なんてやつだ よろず相談屋繁盛記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087457759

作品紹介・あらすじ

江戸後期。浅草の料理屋の長男・信吾は家督を弟に譲り、相談所を開いて世の中のために生きようと決意。江戸の風物詩の生き生きとした描写、落語調の小気味よい会話が光る時代小説。(解説/細谷正充)

感想・レビュー・書評

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  • 「なんてやつだ」という題なので、軽妙痛快物だと思ったが、意外と読み応えのある時代小説だった。主人公の設定がいい。老舗料理店の長男なのだが、3歳の時に大病をしてから、生き物の声が聞こえ、話もできるようになる。いざというときは、その声が危機を警告してくれる。鎖双棍(ヌンチャク)の使い手でもある。その主人公の慎吾が店を弟に継がせることにして、「よろず相談屋」「将棋会所」の二枚看板を開く。そうすると、いりいろな事件が起こって…。主人公の思っていることを結構丁寧に描いていて臨場感がある。主人公の慎吾は20歳と若いが、思慮深く落ち着いている。動物の声にも助けられ、事件を解決していく。面白い。これは拾い物だった。

  • 老舗料理屋の跡取りながら幼い頃に患った高熱のせいか、記憶が時折抜け落ちるという信吾。その代わりなのか、何故か動物たちの声が聞こえるように。
    色男で武芸も出来、将棋の腕もある。一見抜けているようで人を見る目がある。身の危険を知らせてくれたり、逆に安全だと教えてくれる動物たちの声に守られて、実家を継がなくとも将棋の指南所兼よろず相談屋などという先の見えない商売を始めても安泰。
    お人好しなようで強か者、色男のようで嫁取りには興味なし、人の役に立ちたいのに相談に来る者は現れない。
    何とも掴み所のない信吾のキャラクターとストーリーだがいつの間にか引き込まれる。
    相談に来たのではないのにいつの間にかもやもやしたものが晴れている。
    シリーズものらしいので、魅力が出てくるのはこれからだろうか。

  • 3歳の時、3日間、高熱と引きつけを繰り返して以降、動物の会話が分かるようになった老舗料理屋の長男・信吾。それだけでなく商売に不都合な症状もあり店を弟に継がせ、得意の将棋とよろず相談を受ける商売を始める。相談と言っても、解決の答えを与えるのではなく、相談者は信吾と話しているとフト閃きを感じ、それが解決に結びつく。答えを教えられるのではなく、自分で気付けるって所が面白い。他にも武術に長けていたり、「なんてやつだ」と言われる信吾。 地味な話だけど、信吾同様、不思議な魅力のある作品。楽しみなシリーズができました。

  • なかなか個性的な主人公。このシリーズ今後も付き合って行きたい

  • 202110/よろず相談屋繁盛記シリーズ・めおと相談屋奮闘記シリーズ既刊全10作まとめて。毎回平積で新刊を見かけ気になっていたので読み始めることに。最初は、設定てんこ盛り(幼少時に大病、生き物の声が聞こえ会話できる、老舗料理店の長男、鎖双棍の使い手、相談屋と将棋会所を経営)だな~と思ったけど、主人公は勿論、登場人物達が生き生きと描写されているのでこの世界に入り込んで楽しめた。最初は使い物にならずぼんやりしてた小僧の成長ぶりやちゃっかりぶりも微笑ましい。相談事の内容や解決手法等、物語としてパッとしないものや偶然の産物だったりも多いし、自分の好みではない話(将棋会所で皆が艶話や与太話をただただ話すだけとか)もあるし、時代物とはいえ書いている今の時代にそぐわない描写や設定も感じるけど、総じて面白かった。「主人公と話してたら何故か解決してしまう」のと同様、とらえどころのないなんかわからない面白さもあった。

    よろず相談屋繁盛記シリーズ(なんてやつだ/まさかまさか/そりゃないよ/やってみなきゃ/あっけらかん)
    めおと相談屋奮闘記シリーズ(なんて嫁だ/次から次へと/友の友は友だ/寝乱れ姿/梟の来る庭)

