代表制民主主義はなぜ失敗したのか (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211948

作品紹介・あらすじ

世界中をポピュリズムが席捲する中、わたしたちの民主主義はどこへ向かうのか。
人々は政党や議会には期待せず、時に自らの自由の制限もいとわずにトップの強いリーダーシップを望むようになった。
著者は古典から最先端の政治理論まで駆使し、選挙と政党を基盤にした「代表制」と民主主義とはイコールではないこと、現在の社会は「代表制」が機能するための条件を完全に失ってしまったことを明らかにし、一方で、中国統治モデルの可能性と限界も検討する。
民主主義を再生させるヒントはここにある。
「ウンザリするポピュリズムに淫した民主主義より、能力主義的選抜を勝ち抜いた政治エリートの政治(中国!)の方がマシだ……。
この「誘惑」に抗う術はあるか。
実に困難な課題に本書は果敢に挑戦する」――宮台真司氏、推薦!

◆目次◆
第1章 民主主義諸国における社会の私物化
第2章 民主主義諸国における政治の私物化とその先
第3章 民主主義とは何か――古代と近代――
第4章 代表制度とは何か
第5章 行き詰まる代表制度とポピュリズム
第6章 代表制度の改革

◆著者略歴◆
藤井達夫(ふじい・たつお)
1973年岐阜県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程退学(単位取得)。現在、早稲田大学大学院政治学研究科ほかで非常勤講師。
近年研究の関心は、現代民主主義理論。 単著に『〈平成〉の正体――なぜこの社会は機能不全に陥ったのか』(イースト新書)、共著に『公共性の政治理論』(ナカニシヤ出版)、『日本が壊れる前に--「貧困」の現場から見えるネオリベの構造』(亜紀書房)など。

感想・レビュー・書評

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  • ルソーは「人間不平等起源論」で、本来平等で自由であったはずの人間たちの間に不平等が生まれ、自由が喪失されていく歴史の端緒は、すべての人間たちの共有のものを私有することによって開かれると述べている。
    国家を誕生させた直接の原因は、万人の万人に対する闘争を終わらせるために人間たちが契約を結び、為政者の職を設ける必要が生じたから。

    民主主義がうまく機能するには、憲法や裁判所だけでなく、不文律の規範が必要なのだが、それがなし崩し的に反故にされることで、民主主義がおかしくなる

    「社会契約論」における国家の目的は、安全と自由を構成員に提供すること。
    そのためにはまず全面的な譲渡がなくてはならない。これにより共有のものとしての国家を設立する。
    その国家という共有のものを一般意志の指導の下に置くことで、私物化を防ぐ。
    共有のものの構築と私物化の防止こそ、自由でいるための不可欠条件

  • なんかポカンとしてるな。

  • 題材が題材だけに全体的に文章も固いが、一つ一つの事は実例などを通じて分かりやすくしてある。それが、正に今、進行形の悪夢(youtuberが思い付きで立候補、撤回など)と重なり、スルメの様な本。氏はネットでダースレーダー氏との対話も興味深く拝見したのだが、それとは異なる側面も見えた。尚、本書は平成の正体の続編に当たるらしく、それも読んでみたいと思わせる力量。

  • 第1章 民主主義諸国における社会の私物化
    私物化から支配へー自由はどのように失われるのか
    新自由主義と社会の私物化
    第2章 民主主義諸国における政治の私物化とその先
    政治権力をどうコントロールするのか
    新自由主義が政治の私物化を加速
    私物化の時代の民主主義はどこへ向かうのか
    第3章 民主主義とは何か――古代と近代――
    始原にさかのぼる
    近代に復活した民主主義
    第4章 代表制度とは何か
    民主主義と代表制度との理論上の接合
    代表制度を民主化する
    民主的な代表制度の変容
    第5章 行き詰まる代表制度とポピュリズム
    第6章 代表制度の改革
    具体的なイノベーションを評価する

  • 代表制民主主義の欠陥が指摘されていて興味深いです。改善策も考え出されているが、新書のせいかかなり短め。もう少し自分なりに深堀って考えていきたい。

  • トランプ登場によるポピュリズムや中国台頭による権威主義への懸念から市民参加型の熟議民主主義を提唱。その背景・経緯としては、ポスト工業化社会→新自由主義→社会や政治の私物化→代表制民主主義の危機という流れで、内容的にはオーソドックスな印象も受けるが、政治思想史も交えながら説得力のある説明になっている。最終章で熟議民主主義の実現に向けてのプランが提示はされているが、ITを活用した具体的な方策等が提示されているともっとよかったように思う。著者はあくまでも代表制民主主義の再興を主張しており、直接制民主主義には否定的なようであるが、ネット世論やネット投票等々の可能性についての言及も欲しかった。(この辺までいくと著者の専門外なのかもしれないが。)

  • 東2法経図・6F開架:313.7A/F57d//K

  • 社会や政治の私物化を防ぎ、共有化して自由を取り戻せ。

    「人新世の『資本論』」にも通じる問題意識を持った注目の書。政治学や民主主義のおさらいになる教養書でもある。

    現代は民主主義が機能するための前提が崩されてしまった危ない時代といえる。とはいえ、「中国の誘惑」に屈するのはイヤだ。ではどうすれば? 

    「そもそも民主主義ってなんだ」という根源から考察することで、道筋が見えてくる。コロナ後を見据えて、より良い政治・社会へ、まず一歩を踏み出すために、必読だ。

    ただし、やや書き方が固いかもしれない。ぜひとも岩波ジュニア新書あたりで、中学高校生向けにも分かりやすく広く伝えてほしいところだ。

  •  政治理論又は哲学という感じの本だが、現在の政治との関係を中心に読む。
     新自由主義の中で、民営化と市場化により社会が私物化された。またトランプと安倍を例に、「相互寛容」と「組織的自制心」が失われ、政治が私物化された。この2点の指摘から本書が始まる。
     より長期的に見れば、70年代以降の脱物質主義の中で社会的争点の多様化、多元化などにより、大衆政党を前提とした従来の代表制民主主義が機能不全に陥っているという。ポピュリズム、中国モデルというオルタナティブの魅惑はその結果だ。著者はその処方箋として、熟議民主主義や市民参加型の社会運動を挙げる。
     ただ、中国モデルが一部の国を魅了するとの議論それ自体には異論はないが、本モデルを実力本位の選抜によるメリトクラシーと言いきるのはどうなのか。著者は官二代や富二代、古くは「関係」などの語を知っているのかという気になった。

  • 読みにくいので途中でやめた。

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著者プロフィール

藤井 達夫(ふじい・たつお)
1973年生まれ。東京医科歯科大学教授。専門は西洋政治思想、現代政治理論。著書『日本が壊れる前に――「貧困」の現場から見えるネオリベの構造』(共著、亜紀書房、2020年)、『代表制民主主義はなぜ失敗したのか』(集英社新書、2021年)。

「2022年 『市民的不服従』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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