十五歳の課外授業 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.23
  • (5)
  • (19)
  • (29)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 240
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087454345

作品紹介・あらすじ

中3の卓郎のクラスに現れた教育実習生。彼女が数年前まで卓郎の父の歯科医院に通っていた「おねえちゃん」だと気付き、喜ぶ卓郎だが…。中学生のリアルな悩みと秘密を描く青春小説。(解説/吉田伸子)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大人の事情を配慮出来るようになってくる中学生という微妙な年齢。良くも悪くも短期間で自分を変えることが出来てしまう多感な時期。
    嘘が多過ぎて収拾つかないよ、もっと上手くやれ。そう思ってしまったけど、純粋培養の良い奴が横道に反れて振り切れていくのは恐ろしかった。

  • やっぱオモロい白河三兎。この本もまたグイグイひきつけられて読んでしまったなぁ。

    中学3年生で家の歯科医を継ぐ運命にある男の子が主人公。彼女は学校で一番の容姿端麗かつ才媛かつ運動抜群の人気者。学校を締めてた裏番が姉。親友もいてライバルもいて…と、キャラクターが整ったところにやってくる教育実習生、主人公は彼女を知ってるような気がして…

    あぁ、これ学園物のジュブナイルな、なんて早とちりしてはいけない。前半確かにそういうところもあるが、ティーンに読ませるだけでは勿体ない展開が後半待っている。

    風俗やら人間のドロドロやら、ちょっとキツい(俺は10代の子が読んでも全然いいと思うが、咀嚼しきれるかは不明)描写もありぃの、でも不安定に揺れていたあの頃を思い出して、「そうか、それでもあの頃一所懸命かじりついて生きてきたんやな俺」と思える描写が後半溢れるほどに出てきて、そこが読ませどころである。

    いつからか、理性が本能を抑えるスキルを身につけた大人が読む本である。それでもどっこい生きていくのである。周囲に感謝しつつ、不器用にしたたかに。

  • おもしろくねー!

  • 中2の男子学生の主人公、恋愛、友情の不器用な振る舞い。 嫌われたくない、別れたくないと重ねる嘘。 読んでいて、「ああ、中学生の時はこんなんだったよな」と思うが、話には入って行けない感。
    しかししかし、中盤から「著者の書きたかったとこはここだったか!」と思う箇所が分かると、グイグイ引き込まれていった。著者の他の作品を読んでも感じたことだが、「中学の時にこの本を読んでいればもっと楽にと言うか、不必要な力を抑えて生きれたのかなぁ」と思う。

    【心に残る】
    心に芯がある中学生なんて気持ち悪い。言うことややることがいい加減のフニャフニャな精神でいいの

    生き急がないで。自分探しなんて不毛よ。時期が訪れれば、自分だけの自分が勝手に備わっているものなんだから

  • 当初から平凡な始まりで期待していたほど大きな波もなく、ユーカに翻弄される卓郎と彼を取り巻く友人とのやりとりが表現される。
    教育実習生:薫子と卓郎の関係も開始早々明かされ、卓郎のトラウマの原因もそれとなく示唆されている。
    後半になり卓郎が色んな部分でチョイスをミスしてしまい、様々な人間関係が壊れ出してしまったところから一気に展開が進み、最後に卓郎が気づいた『自分』の行は非常に良く、爽やかな結末になったと思う。
    表題の意味も頷けるものであった。

  • 『娯楽』★★★★☆ 8
    【詩情】★★★★☆ 12
    【整合】★★★☆☆ 9
    『意外』★★☆☆☆ 4
    「人物」★★☆☆☆ 2
    「可読」★★★☆☆ 3
    「作家」★★★★☆ 4
    【尖鋭】★★★★☆ 12
    『奥行』★★★★☆ 8
    『印象』★★☆☆☆ 4

    《総合》66 C

  • 後味が悪い。
    タイトルのように「勉強になったね」と軽く済ませることはできない。

    登場人物たちは「中学生らしさ」をとことん突き詰めたような人ばかり。
    虎の威を借るばかりで自己が確立せず、嘘をついたり「何でもするから」とすぐに自分を差し出す卓郎。
    自己愛を拗らせてしまったユーカ。
    長年の母親による束縛から抜け出した瞬間、暴走を始めるヨッシー。
    その設定はいいのだが、彼らは互いに傷つけあうばかりで前に進まない。

