真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442380

作品紹介・あらすじ

プロレス界最大のアンタッチャブル――
総合格闘技を創ったタイガーマスクの真実!

1980年代前半、全国のちびっ子を魅了し、アントニオ猪木を凌ぐ新日本プロレスのドル箱レスラーとなったタイガーマスクは、なぜ人気絶頂のまま2年4ヵ月で引退したのか?
UWFにおける前田日明との“不穏試合"では何が起きていたのか? 自身が創設した総合格闘技「修斗」と訣別した理由は?

現在も「21世紀の精神武道」へのあくなき追求を続ける佐山サトルは、その先進性ゆえに周囲との軋轢を生み、誤解されることも多かった。
謎多きその素顔に『真説・長州力』の田崎健太が迫る。佐山サトル本人への長期取材に加え、前田日明、長州力、藤原喜明、中井祐樹、朝日昇ら多数のプロレスラー、格闘家、関係者の証言で綴る超重厚ノンフィクション。

“孤高の虎"の真実が今、明かされる!

感想・レビュー・書評

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  • 神田伯山先生もラジオ番組で話していた、息子とのファミスタ(野球ゲーム)でも100点差以上の大差を付け、身内にも一切手を抜かなかったと言う件がやはり印象深い。格闘の世界において、既存を破壊し創造する事に長けた妥協なき天才、初代タイガーマスクこと佐山サトル伝。

  • 著者の田崎健太さんがあとがきで書かれたように、「タイガーマスク、総合格闘技の祖としての佐山サトルの姿が一人でも多くの人間に伝われば、」と心から思えた力作でした。

  • 真っ直ぐなんだね

  • どうしてもUWFや修斗のところは
    読んでいて陰惨な気持ちになって
    飛ばし読み気味に
    佐山サトル自身のことならいいが
    周りの取り巻きや、弟子たちのそれぞれのいけんによって歪曲されていくのは
    見ていてつらい、、、、

    なので対比的にロンドンでのサミーリー時代や高校生をでてすぐに東京でサバイブしながら新日本に弟子入りした経緯などそちらのほうが面白かった

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50257679

  • 物事には「〇〇以前・〇〇以後」という境目を作った出来事や人がいると思う。そのジャンルの空気や流れや常識を明らかに変えた人。

    野球で言えば、日本人のメジャー挑戦を身近なものにした野茂英雄以前と以後。
    お笑いで言うとダウンタウン。それ以前と以後でこれ程景色の変わったジャンルも無いかも知れない。

    プロレス・総合格闘技で言うと、これは間違いなく
    佐山サトル。
    佐山の前に佐山無く、佐山の後にも佐山は出ないだろう。

    UFCが興る10年も前の80年代半ばにして既に「立って打撃、投げてからの寝て関節技」の提唱をしたのは天才以外の何者でもない。
    UFCでアマレス出身選手が猛威を奮っていた時代に
    「いずれ打撃が強い選手の時代が来る」と予言していたように、先見の明にも優れていた…が。

    凡人が想像もつかない行動や考えに出るからこそ天才。


    それにしても佐山を取り巻く人々の反応
    修斗に関わる人々がプロレス界のそれのように
    したたかで老獪で狡猾で、言わば清濁併せ呑む事が出来たなら
    修斗はもっと隆盛を誇れたのかも、と惜しむ思いがした。

    プロレスも修斗も全てが佐山の中にあるもので
    それこそ「なんでもあり~ヴァーリトゥード」だったんじゃないかと思える。

  • 山下埠頭で公開中の動く実物大ガンダム。右腕を掲げ人差し指を突き上げるシューティングポーズ、有名なんでしょ? ガンダムの漫画もアニメも素通りしてきた稀有な子どもだったので、よく知らないけど、あのポーズなら知っている。初代タイガーマスクがリングインする前にトップロープ上でみせるポーズだ。人差し指は拳銃を表し、これから命を賭けた勝負をするぞ、という意思表示だった。

     タイガーマスクがいなければ金曜8時のプロレス伝説は生まれなかった。猪木や藤波も確かに人気はあったけれど、子どもが熱狂する類いの番組ではなかった。それがたった一夜にして、子どもたちをテレビに釘付けにした。全国の子どもが今まで見たこともなかった空中殺法に度肝を抜かれた。それまでは四の字固めやコブラツイストが定番だったプロレスごっこの人気技は、たちまちのうちにブランチャーやローリング・ソバットになった。
     たぶん、このときの衝撃は、いくら言葉を尽くしても、その当時の人にしかわからないだろうな、と思う。

