国家の電力会社の統制権争いの歴史を見ながら明かしていく。

    っていうか松永さんの歴史。
    しかも作者の人松永さんが好きすぎてヤバい。

    個人の名前がいっぱい出てきたけど、どこそこの企業が、政党がとかじゃなくて誰々がこの時こういう判断を下した、こう評した というように個人単位で詳細に調べられててすごいと思った。

    個人的には、昭和恐慌からの不況で日本の官僚たちが自由主義経済の限界を感じてスターリンのソ連やドイツのヒトラー独裁国家の模倣を始めたっていうのがなるほどーってなった。歴史の本とか読もうかなって思った。

    とにかく筆者が松永さん好きすぎてパネェ( ゚д゚ )

  • 図書館に有り

  • 去年の大震災が、『人災』であるなら、『空き管』をはじめとする政治家だけではなく、『東京電力』という会社のことも知らねばならない。と思う。マスコミ(ニュース、テレビ番組、新聞など)は原子力という技術を『専門家』が、わかりにくく紹介するばかりで、さっぱりわからない。(自明です、人類史上最高級の部類の技術なのですから)だから、わかりやすい人間の話から、理解を始めるのが、寛容かと思います。本書は良きナビゲーターとなるでしょう。

  • 原発事故は「想定外」ではなく、想定されたからこそ福島県沿岸部につくられた。原発は立地先の地方住民の犠牲なしには成り立たない構造的差別に立脚している」との東大の高橋教授の言葉に納得。


     損害賠償は10兆円にも達するといわれる。それを支払う能力がなければ東電は倒産するのが普通だが、それでは困るからと、さまざまな救済案が出されている。しかし、東電が倒産して、誰が困るのか?
     確かに経営者や社員は困るだろう。出資している株主や大銀行、それに社債を買っている人間も困るが、そのリスクを承知で株を買い、融資をしているのではないか。
     日本航空は倒産させ、会社更生法によって再建を図っている。どうして東京電力は倒産させられないのか。資本主義の社会のはずなのに、突如そうなる日本の縮図・・・・

  • 電力が自由化だった時代が日本にもあった。戦前、民間の電力会社が
    熾烈な競争を繰り広げていた。それが国家により統制されていくことに
    強行に抵抗し「電力の鬼」と呼ばれた男がいた。松永安左エ門。

    偏屈で頑固で、大の役人嫌い。「官吏は人間のクズである」「役人に
    電力会社を運営できるわけがない」。もうこれだけでしびれさせて
    くれる人である。

    本書は戦時の国家統制に電力会社が飲み込まれて行く時代から
    戦後に民の手に電力が戻るまでを松永の国家との闘いを中心に
    描いている。

    「電力で日本を豊かにしたい」。GHQどころか日本中を敵に回してまで、
    松永が成し遂げた電力の民営化だったが、いつのまにか電力各社は
    役所よりも役所らしい企業になり下がった。

    そして、松永があれほど嫌った政治主導の元、原子力発電という怪物
    を作り上げた。

    「生きているうちこそ鬼と云われても
    仏となりてのちに返さん」

    国がくれるという勲章を頑なに拒み続けた松永は、居間の電力各社を
    どのように見ているのだろうか。

  • あまり響くものは無かった。
    佐高信によるバイアスがかかり過ぎ。

  • 求めていたのとは全く違うものに失望。
    おわりに に書かれていることをもっと展開して欲しかった。
    ただの電力事業とそれに携わる、というか介入しようとする国家と民間企業の争いの歴史を書いたもの。

    ただの松永安左エ門礼賛本のように感じられた。

    歴史を綴っているだけで、作者の考察とか提言とかそういった類のものは殆ど伝わりませんでした。

  • 福島の原発事故以来、東京電力(といふか電力会社)といふものがどんな組織であつたのか、国民の前に明らかになつてきてゐます。
    なぜかういふことになつてしまつたのか、そもそも誰が悪いのか。本書では、それを日本における電力事情の歴史を振り返ることで明らかにしてゐます。

    現状の問題点を挙げる発言はいろいろな場所でいろいろな人が発信してゐますが、佐高信氏は今日に至る歴史的経緯を述べてくれます。
    電力を国家管理から死守してきた「電力の鬼」松永安左ェ門とその後継者たる木川田一隆の戦ひに多くを費やし、断片的ながら「松永安左ェ門伝」の様相さへ呈してゐます。

    「国家対電力」といふ緊張関係を失つたのは、木川田一隆の薫陶を受けたとされる平岩外四からだと佐高氏は指摘します。国家に介入させずの原則を崩し、当時の通産省と通じるやうになります。原子力発電の主導権を通産省に明け渡したといふことですな。今回噴出した諸問題は、平岩外四の方向転換以降に端を発してゐると。実際には様様な要因が重なつてゐるのでせうが。
    佐高氏はいつも、個人名を出すのが特徴。「東電が悪い」「民主党が悪い」などと組織名で批判しても詮無いといふことでせう。実際に行動を起こすのは組織や建物ではなく、個人であります。

    もはや既存の電力会社には自浄能力はありますまい。しかし巻末で佐高氏はかすかな希望を感じとつてゐます。新たに「中央対地方」(この用語には抵抗を示す人も多いでせうが)の対立軸が出来つつあると。知事を中心とした地方が連携をとることが出来ればいいのですがね...

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-279.html

  • 時節柄、また佐高信の本ということで読んだ。戦時中の電力国家統制から民営化を全国民を敵に回して成し遂げた松永安佐エ門。その弟子で原子力発電の導入を意思決定した木川田一隆。この両者には「反吐が出るほど役人が嫌い」という共通の思想があったが、木川田の弟子・平岩外四から東電の変節は始まり、今回の福島原発事故という人災を生んだ、というストーリー。電力史や佐高の舌鋒もさることながら、松永の生き様や「大人物は大きく意地を通し、小人物はつまらない意地にこだわる」という「大意地、大人物」論に共感を覚えた。奥池のアセッサーから帰るJR車中で読了。

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著者プロフィール

1945年山形県酒田市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、郷里の高校教師、経済誌の編集長を経て、評論家となる。憲法行脚の会呼びかけ人。
近著に『新しい世界観を求めて』[寺島実郎との共著]『小沢一郎の功罪』(以上、毎日新聞社}、『平民宰相原敬伝説』(角川学芸出版)、『佐高信の俳論風発』(七つ森書館)ほか多数。

「2010年 『竹中平蔵こそ証人喚問を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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