文章は「形」から読む ことばの魔術と出会うために (集英社新書)

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  • 集英社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087213058

感想・レビュー・書評

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  • 文章は「形」から読む。これは、文章を読む際に重要なのは、言葉そのものよりも、その「形」を見極める力であるという。

    その文脈で、特徴的な形態を持つ
    ・学習指導要領
    ・料理本
    ・広告
    ・断片
    ・注意書き
    ・挨拶
    ・契約書
    ・小説
    ・詩
    に登場する各ことばの「形」に注目し、そこからことばの働き方を見渡すことをめざしている。

    形が重要となるのは、なにも小説や詩だけではなく、あらゆる文章で形は重要意味を持つ。
    文は「既存の形式に縛られることばの領域」と「形式をつねに更新することが求められることばの領域」という区分する必要があり、前者は役所の文書などフォーマットが明確に定まっているものがあてはまる。
    後者の筆頭は文学作品だが、手紙や挨拶、エッセイや解説なども含まれる。

    何気に読んでいる文章も、そう言われれば「形」があることに気づく。それは法則と言っても良いのかもしれない。
    緩い法則の分野はあるとしても、これを知らないと、良い文章が書けないのだろうな。

  • 小さい頃から「本」が好きで、兄の教科書を兄より先に読んでしまうような幼稚園児だったから、自分にとって初めての教科書で谷川俊太郎の「ことば」に出会えたのはその後の読書人生にとって幸せなことだったんだなぁとつくづく。料理のレシピがニコニコしていたり、「契約書」や「注意書き」の文章が厳格で面白みに欠けるのはなぜなのか、など「文章の「形」に注目することで見えてくるもの」がなるほど!の連続でおもしろい。それにしても学習指導要領のわかり難さが憎い!

  • とても好き。あらゆる人に読んでほしい。

    『文章は「形」から読む』というタイトルであるが、ここで言う「形」というのは、「文体」と言った方がしっくりくる人もいるかもしれない。
    基本的に、文章というのは、伝えたい「内容」と、その「内容」を伝えるためにどのように表現するのかという「書き方」でできている。雑な例だが、同じ「内容」を伝えていても、「すこし前に詰めていただけませんか」「すこし前に詰めろ」では、印象がちがう。
    語尾や情報量、言葉の選び方で、偉そうに見えたり、なんとなくニコニコして感じられたり、丁寧な印象をうけたり。この本では、文章の持つ「内容」ではなく、この「書き方」の特徴に徹底的にこだわって、文章を読む。

    本の中で取り上げれあげられる文章例は、「学習指導要領」「料理本」「広告」「断片(見出し、応援やかけ声、メモ・注釈など)」「注意書き」「挨拶」「契約書」、そして「小説」「詩」など多岐にわたる。ただ、一貫しているのは、一見して「客観的」で「論理的」に「内容」を伝達しているように見える文章にも、実は、「書き方」によって、いろいろな印象を生み出しているという考え方だ。
    このことを理解するために、本のなかでときどき出てくる活動が面白かった。「学習指導要領」の文章を「料理本」っぽく書くとどんな文章になるか? カフェの「注意書き」を「詩」っぽく書くとどうなるのか? 伝えている「内容」をなるべく変えることなく、別の「書き方」で書いてみる。
    そうすると、厳しい公的文書も私を主語にして体言止めにすると「料理本」っぽく見えたり、ただの「注意書き」も改行と繰り返しをするだけで「詩」っぽく見えたりすることが分かる。「書き方」が生み出す印象は、とてつもなく大きい。

    文章の最も素朴な見方は、何かを伝えるために書かれるという考え方だと思う。そのため、何を伝えたいのかには目に行きやすいが、それがどう書かれているのかを意識することは難しい。自分が文章を書くときにも、一つのことを伝えるのに、どれだけのバリエーションで文章を書くことができるだろうか、と考えると心許ない。
    こういった「文体」に関する意識は、文章を読みなれた人たち、自分の表現を模索している人たちにとっては、感覚的に持っているものだったと思う。それが、とても分かりやすく、まとまっていて、少し感動さえした。
    言葉に対するアンテナをより高くしたい人におすすめしたい。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/572949

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著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授

「2020年 『理想のリスニング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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