  • のほほんと、おもしろいし
    キャラもわりと好きな感じなのですが
    肝心の「謎」の部分を
    もうちょっと書いてくんないかな。

    悩みを持った客が
    主人公の信吾と話をするうちに
    なぜかヒラメキを得て自己解決するも
    「信吾と話さなければ浮かばなかった」と
    お礼をしてくれる…ってパターン。

    短編でそれが続くのですが
    そのどこでピンときて
    どう自己解決したのかが語られない〜。
    そこがモヤッとする。

    これが1巻目で
    シリーズ化しているようなので
    また読んでみるかも。

  • 社会に出て実感する。何よりも得難いのは人徳だと。自身の言動の醜さに消沈することもあるが,あきらめず励みたいと思う。本作の主人公のようになれるように。とても感慨深い一冊でした。
    あらすじ(背表紙より)
    江戸の文化が花開く下町の老舗料理屋「宮戸屋」の跡取り息子は、なんとも妙な若者だ。鎖双棍とかいう武器をしのばせ、いざとなれば浪人とも渡り合う。将棋を指せば腕自慢のご隠居もひとひねり。動物と話しているのを見た、なんて噂も。そんな信吾が、店を弟に継がせて、自分は「よろず相談屋」を開くなんて言い出した…。不思議な魅力をもつ青年と、そこから広がる人の輪を描いた軽妙な時代小説。

  • 野口卓の小説は、薫風堂ですっかり虜になりました。その後、軍鶏侍、新軍鶏侍を読み、「よろず相談繁盛記」を読み始めました。
    とても軽快ですが、それなりに考えさせられる内容もあり、楽しめそうです。
    加えて、蘊蓄が興味深いですね。

  • 江戸の老舗料理屋宮戸川の長男信吾は三才の時に高熱が続き得意な体質と不思議な能力を持った。
    そんな信吾が店の跡取りを弟に譲り将棋会所とよろず相談屋を開いた。

  • 軍鶏侍で大好きな作家野口卓。
    集英社文庫で、始めたシリーズ第1巻。

    楽しみに読み始めたが、まだなんとなくのめり込めない。
    3歳の頃重病を経て、ときに記憶が曖昧になる後遺症を残した主人公信吾は割烹料理屋の跡取り。
    だが信吾には後遺症のことも気がかりで7歳の頃から弟の正吾に跡を継がせ自分は将棋の会所を開こうと夢見ていた。

    そんな子供であったから、考え方も大人びて理路整然としていた。体を強くして身も守る手段も得ようと、寺の僧侶に棒術やら剣術やらも教えてもらい、商人であるので、剣を持ち歩けないことからヌンチャクに一工夫して、持ち歩くようにした。

    一見静かで穏やかな信吾は、そんな腕を持っているとは誰も信じない。しかも、もう一つ秘密を持っていた。それは動物の言葉が聞けること。

    さて、このシリーズどんな展開になることやら。。。

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著者プロフィール

1944年、徳島市生まれ。さまざまな職業を経験し、ラジオ・ドラマ脚本・戯曲を執筆。1993年、一人芝居「風の民」で第3回菊池寛ドラマ賞を受賞。日本脚本家連盟会員、日本放送作家協会員。2011年、『軍鶏侍』で時代小説デビュー。同作で歴史時代作家クラブ新人賞を受賞、同シリーズにより多くの時代小説ファンを獲得。ほかシリーズに「ご隠居さん」「手蹟指南所『薫風堂』」「新・軍鶏侍」「よろず相談屋繁盛記」「めおと相談屋繁盛記」など、単著に『からくり写楽 蔦屋重三郎、最後の賭け』など著書多数。演劇にも造詣が深く、小説、戯曲、芸能、映画、音楽、絵画の多ジャンルでのシェイクスピア派生作品を紹介した著作『シェイクスピアの魔力』がある。

「2022年 『逆転 シェイクスピア四大悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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