悪い姉 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087444254

作品紹介・あらすじ

「平穏な生活のために、姉を殺すことにしました」

三月生まれの倉石麻友と、四月生まれの姉・凜。
ふたりは生まれの近い年子のため、同学年として同じ高校に入学した。高校二年生になった春、麻友は姉を殺す計画を立てる。姉は誰もが振り返るような美少女だが、実は意地悪で残酷。幼いころからいじめなどの問題行動を繰り返していた。
ずっと「毒姉」との決別を夢想しては敗れてきた妹の、試行錯誤の行方は?
そして、妹自身が抱え続ける罪とは――。
思い込みから解き放たれ、自由へと向かう物語。

【著者略歴】
渡辺 優(わたなべ・ゆう)
1987年宮城県生まれ。大学卒業後、仕事のかたわら小説を執筆。2015年に「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。著書に『自由なサメと人間たちの夢』、『アイドル 地下にうごめく星』がある。

感想・レビュー・書評

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  • いつ姉を殺すんだろうとドキドキしながら読む。

    悪い姉なので好きな人ができると無理やり取られるんじゃないだろうか、仲のいい友達を傷つけるんじゃないだろうかと、やきもきしていた。

    それにしても、この姉の性格は悪い。出来ることならかかわり合いたくないと思いながら読んだ

  • 一見重たそうな雰囲気なのに、そんなこともなくさくさく読める。
    悪い姉のせいで今までたくさんの辛い目にあってきた妹の主人公。年子のせいで学年も一緒、学校も一緒。ただ想像していたより今はそこまで姉に干渉されてる感じはしなかった。もっと友だちになった子を奪うとか好きな子を奪うとかそういう系かと思っていたから、そこまで重くなくて良かったのかも。
    (もちろん悪い姉なので中学のときにしっかり親友を最悪な形で奪ってるけど)

    もちろんずっと姉のことを殺したいことが書かれているけど、その合間に彼女はちゃんと女子高生をしていた。好きな子が出来て、その好きな子と少し話せただけでも嬉しかったり、球技大会で同じ実行委員になったり。そういうところは普通の女子高生だし心の声も可愛かったし面白かった。

    まあ結局は醒める一言で好きな感情もさーっと醒めるけど。でもそこもずるずるしてなくてよかったな。

    最終的には姉を殺すことは姉が好きだから離れられないから殺したいっていうことだった。
    こんな姉だからこそ喜んでもらえたら嬉しいと思ってしまうし、彼女の魅力も認めてる。家族だからってことも彼女を縛ってる感じも強かったかな。でもそれを諦めると決めて離れることを決めた時、家族じゃなくなってもいいんだと思えた時、今まで感じていたことも無くなって自由になれたってことかな。


  • 私自身、ここ数年家族関係に悩むことが多かった。自分とは考えが合わず揉めてしまった時には、周りから「家族なんだから大切にしないと」というように、家族はこの上なく素晴らしいものであるかのように言われてきた。しかし、この作品に出会って、少し肩の荷が降りた気がする。私は家族のことが本当に大好きでありたい。だから自分の中での家族の理想像を、勝手に現実に重ねて落胆してしまっていたのだと思う。でも、時には協力し、時には距離を取るという家族の形も許されるし、むしろそれが当たり前のような気がした。

  • 文体は好きだし、ストーリーもとても好みなのだが、終わり方に納得がいかない。
    期待を裏切るとはよく言うものだが、私の場合は悪い意味で裏切られてしまった。
    心情描写としてはよいものがあったけれど、私としては拍子抜けだ。

  • 読みやすかった。

    悪い姉は、ちゃんと悪い奴だった。
    麻友ちゃんは、途中で姉と向き合おうとした。
    大好きだと気付いてから、ちゃんと思いを伝えてた。ケーキ屋さんから病院、そして帰るまでのシーンは切なくなった。

    麻友ちゃんには、悪い姉から解放されて、幸せな人生を送ってほしい。

    渡辺優さんの作品を読むのは、今回が初めてだった。他の作品も読みたくなった。

  • タイトル通り悪い姉だった。
    平気で人を傷つけるし、陥れる。
    喜びを感じている姉。

    ヨシくんや他の子に話すけれど、解決することはない。ヨシくんの正しすぎる正しさ(後に彼の家庭環境も少し出てくるが)が、麻友の恋愛感情も、家族のことを話すこともやめる、冷めてしまう。

