- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087441963
作品紹介・あらすじ
手紙を代書する縁切り屋をやることになってしまった糸が直面したのは、不思議とあたたかな別れだった。青春時代シリーズ第1弾。
【著者略歴】
泉 ゆたか(イズミ ユタカ)
1982年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業。2016年、「お師匠さま、整いました!」で第11回小説現代長編新人賞を受賞し作家デビュー。2019年『髪結百花』で第1回日本歴史時代作家協会賞新人賞と第2回細谷正充賞をダブル受賞。
感想・レビュー・書評
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お江戸の縁切り帖 シリーズ1
明暦の大火の一年後。
書写が得意だった、糸17歳は、住職の勧めで、焼け跡で、写本の仕事を始めた。
注文が次々と舞い込んでくるようになり、その、評判を聞きつけて、縁切りの手書きを代筆することになった。
浮気亭主、悪友、憧れの役者、親子・・
情が捻れ、別れざるを得なかった人々に、温かな縁切りの手伝いをする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「縁切り屋」
縁を切りたい人への手紙を代書するお仕事
糸が縁切り状を書くと当人たちの思いにまつわる物が"夢"に現れフィードバックすればスッキリ別れられると評判に
長屋の両隣の住人たち
留やおしゃまな奈々も絡んで楽しい -
きっと熊蔵は、ただ糸の喜ぶものは何だろうと考えただけだ。これだと閃いたら、いくらでも労を惜しまない、まっすぐな気質なのだろう。
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明暦の大火の後、1人長屋で暮らす糸は写本を生業にしている。ある事がきっかけで縁切り状を書くことになりやがてそれも仕事になり、様々な人達の「縁」に触れることになり、人生経験を積んでいくことになる。
少女の成長譚。長屋には幼い奈々や老女イネなども住んでおり、その人達との触れ合いも糸を成長させる。まだ火事の後のお救い小屋がありそこに住んでいる人も沢山いる頃の話。
面白い題材だけど、現実はもっとシビアだったろうし、大火災の後にしては呑気な物語すぎるかな。
身寄りのない少女の一人暮らしにしては不自由ない暮らしすぎるし。もう少しリアルに描いて欲しかった。 -
明暦の大火の翌年、復興の兆しが芽生えつつある江戸の片隅で、書写と縁切り業を営む少女の日常を描いた連作時代短編集。
長屋での一人住まいの傍らで、達筆を買われて縁切り状を代書する17歳のお糸が、依頼人の事情に巻き込まれては、長屋の仲間たちと協力し、事態の解決に乗り出していく。
個性的な脇役の言動が目立ち、一種のキャラクター小説の雰囲気がある一方で、主人公が若過ぎて、人生の機微には疎いため、内面の描写が今一つ弱くて吸引力に欠けるのが惜しい。
縁切り状の文面を考慮するわけでもなく、客が言う通りに代筆するだけなので、折角の彼女の特技(能筆)が単に「書状の代理発行」に留まってしまっている。
寧ろ、依頼人の拗れた事情を象徴する品物(生霊)を幻視する、霊能力めいた体質の方が、事情の深堀りと、事態収拾の鍵になっている。
状況の収束においても、彼女が当事者を説得するのではなく、上記の品物に纏わる思い出によって、依頼人たち自身が自己反省と本音を吐露し合うことによって、互いの縁を超えた繋がりを見出していく。
その過程が当事者側の長台詞を中心に語られる形式なので、小説というよりは、舞台脚本を読んでいるかに近い感覚が起きた。 -
江戸の大火で焼け出され、身寄りなく長屋に住まい代書屋を営む傍ら「縁切り状」を代筆し、人のご縁を繋ぐ手伝いをする少女「糸」を描いた時代小説 連作短編集
キレイに別れられると密かな評判を呼ぶ「えんぎりや 糸」
彼女の一生懸命な揺れ動く気持ちが丁寧に綴られ
会話筒抜けの長屋の住人同士、損得勘定抜きで助けあい生きる様子に、胸打たれる良作品
次巻も楽しみです
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縁切りといってもぶちっと縁が切れてしまうわけではなく、解いてあげるくらいで、後味が優しい。糸はなんだか普通の子でちょっと頼りないんだけど、サポートしている奈々が時に子供らしく、時に大人びて、魅力的。