     そんな初代タイガーマスクこと佐山サトルの格闘家人生を追った濃密ノンフィクション。
     とは言え、彼の格闘家人生の中でタイガーマスクだった時代はわずか2年ほど。しかもどちらかというと乗り気じゃなかったところを、猪木の顔を立てて渋々やったら、すげぇ人気になっちゃった、というのが実状。彼が希望していたのは蹴りとか関節技で勝負を決める、今の総合格闘技みたいなスタイル。異種格闘技戦を続けていた猪木に、かつて言われた、お前を新日本プロレスの最初の格闘家(路線のレスラー)にしてやるよ、との言葉を信じてタイガーマスクを続けていたが、会社は超が付くほどのドル箱に路線変更なんてあり得ない、と佐山の気持ちは無視。次第にこじれる佐山と会社の関係。それが遂に決裂。人気絶頂の中でタイガーマスクは突如引退した。

     この本は佐山サトルがメインテーマのため、タイガーマスクは前フリで、どちらかというとここからが本題。
     
     プロレスを辞めたあとはUWFや修斗などの格闘技の新たな道を模索するが、ショー的な要素を重要視しなかったため、興行はふるわない。資金繰りに苦労し、怪しい輩にいいように利用されては、手を切るということを繰り返す。プロモーターとしての才能はなかったと言わざるを得ない。
     でもヒクソン・グレイシーを最初に日本に呼び、「400戦無敗の男」とのコピーをつけたのは佐山サトルらしい。本物を見る目はさすがだ。

     タイガーマスクに熱狂したときは子どもだったから、引退後のことは気にしてなかったけど、いろいろあったんだなぁ、と、ちょっと哀しくなってしまった。いまパーキンソン病みたいな症状で車椅子だし。長男がジムを継いで、彼の技術を伝え残そうとしているところは光明だけど、凄い選手出てくるかな?期待して待ちたい。

     いろいろある裏話の中で一番驚いたのは、虎ハンター小林邦昭と仲良しだったということ。ドイツ製の高級二人乗り自転車で、ジムから田園コロシアムまで仲良く漕いでったこともあるとか。芽が出なかった小林が虎ハンターとしてブレイクしたのを内心では喜んでいたとも。
     
     良い人だな。

  • タイガーマスクに憧れ、格闘技始めた者から
    するど、人間 佐山サトルの事が良く描かれていた。プロレスという枠の中でのUWFスタイルという考えの他の選手と新しい格闘技として考える佐山との衝突。修斗での弟子達との衝突。
    クリエイターで抜群の運動神経を持つ佐山。
    発想力は天才だが。
    あまりにも世間を知らなすぎる。
    だから、周りに寄ってくるろくでもない人間に騙される。
     佐山がもう少し、まともな考えがあれば修斗は
    もっとメジャーになっていたと思うと残念!
     お勧めの一冊!

  • 誰に肩入れすることなく淡々と進んでいく。それでも佐山の人生に起伏が激しいので引き込まれ500ページ超を一気読み。『1984年のUWF』は偏りが激しく好きではないが、こちらはそれぞれの立場の真実がよくわかる。『証言集』のような投げっぱなしでもなく、前後の事実も丁寧に書かれている。
    正当なノンフィクション作品は、取材対象を傷つける可能性を内部に孕んでいる。取材とは心の中へ踏み込んで、触れられたくない記憶を掘り起こす作業でもあるから。初代タイガーマスク・佐山サトルには、武勇伝から罵詈雑言まで巷に溢れかえっている。 著者は真正面から佐山本人に向かい合い、丹念な取材で掴んだ情報、疑問をぶつけていく。その一つ一つに誠実に答えていく佐山。事実とは何か。真実とは何か。 物事の本質を追求していこうとする姿勢に、真のノンフィクションの在り方を見た。 骨太で読み応えのある好著。
    よくも悪くも佐山の人物像がよくわかる。そして、読了後、誰を嫌いになることもない。

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著者プロフィール

1968年3月13日、京都市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社。
スポーツを中心に人物ノンフィクションを手掛け、各メディアで幅広く活躍する。著書に『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)、
『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)、『ザ・キングファーザー』、
『ドライチ』『ドラガイ』(カンゼン)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社 ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『真説・長州力 1951-2015』(集英社インターナショナル)
『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』(光文社新書)など。

「2019年 『ドラヨン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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