書物と貨幣の五千年史 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211832

作品紹介・あらすじ

情報化社会の到来にともなって、ひとびとの行動や情報は電子機器上で完結し「見えない」ものになっている。
その最たる例が電子書籍(書物)と電子決済(貨幣)だ。
「読む」「支払う」といった手間をデバイス上で不可視化することで、人間の行動をブラックボックス化しているのである。
ブラックボックスが溢れる時代を、我々はどう生きるべきか。
Pay Payやマンガアプリ の登場から古代メソポタミア文明までを遡りながら、現代思想や文学作品に書かれた様々な「ブラックボックス」を読み解き、不可視化されたものに向うすべを説く。

【岩井克人氏・松岡正剛氏 推薦!】

◆岩井克人 氏(経済学者)◆
若い永田さんが「ブラックボックス」という概念を用いて、現代世界を読み解こうという試みです。
どのようにしたらこのブラックボックスから「生きた時間」を取り戻せるのか?
それは読者ひとりひとりがみずから考えていかなければなりません。

◆松岡正剛 氏(編集工学者)◆
「見えないもの」たちこそ、大事な顛末を動かしてきた。

【主な内容】

第1章 すべてがブラックボックスになる
1.モバイル革命とはなにか
2.スクショとデジタルトランスフォーメーション
3.インターネット革命が生み出したブラックボックス
4.管理通貨制度と電子取引が不可視化したもの

第2章 情報革命の諸段階、情報濁流の生成過程
1.情報革命の諸段階、情報濁流の生成過程
2. ルネッサンスと印刷革命
3.中世以前の書物と貨幣
4.文字・言葉・数

第3章 人間は印字されたページの束である
1.印象と心像
2.現代思想はブラックボックスをどう扱ってきたか
3.価値とシミュラークル
4.ブルシットジョブと『生きた貨幣』

第4章 物語と時間
1.文学作品に畳み込まれた「生きた時間」
2.あなたの人生の物語
3.はてしない物語
4.「話」らしい話のない未来

【著者略歴】
永田希(ながた のぞみ)
著述家、書評家。1979年、アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
書評サイト「Book News」主宰。「週刊金曜日」書評委員。
「ダ・ヴィンチ」ブックウォッチャーの1人として毎月選書と書評を担当。
著書に『積読こそが完全な読書術である』(イースト・プレス)。

感想・レビュー・書評

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  • 現代人の行動や身の回りの物や手続きがブラックボックスと化していることを考察している一冊。
    書名にある書物や貨幣はブラックボックスについての取っ掛かりとして電子書籍と電子決済を例に扱われ、その後はブラックボックス全体の話に移り変わっていきます。
    書物と貨幣の歴史書かと思い手に取りましたが、内容の趣向が違っていたようです。
    前半は歴史的変遷を、後半はSF小説や漫画・アニメを取り上げて話を進めていきます。
    現代社会の仕組み全体は、大きなブラックボックスと小さなブラックボックスによる入れ子構造となっています。
    ブラックボックス一つを構成している組織や個人は複雑で、どこかでエラーや欠損が起きた場合の修復は極めて困難であると感じました。

  • ブラックボックス時代のリベラルアーツを構想する – 集英社新書プラス
    https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/b_and_b_liberalarts/17773

    書物と貨幣の五千年史 – 集英社新書
    https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1083-b/

    書物と貨幣の五千年史/永田 希 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721183-2

  • 他著書だが書物は「人類と哲学」、貨幣は「未来に先回りする思考法」で興味をもち、これら合わせたテーマなので読んでみた。

  • 書物や貨幣、そしてコンピューターといった私たちの社会や文明を成り立たせているものを、内部が明らかになっていない「ブラックボックス」と捉え、そのようなものに囲まれている我々の生が、そこからどのような影響を受けているのかを考察した本。

    第一章、第二章では、現代から過去にどんどんさかのぼっていく形で、電子通貨やモバイルデバイスから書物、貨幣、そして言葉や記号にいたるまで、我々がどのような「ブラックボックス」を生み出し、それを社会の中に組み込んできたのかということを振り返る。

