幼な子の聖戦 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 32
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087444773

作品紹介・あらすじ

第 162 回 芥川賞候補作「幼な子の聖戦」と、ビルの窓拭きを描いた話題作「天空の絵描きたち」を収録。
「幼な子の聖戦」――東京で疎外感を味わい、信じかけた新興宗教にも失望し、史郎は故郷に戻って村議となる。幼なじみの仁吾が村長選に立候補すると、改革の理想を語る彼への応援を約束。しかし県議から弱みを握られ、仁吾落選のための不正工作に加担させられることに。心を引き裂かれた史郎はやがて、ある破壊的な衝動に突き動かされていく。
「天空の絵描きたち」――ビルの窓拭きを専門にする会社に転職した小春。仕事を理由に彼氏と微妙な関係にあるが、仲間同士で文字通り命を預けて仕事をする緊張感にのめり込んでいる。ある日、ビル内の盗難事件が原因でリーダーのクマさんこと権田が責任者を下ろされてしまう。クマさんにひそかに憧れていた小春は、彼を焼き鳥店に誘うが……。

【著者略歴】
木村友祐(きむら・ゆうすけ)
1970年、青森県八戸市生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。2009年『海猫ツリーハウス』で第33回すばる文学賞を受賞しデビュー。『イサの氾濫』で三島賞の候補、『聖地Cs』で野間文芸新人賞の候補となる。他に『野良ビトたちの燃え上がる肖像』、『幸福な水夫』、『私とあなたのあいだ――いま、この国で生きるということ』(作家・温又柔との往復書簡集)がある。

感想・レビュー・書評

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  • なんというか…
    表題作「幼な子の聖戦」はさすが芥川賞候補、
    表現が繊細だな、とは思うものの
    かといって主人公に感情移入できるか、と言われると
    肯定できないなぁ…と感じます。

    併録「天空の絵描きたち」
    こちらはテーマが破滅だとか裏切りだとかの
    「幼な子の聖戦」(個人的見解)とは違い、
    中心にあるものが「恋愛」なので感情移入は多少容易ですが、
    主人公らがビル拭き
    (題名にもなる通り、こちらがおそらくメインテーマ)
    という一般からすると
    少し特殊なものであるため、場面の理解がしにくい…。
    実際、おそらく清掃業界でしか聞かないような名詞が続出。
    状況説明などはかなり細かいものの、やはり理解しづらい。
    そして細かすぎる表現ゆえ一部かなりグロい。

    両作ともいいものではあるのですが、やはりなにか欠けているな
    という感想に尽きます。

  • 表題作と、「天空の絵描きたち」が収録されている。たぶん文学としては上手いのだとは思うが、お話自体はどちらもつまらない。特に表題作のほうは主人公の発想と行動に理解も同調もできず、お話が上滑りしていった。ただ、犯行の動機としての「せっかく見つけた目的を失うことのほうをおそれていたのだ。」の一文は、昨今の様々な事件の真理を案外言い当てているような気がした。

  • 心に残る話だった。
    表題作は主人公が性格的に救えなくて共感できず中々話に入り込めなかったが、社会への怒りの部分は全く共感でき、男性優位社会において弱者である主人公が暴発するところは不思議とスカッとした。現状維持や保身しか考えない「オヤジ」は、日本の諸悪の根源と言ってもいい気がする。
    もう一つの収録作品、ガラス拭きの話も面白かった。こちらも社会への課題認識は表題作と同じで、さらに職人から仕事をする尊厳も奪い取ってる点も深刻に描かれていてリアリティがあった。クマさんが居酒屋で語る、人は生まれ死に今目の前の人と一緒にいることは流れの中では奇跡的に居合わせてるだけということを意識すれば人への見方が変わる、というのが至言だとも思った。

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著者プロフィール

1970年、青森県八戸市生まれ。2009年、「海猫ツリーハウス」で第33回すばる文学賞を受賞しデビュー。小説に『聖地Cs』(新潮社、2014年)、『イサの氾濫』(未來社、2016年)、『野良ビトたちの燃え上がる肖像』(新潮社、2016年)、『幸福な水夫』(未來社、2017年)、『幼な子の聖戦』(集英社、2020年、芥川賞候補)。

「2020年 『私とあなたのあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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