- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087206616
感想・レビュー・書評
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「みんなの家」というものをTVで知って読んでみました。
さらっと読める新書ですが、易しい言葉で語られるのは建築(テクノロジー、アート)と社会の関係についての鋭い考察。
その事については震災後さまざまな立場の人が考えたに違いないけれど、ここまで自分の事として引き受け、考え、実現するのはとてもすごいと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読後に静かな余韻が残るお薦めの新書。謙虚に、愚直に、建築の社会的意味を追求されている建築家・伊藤豊雄さんの姿勢にとても共感。建築は、建築家のエゴの表現ではなく、何か社会と共有できる原理を持つ存在でなければいけないと。例えば仙台メディアパークのような、「目的はないけれども何か安心出来る場所」、つまり社会にとって必要とされる場所。そういう、建築の内と外の関係性に注目すると、建築を見る目がガラッと変わってきますね。外見は豪華そうな建築が妙に薄っぺらく見えてくる。この本一冊を読むだけで、あらゆる建築物との接し方・向き合い方が見えてくるように思います。
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ありのままの自然との関係を取り戻す。そのためにはもっと建築家が社会の内側に入ってポジティブな建築をつくらなければならない。建築は身体で考えるものであり、リアリティのない中で美しい図面を描いても豊かな空間にはならない。建築家として3.11以前から考えてこられたことを3.11をきっかけに静かに力強く訴えているように感じる。ハードよりもソフトから、土木よりも設計からを考える社会が求められている。
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3.11の震災後、著名な建築家がどのような想いでいるのか、ベネチアビエンナーレ金獅子賞の「みんなのいえ」ができる過程などが気になり、読んだ一冊。
建築に携わるいろいろな人の講演で、震災後、建築家が求められていないことの虚しさともどかしさから活動を始めたという話を聴く機会があった。
本著では、社会的背景や歴史などを踏まえて、なぜ建築家が求められていないのかという、著者の見解が語られている。
なぜ海外で評価されている建築家が、日本で評価されていないのかなど、納得。
読みやすい文章で、建築の知識がさほどなくても、理解できる。本著に登場するひとつひとつの建物について、詳細を知りたくなった。 -
復興していく過程で「ミニ東京」にはしてほしくないなぁ、と作者に共感。
被災地だからこそ発信できるものは、人との繋がりや自然と共存する上の豊かさ。これは東京にないものだなぁとつくづく。 -
著者の名を知ったのは、数年前に放送していたテレビ番組http://www.nhk.or.jp/professional/2009/0407/index.htmlで。ふぅむ、建築家というのはこういうことを考えてこういうことをしている人々なのか、と思っていた。
今回、本書を手に取ったのは、ヴェネツィア・ビエンナーレhttp://www.jpf.go.jp/venezia-biennale/arc/j/13/index.html
金獅子賞受賞のニュース以来、気になっていたため。本当は、『ここに、建築は、可能か』(TOTO出版)を読みたかったのだが、図書館に入っていなかったので、とりあえずすぐ借りられたこちらを読んでみた。
前半は、震災後、著者らが釜石に「みんなの家」を建てる前後の話。後半は、著者の道のりを語る自伝風。
著者は仙台の<a href=“http://www.smt.jp/”>文化施設</a>の設計をした縁もあり、建築家として、アドバイザーのような立場で復興に関わっている。
釜石で行われたワークショップでは、住民の意見を元に、斜面に立つ集合住宅や仮設市場などの提案をしている。中でも、大勢で集まれる集会所を備えた「みんなの家」は、設計や建設、利用にさまざまな人が関わり、大きな広がりを見せるプロジェクトとなっていく。
著者は建築家として活動する中で、震災以前から、実社会と建築家との関わりについて問題意識を持っていた。
空間を隔てた完結型の建築が本当によいものなのか。
実社会から、建築の「コンセプト」が乖離しているのではないか。
そうした中で震災を受け、瓦礫の中で実際にどうするのか、建築と社会の関わりについて考える中で生まれてきたのがこうしたプロジェクトとのことである。
*いずれ『ここに、建築は、可能か』も読んでみたいと思います。
*本書はインタビューを元に加筆・訂正したものとのこと。 -
自己主張とエゴを押し通すのとは違う。それを、震災後のコミュニティづくりを通して実感し、建築が提供することのできる真の復興について筆者の取組とこれからの建築の考え方について共感した。
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タイトルどおり、震災後の取り組みのドキュメンタリー的な内容。地元の人との対話を軸にしようとする姿勢には共感。
そして、社会と建築家の距離感に身悶えする、震災後の建築家の苦悩がヒシヒシと。