家族じまい (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 761
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087445343

作品紹介・あらすじ

【第15回中央公論文芸賞受賞作】


「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」妹からの電話で実家の状況を知った智代。かつて横暴だった父が、母の面倒をみているという。関わり薄くいられのも、お互いの健康あればこそだった。長男長女、墓守、責任という言葉に距離を置いてきた日々。妹は二世帯同居を考えているようだ。親孝行に名を借りた
無意識の打算はないか。家族という単位と役割を、北海道を舞台に問いかける傑作長編。

【著者略歴】
桜木紫乃(さくらぎ・しの)
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で「オール讀物」新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞し、ベストセラーとなる。他の著書に『起終点駅 ターミナル』『無垢の領域』『蛇行する月』『裸の華』『緋の河』『孤蝶の城』など。

感想・レビュー・書評

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  • 作者の状況に近いシチュエーションの話もあるからなのか、すごくリアルさを感じた。

    作中で認知症についてこう書かれた部分がある。
    "忘れてよいものは、老いと病いの力を借りてちゃんと肩から落ちてゆくようになっているのかもしれない。同時に、それを自力で出来ない弱さが人の可愛さであるように思えてくるのだった。"

    確かに忘れたいのに忘れられないものもあるし、そう考えたら忘れていくことも救いと言える部分もあるのかなとも考えさせられた。

    みんな程よく薄情な部分が描かれているように思えた部分も個人的には好きなところだった。
    例えば
    "人間関係は勝ち負けで自分の気持ちを落ち着けるしか術がないのだ"
    これまた納得してしまったフレーズ。思い当たる節がたくさん。

  • 桜木紫乃『家族じまい』集英社文庫。

    第15回中央公論文芸賞受賞作。

    家族であることの難しさ、歳を重ねることの苦しさ、親の介護問題に巻き込まれる実子たちの苦悩が伝わるような連作短篇形式の小説。5人の女性の視点で認知症になった母親と介護する父親の話を中心に家族の問題が綴られる。

    そこには高齢者社会と核家族化、老老介護といった現代日本の深刻な問題が暗い影を落とし、小説としての面白さは余り感じられない。

    これまでの桜木紫乃ならば、明確な結論を持って小説を描いていたが、本作では誰もが苦しむであろう深刻な問題を描いたにも関わらず、明確な結論が用意されていないことが大いなる不満である。

    本体価格680円
    ★★★

  • 五章の短編のそれぞれの主人公が繋がって1つの小説になっている。
    子供だった頃、青年期、そして親を見送る年齢になり、やがて我が身の老いを感じる頃、家族の概念は否が応でも変容していくのを知る。
    《家族じまい》とても良いタイトルだなと思った。
    舞台は北海道。
    北海道と言うロケーションが放つ一種独特の冷たさ、厳しさが、ただただ湿りがちになるテーマにも強かさを持たせてくれている。
    特に第五章が好きだ。

  • 桜木紫乃さん の作品は初(はじめまして)

    タイトルの 家族じまい に惹かれました。

    家族がいて、親も自分も年老いて行く。
    物語では、両親健在で母親が認知症になってしまう。
    介護を父親がしているが、手を挙げてしまうことも。
    1人では、やっばり介護は出来ないんだろうなと思う。
    色んな登場人物に自身の身に置き換えて見た人も沢山いるのではないでしょうか。
    紀和さんの章 船旅してみたいな。

  •  桜木さんならではの安定の暗さと救われない感じを堪能できました。

     各章の主人公のその後が、あとの章で、少しずつ分かるのもリアルでした。
     遠くない未来、私も考えなくてはいけない事として勉強にもなりました。

     また桜木さん作品を読みたくなりました。

  • 家族という構成内での自分の立ち位置や役割。

    長男だから。
    次男だから。
    長女だから。
    次女だから。
    父だから。
    母だから。
    祖父だから。
    祖母だから。
    若いから。
    高齢だから。
    未婚だから。
    既婚だから。
    夫だから。
    妻だから。
    … 。

    全ての人が上記のような "何か" にカテゴライズされ、
    それぞれが必要とされる役割と向き合う。

    「○○だからこうであるべき」という役割を果たす事が人としての "正" と考える人もいれば、
    その役割に疑問を持つ人もいる。
    その考え方の分岐は、この世に生を受けてから現在に至るまで家族とどう生活してきたかに寄って大きく変わる。

    本作は、高齢となり認知症を患った母をきっかけとして、周囲の人々がそれぞれの「役割」と向き合い、その心情を細かに描いている。

    誰しもに当てはまる話でありながら、正解/不正解がない難しい問題。
    自分事として向き合い改めて考えたいと思わせてくれた一冊だった。

  • 家族とは、夫婦とはどうあるべきか。
    色々考えさせられました。
    家族だからこそ、ちょっとしたボタンの掛け違いをしないようにしないと、と思いました。
    自分なりの落とし所を見つけようと思います。

  • 連作短編集でした。
    高齢の親を持つ者としては、とても心に響く内容でした。
    最近は『いつまで自分を我が子として認識してくれるだろうか?』と思う日々です。

  • 「墓じまい」は理解できるが、「家族じまい」とは⋯?
    北海道を舞台にして5人の女性が語り手になり、それぞれの立場から家族に向き合った生き方が綴られている。
    5編からなる連作短編集だ。

    第一章 智代(サトミと猛夫の長女)
    第二章 陽紅(智代の弟、涼介の妻)
    第三章 乃理(智代の妹)
    第四章 紀和(智代家族とは赤の他人)
    第五章 富美子(サトミの姉)

    私が最も惹かれた第五章で登場した82歳の富美子は、いまだ元気に一人暮らしを楽しんでいる。
若い頃から中居として旅館に従事し、今はリタイヤしたといえども女将からは一目置かれて信頼を得ている。
    娘たちからは「産みっぱなしの放し飼い」と言われる程に、薄情な母親だと受け止められている。
    その富美子は、妹のサトミの現状からハタと気づいたことがあり、その後の気持ちの持ち方を自ら整理する。

    読了後、『家族じまい』の意味するところは、歳を重ねることはある意味忘れることなのではないかと思い至った。
    若い頃から背中に背負い続けてきた家族関係の重しを、ある時点で降ろすことも許されると訴えている気がする。
    最終章の富美子の生き方と考え方には素直に同調できない感覚もあるのだが、揺れ動く家族の関係を意識して落とし所を自ら探す潔さ、そんな生き方には憧れを含めて同調できた。

  • 怖くて息苦しくなるくらい切なかったけど一気に読んでしまいました。家族しかわからない家族の歴史、家族で何とかするしかない家族の問題。よく普通の家庭などと言いますが、家族はどこの家族も閉鎖的で特殊で普通ではありません。そこがいやで出ていったつもりでも、やがて戻ってしまう。疎ましく、愛おしく、逃れ難い場所。登場人物それぞれに自分を見たような気がしました。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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