    薫子はいつもの芯のあるヒロインポジションにいるようだが、私はあまり共感できなかった。
    暗い過去があって、自分のプライドを保とうと必死で、それでも他人を気遣おうとしている。
    でもそれは一面に過ぎない。
    彼女はある種の高潔さを求めているようで、そのためなら他人を欺いたり傷つけたりすることを厭わない。
    私にとってそれは醜い。

    彼女の持つ価値観も、その境遇を考えると仕方ないのかもしれないと思いつつも、すんなり受け入れるのは難しい。
    薫子の思考に沿って川島さんが話した「薫子の体は薫子のもの。薫子が好きに使っていい」とか。
    恋人や家族、友人知人が彼女の体を心配するのはいけないことなんだろうか。

    教師になる夢のために、睡眠を削って夜中に働いて息抜きもないまま4年間過ごすのは大変だから風俗で働く、というのもそう。
    どこかで諦めなければいけない夢はあるし、奨学金とか他の手段はなかったのかというのは、当事者じゃないから言えることだろうか。

    世の中には、本当にやむにやまれずその仕事をしている人もいるのだろう。
    でもどんなに美化したって、人前で自慢できる仕事じゃないと思う。
    薫子にはもっと純粋に高潔であってほしかったという願望とともに、薫子が自らを貶めて自傷行為に及んでいるような気がして憐みの感情がわいてきた。

    卓郎も卓郎で、薫子こそが物語をひっかきまわしている中心人物なのに、彼女に惹かれる気持ちがよくわからない。

    私が読みたい白川三兎はこれではない。
    苦境でも強くある物語が読みたかった。

    それでも、クセが強い人物ばかりなのにシーンごとにピタリと焦点が定まっていて、あまりとっちらかった印象を受けないのはさすが。
    中学生が読めば登場人物を見て醜いと感じ、自己を振り返るきっかけになるかもしれない。

  • 「私はここにいる。それは私がわかっている。私が存在しないことには何も存在しない。私の存在が全ての始まりだ。元凶であり、希望の源なんだ」

    「みんな本音を心にしまいがちだけど、外へ吐き出すべきなんだ。相手の心を踏み躙ったり、人間関係がぎくしゃくしたりしても、長い目で見れば真実しか残らない。上っ面のことは淘汰されちゃうんだよ」

    『本音を隠せば隠すほどにやましさが大きくなる。嘘をついても得られるのは真っ黒な感情だけだ。このままだと俺は嘘の塊になる。そして数多の嘘と一緒に俺自身も淘汰されるのだろう。』

    「中途半端にできる人よりも全然できない人の方が愛される。そして未熟だった人が進歩した時は、甚だしく過大評価される。だから最初の一週間の拙さは故意だったの」

    『瞬く間に人生の可能性が広がった。数時間後に何が起こるかなんて誰にもわからない。自分がどこにいても不思議じゃない。どこへでも行けるし、なんでもできる。不自由を存分に楽しめばいい。もうやたらめったらに怖がらない。恐れるな。立ち向かわなくちゃ何も始まらない。自分の人生を切り開けるのは自分だけなんだ。』

    『一生忘れない。死ぬまで大切にする。久々に混じりっけのない愛を感じた。心に血が通ったような感覚。ちょっとだけ本物の涙が出ちゃったよ。』

  • ビターだし決して各々が良い青春を送っている訳ではないのに、ちゃんと成長していく姿がある気がする。

    ちょっと現実味がないけど、
    これからは、こういう現実味のない子供たちが
    増えていくのかな。

  • 0006
    カバーの少年に惹かれて買った。中学生のアホさとか悩みがかわいいと思ってたら、闇が深かった…。でも読後は爽やかな青春小説だった。

    カバーデザイン 鈴木久美
    写真 小野啓

全33件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

2009年『プールの底に眠る』で第42回メフィスト賞を受賞しデビュー。『私を知らないで』が「本の雑誌」増刊『おすすめ文庫王国2013』にてオリジナル文庫大賞BEST1に選ばれ、ベストセラーに。他の著書に『ふたえ』(祥伝社文庫)『ケシゴムは嘘を消せない』『もしもし、還る。』『小人の巣』『田嶋春にはなりたくない』『十五歳の課外授業』『計画結婚』『無事に返してほしければ』などがある。

「2020年 『他に好きな人がいるから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白河三兎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×