    第三章では、少し趣向を変えて、我々の認識そのものが、実在そのものを捉えるのではなく、それを観念や印象といった形でしか捉えられないということを論じている。

    実在そのものが捉えられないということは、さまざまなものが道具的に価値を測られ、一つの価値尺度に基づき交換可能な世界に陥る可能性もある。それは、我々の時間や身体といったものであっても同様である。われわれの認識自体も、一種の「ブラックボックス」として、我々を実在から遠ざけている。

    筆者や最後の第四章で、このように社会の仕組みの中に「ブラックボックス」が数多く組み込まれている状態から、我々が自らの生や時間を取り戻す手掛かりを、さまざまな小説を読みながら考えている。

    文学作品の中には、様々な時間が流れている。それらは客観的な時間と主観的な時間であったり、枠物語のように物語の時間の流れの中に全く異なる時間の流れが挿入されていたりする。

    そのような様々な時間の流れを持つ物語を読むことで、我々も「ブラックボックス」化している社会や、貨幣や技術といった仕組みを、「ブラックボックス」を開けるように一度解体してみたり、「ブラックボックス」であることを可視化することができたりする。

    筆者は、書物も「ブラックボックス」であると言っているが、その閉じられた書物を開いて中を読むことによって、我々は我々の身の回りにある「ブラックボックス」にも気付くことができるようになる。

    書評家の方が書かれただけあって様々な本が登場し、それらにも大変興味を惹かれるが、なによりも、我々の身の回りにあふれる「ブラックボックス」について、考えるきっかけを与えてくれる本だった。

  • 「新しい技術によって古いブラックボックスが不可視化され、入れ子構造が複雑化していく過程は、ブラックボックスが原初の姿から複雑化によって肥大化していく、その歴史だった」。"ブラックボックス化"をキーワードに、書物と貨幣、それを産み出した背景を余すところ無く語る一冊。/「文字をもたない語り部たちが口承した物語、トークン、現存する人類最古の「書物」である帳簿、硬貨の誕生、神話や歴史など語り部たちの言葉をまとめた書物、書物を対象にした哲学、手写本、印刷術と紙や筆やペンなど書字媒体の発展、紙幣や各種手形(証券)の登場、活版印刷術の改良と機械化による大量生産、電信による情報伝達の加速、金融の電子化、コンピューターとインターネット革命、モバイル革命と、ブラックボjックスは進化してきました。これらをリバースエンジニアリングしていった果てに、記号とその指示対象の多様さや時間が、情報技術のなかに不可視化されていることをあきらかにしました。」「本章で議論したいのは、これらの諸段階においてブラックボックスのなかに畳み込まれて不可視化されてきた記号と、その指示対象および時間が、クロソウスキーのいう「ファンタスム」(動物としての本能は生殖行為に「子供をつくる」という生産的な役割を与えていますが、人間はそのような生産性から外れる志向をもっている)を生み出すということ」といったあたりがこの書の肝かな、と。/ボルヘスは『伝奇集』再読、ブラッド・ストーン、井口耕二訳『ジェフ・ベゾス 果てなき野望――アマゾンを創った無敵の奇才経営者』購入か借り出しあたりはしてみたいと思った。

  • 007.1||Na

  • 電子決済は現金のやり取りを、電子書籍の普及は書店で本を買うという行為を不可視化しました。現代に至るまで、技術の進歩は多くのことをブラックボックス(BB)化してきました。BB化した社会をどのように捉えて生きていくかということを論じた(哲学的な)本です。

    BBを逆に辿って解体していき(リバースエンジニアリングの手法)起源を解き明かしていく態度が正しいのか、BB化され便利になった環境をそのまま受け入れて生きていくのがいいのか、正解はわかりませんし正解はあるのでしょうか。

    超大企業の中で働いているけど自分の労働の理由がわからずクソ仕事だと思って仕方なく働いている(=ブルシットジョブの)人たちがBBを考えることは、よりよく生きる助けになると思いました。

    そして巻末の引用文献を一通り眺めると現代思想の最前線が掴めるような感じです。
    カズオ・イシグロ、フィリップ・K・ディック、ボルヘス、ユク・ホイなど…

  • 20210919-0928

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著者プロフィール

永田 希(ながた・のぞみ):著述家、書評家。1979年、アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。書評サイト「Book News」主宰。著書に『積読こそが完全な読書術である』(イースト・プレス)、『書物と貨幣の五千年史』(集英社新書)。

「2023年 『再読だけが創造的な読書術である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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