- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087458930
感想・レビュー・書評
-
よろず相談屋繁盛記 シリーズ3
浅草東仲町の老舗料理屋「宮戸屋」の跡取り息子の信吾が、家を出て、黒船町で、将棋会所「駒形」と「よろず相談屋」を開いてから一年。
小僧の常吉も、奉公を始めたころとは、別人のように愛想良く気配りもできるようになり、
「よろず相談屋」のお客も、ボチボチと増えてきた。
そんな折に、実家の「宮戸屋」が食中毒事件を起こした。
七月の別名
文月・卯月・初秋・新秋・上秋・首秋・肇秋・孟秋・七夕月、相月、蘭月・凉月・冷月
とも呼ばれるらしい。
文月・卯月は、知っているが、それ以外は、始めて目にした。
卯月は、4月の和風月名と覚えていたが・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
二十歳にして将棋会所と相談屋を営む真吾のシリーズ第三作。
第一話「人を呪わば」はまさに「そりゃないよ」な話。
真吾の実家である老舗料理屋<宮戸屋>で食あたりが出た上に見舞金を渋ったというかわら版まで出てしまい、店が潰れるかも知れない大ピンチ。しかしかつて信吾により手柄を立てられた権六親分が助けてくれる。
権六親分の活躍も嬉しいが、こういう窮地に落ち着いて振る舞える信吾の父で<宮戸屋>主人の正右衛門も頼もしい。次々予約のキャンセルが出て、従業員たちもこのまま雇ってもらえるのか、給料は出るのかと不安になるなかしっかり向き合っている。
今で言う炎上騒動のようなものだが、人の移ろいやすさ、簡単に信用が地に落ちる危うさのようなものも感じた。
第二話「縁かいな」もまた「そりゃないよ」な話。
久しぶりの相談客が現れたと思ったら、これまで信吾が受けた相談の中で面白いものを話してほしいという内容だった。
話は聞いて楽しむだけ、余所には決して話さないといくら客が言ったところで当然相談事は外には漏らせない。ならば断ってしまえば良いと思うのだが、そこは何とかして客の要望に答えようとする信吾のこと、懸命に作り話をひねり出して伝えるのだが、その顛末はまさに「そりゃないよ」だった。
う~ん、後味が良いのか悪いのか。作り話だったことを良しとして今後の商売の勉強料として受け止めるべきか。
第三話「常に初心に」はこの章題通りの内容。
信吾の名付け親であり信吾に武芸を教えてくれた厳哲和尚からの言葉で初心に帰ること、そして将棋会所の商売も大切であることに改めて気付く。厳哲和尚の前身も気になるが、これまた和尚が言うようにそうした穿鑿が良い方向に向かうとは限らない。
第四話「隣はなにを」は一番印象に残った話。
隣に住む偏屈そうな老人が将棋会所に子どもたちの声がうるさいと苦情を言ってきた。
信吾が会所を開いた折に挨拶した時からずっと交流のない隣人がどんな人物なのか興味を持った信吾は、夜に酒を持って訪問する。
結局隣人が語ったことが真実かどうかは分からない。それでも隣人の危機に助太刀に入った信吾の心持ちは伝わったと思う。どこまで心が通い合ったかは分からないが、孤独な隣人にとって真吾との短い交流は何かしらの前を向くきっかけになったのではないか。
相変わらず相談屋の方は繁盛とは言えない。信吾の若さも感じるが同時に元来の人の好さもあって気持ちよく読める。
※よろず相談屋繁盛記レビュー
第一作「なんてやつだ」
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087457753#comment
第二作「まさかまさか」
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087458288#comment -
「よろず相談屋繁盛記」の第3弾。慎吾の実家の老舗料理屋宮戸屋で大変なことが起こる。それは、慎吾がよろず相談屋で築いてきたもののおかげでで解決したと言っていいだろう。将棋会所は軌道に乗っており、よろず相談屋のほうでも様々な人物と知り合うことになっていく。第4話の「隣はなにを」はしみじみとする話だ。慎吾の人当たりの良さが光っている。それにしても、こんなに若いのによくできた人物なので、まいっちゃうね。でも嫌味はないのはさすが、作者の上手さかな。
-
飲み込みの悪い常吉が、ある出来事を単に発し、見事に生まれ変わる。
人は自分が思うことでしか、真剣に行動できない。
他人に命令されてのことでは、物事に価値を重ねられないものなのだ。
ある日隠居老人と思われる人が10歳くらいの女の子をつれて、将棋会所、駒形へやってきた。
その女の子が将棋を祖父とでない他の大人としたいのだった。
実力を図るために信悟が相手をする。
初めて負けた女の子ハツは将棋の素晴らしさ、面白さを再認識し、それに釣られたかのように少年たちが集まるようになった。
人は人でしか育てられないのであろう。
素晴らしい人育ての話でもある。 -
202110/よろず相談屋繁盛記シリーズ・めおと相談屋奮闘記シリーズ既刊全10作まとめて。毎回平積で新刊を見かけ気になっていたので読み始めることに。最初は、設定てんこ盛り(幼少時に大病、生き物の声が聞こえ会話できる、老舗料理店の長男、鎖双棍の使い手、相談屋と将棋会所を経営)だな~と思ったけど、主人公は勿論、登場人物達が生き生きと描写されているのでこの世界に入り込んで楽しめた。最初は使い物にならずぼんやりしてた小僧の成長ぶりやちゃっかりぶりも微笑ましい。相談事の内容や解決手法等、物語としてパッとしないものや偶然の産物だったりも多いし、自分の好みではない話(将棋会所で皆が艶話や与太話をただただ話すだけとか)もあるし、時代物とはいえ書いている今の時代にそぐわない描写や設定も感じるけど、総じて面白かった。「主人公と話してたら何故か解決してしまう」のと同様、とらえどころのないなんかわからない面白さもあった。
よろず相談屋繁盛記シリーズ(なんてやつだ/まさかまさか/そりゃないよ/やってみなきゃ/あっけらかん)
めおと相談屋奮闘記シリーズ(なんて嫁だ/次から次へと/友の友は友だ/寝乱れ姿/梟の来る庭) -
シリーズ3冊目。【人を呪わば】実家の宮戸屋で食中毒!?その真相は…権六親分、大活躍!
【縁かいな】「他人には話さないので、相談された面白い話を教えて欲しい」と謎の人物に頼まれて、捻り出した解決策。私だったらブチ切れる。
【常に初心に】礼がてら、厳哲和尚を訪ねた信吾。つらつらと語り合ううち、今までもらった数々の教えを思い出す。この2人の間柄がとても良い。【隣はなにを】1度も話した事のない、気難しそうなお隣の老人が、将棋会所の子供がうるさいと苦情を言いに来たキッカケに交流が始まろうとした矢先に…ちょっとホロ苦い話だった。
あの常吉が急速にデキル子になっていくなが少し寂しかったりして。 -
電子書籍➰野口卓ーよろず相談屋繁盛記
-
63