改憲的護憲論 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210149

作品紹介・あらすじ

2017年10月の衆議院選挙で争点となった改憲。自衛隊を明記しようという加憲案と許さない護憲派。国民多数が自衛隊に共感を持つ中で護憲派は生き残れるか。著者が深い危機感から世に問う改憲的護憲論。

感想・レビュー・書評

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  • 本書を読んで2ヶ月近く経った。未だにどのようにまとめていいのか、判断がつかないでいる。多くが微妙な問題を孕んでいて、評価しようとすると、かなり長い文章になるからである。その間にも、憲法をめぐる情勢は二転三転している(各種世論調査、内閣支持率下落、自民党の改憲案報道)。

    よって、この本で1番刺激を受けた所を書く。それは、日本共産党の憲法政策でもなく、肝心の改憲的護憲論でもない。第一章「護憲派とはどういう人のことか」の所である。

    著者は過去の世論調査結果を駆使して、現実的な国民世論をデッサンする。つまり、一方では現実の自衛隊を認める圧倒的な世論がある。それは災害派遣だけではなく、「専守防衛の自衛隊」を認める世論でもある。一方では9条をどうするか、という国民の世論である。その実態は複雑で、(詳細は略すが)アメリカと同じように海外で武力行使をする力を持つべきだ、と思っている人は全体の2%ほど。防衛力どころか、日本は完全非武装国になるべきだ、と思っている人は全体の2-6%ほど。あと9割は、安全保障政策でいえば、明確不明確にしろ、「専守防衛」を期待しているのである。

    非常に心配なのは、改憲反対運動を担っている少なくない人たちの信条が「9条を素直に読めば、完全非武装は当たり前」という人たちであること。でもその人たちは、自分の意見が国民の5%にも満たないと自覚しているのだろうか。みたところ、「俺たちの後ろには声にならない2割くらいはいるはずだ」くらいに思っている節がある。その人たちが「海外で戦争するつもりなどさらさら無い」と思っている人たちに「改憲したら、海外で戦争する国になるぞ」と「批判」したら、人の信条を侮辱することになるだろう。

    もちろん、今の自衛隊は昔の専守防衛の自衛隊ではないから、安倍首相の言うような改憲をしたら「海外で戦争する国になる」のは論理的な帰結である。しかしかなりナイーブな言い方をしないといけないのを、護憲派は自覚しないとならない。2%の論理が国の方針になるようなことは、絶対にあってはならないのである。

    2018年3月24日記入

  • 17/12/21。

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著者プロフィール

松竹伸幸(まつたけ・のぶゆき)
1955年長崎県生まれ。 ジャーナリスト・編集者、日本平和学会会員(専門は外交・安全保障)、自衛隊を活かす会(代表・柳澤協二)事務局長。一橋大学社会学部卒業。『改憲的護憲論』『〈全条項分析〉日米地位協定の真実』(共に集英社新書)、『9条が世界を変える』『「日本会議」史観の乗り越え方』(共にかもがわ出版)、『反戦の世界史』『「基地国家・日本」の形成と展開』(共に新日本出版社)、『憲法九条の軍事戦略』『集団的自衛権の深層』『対米従属の謎』(いずれも平凡社新書)、『慰安婦問題をこれで終わらせる。』(小学館)など著作多数。

「2021年 『「異論の共存」戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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