    姉だけが悪いわけでもないということ。
    従っていれば、姉を喜ばすことができる、不機嫌にならないという理由から一緒に楽しんでしまった、逃げてしまった…大事な親友を傷つけてしまった過去もある。

    夢の中で、姉をどんなふうに殺そうか体験する。
    バレないように、どんな方法がいいか。

    友達の相談には、「家族と距離をとればいいじゃないか」と言える。自分の言葉が白々しく聞こえる。

    自分は姉を殺したいばかりなのに。

    友達から聞いた【起こってしまった殺人の半分以上が家族間】と言うことに、別にものすごく珍しいことじゃなかったんだ、自分はずっと、許されない考えを抱いていた、その思いに傷ついたり、苦しんだりしたのに、葛藤は、わりとどこにでも転がっているものだと知る。

    姉との直接対決。
    麻友の姉への思い。

    姉は変わらない。
    最後まで悪い姉だった。
    言葉が響かない、届かない。

    麻友は、姉に愛情があった。
    終わりをむかえる。

    最後まで悪い姉だったから、麻友は、救われたとも思う。少しでも優しい姉が出てきていたら、逃げられなかったと思うから。

    麻友目線の小説。
    姉・凛目線も読んでみたい。

  • 『この筆者は妹の奴隷根性をよく理解してるなー、お姉さんがいるんじゃない?』が1番の感想。

    私にも3歳離れた出来が良くておっかない姉がいる。
    おっかないといっても彼女は割と内弁慶で友人関係で何度も親に心配をかけさせていたし、出来が良いと言っても「うちの一族の割には」というレベルだという事を知ってから恐怖が薄れたのを覚えている。
    現在は姉も大分穏やかになり、程よい距離で仲良くしているが、『子供の頃の仕打ちを忘れてないからな』という気持ちが未だに私の心にずっとある。

     凛のような生まれつきの性悪はどうしようもない。
    作中のような第三者の薄っぺらいアドバイスになってしまうが『親とも絶縁する覚悟で家を出ろ』としか言えない。「私の中で、大好きなお母さんが無能なお母さんに変わっていくのが悲しい。」という表現がとても共感できるしとても好き。


    ヨシ君は…カエル化現象ってこういう事なのかな。
    麻友の切り替えの早さに笑ってしまった。
    筆者は女の誰に呟くでもない心の中の本音を書くのが本当に上手いと思う。


     ラストはどうだろう。
    今後も姉が生きている限り就職や結婚とか台無しにされたりするんじゃないかとモヤモヤした。

  • 兄弟、姉妹、家族の呪縛って大変だなあと再認識。
    あとがきのように、姉が骨の髄まで悪かったからこそ、妹は前に進めたと思う。
    ヤングケアラーやきょうだい児(病や障害を持つ子の兄弟)にも通づる部分があるのかもしれないと思った。

  • 私も姉だ。
    単純な理由で購入。
    妹は、もういないけど。

    私的な事で、精神的に凹んでたし、
    心が落ち着くかなぁと期待してみた。
    う〜ん、いまいち。
    それに、嫌な姉を殺したいと言いつつ、
    いつまで経っても殺さない。
    そして最後のページ。
    あれ?もう終わり?
    殺して欲しかったな。
    ‘23.01.14読了

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著者プロフィール

1981年静岡県生まれ。天理大学人間学部宗教学科講師。東京大学文学部卒業,東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了,博士(文学)。2011-2013年,フランス政府給費留学生としてパリ・イエズス会神学部(Centre Sèvres),社会科学高等研究院(EHESS)に留学。2014年4月より現職。専門は宗教学,とくに近世西欧神秘主義研究,現代神学・教学研究。訳書に,『キリスト教の歴史 ―― 現代をよりよく理解するために』(共訳,藤原書店,2010年),論文に「もうひとつのエクスタシー ―― 「神秘主義」再考のために」(『ロザリウム・ミュスティクム:女性神秘思想研究』第1号,2013年),「教祖の身体 ―― 中山みき考」(『共生学』第10号,2015年)など。

「2016年 『ジャン=ジョゼフ・スュラン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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