武家用心集 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460032

感想・レビュー・書評

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  • 「用心」とは、心の持ち方だとか。
    人として生きる道を描いた収録されている八短編は、山本周五郎、藤沢周平を継ぐと言われる著者の、心の琴線に触れる
    珠玉の作品。
    読後には、いずれまた折に触れて読み返したくなる気持ちにさせる。

  •  心に沁みる短編8話、魅了されました。乙川優三郎「武家用心集」、2006.1発行。特に、第4話「邯鄲」(輔四郎33歳と女中あま20歳の話)と第2話「しずれの音」(病む母親吉江を気遣う娘寿々とその夫周助)がお気に入りです。第3話「九月の瓜」、第6話「向椿山」、第8話「梅雨のなごり」も味わい深いです。

  • 第10回中山義秀文学賞
    短編8つ
    付箋
    「田蔵田半右衛門」
    ・慌て者は、望みの少し手前で暮らすほうがいいのかもしれない
    ・屈託のない笑い声を聞く、自ら笑うのも久し振りのこと 子供たちもこちらを見て笑っている。これがまことの褒賞かな
    「しずれの音」
    ・寿々は胸の中で何かが大きな音を立てて弾けたような気がした。近付いてくるのは夫の周助である。
    「向椿山」
    ・とことん諦めることに馴れてしまうと、生きることにも無精になるのが人間である
    「解説」
    ・作者の実人生と、作品の内容とを安易に結びつけてしまうのは、近代人の悪癖である。
    ・乙川の目的は 人間の心の最も奥底に潜んでいる感情ないし情緒に形を与え、日本語の繊細な調べに乗せること。

  • 初めてこの方の話を読んだ。日々の普通の人間の憂鬱や小さな喜びを丁寧に書いていて、まるでその人の家族になった気持ちになったかのように読み進めた。義理の家族とのやりとり、1人で生きていく女の迷いや強さ、寡黙に大事なものを守る男の生き方など、短編集でありながら、長い日々を見たかのようで、とても読み応えがあった。一冊しか持っていないので、すぐにでも次の本を手に取りたい気持ちになる。

  • やっぱり乙川さんは短編が良いですね。
    表題の通り、どれも周五郎で言えば「武家もの」に属する8作品です。
    非常に平易な文章です。しかしそれは練りに練られた結果なのだと思います。物語の中にスッと入り込めて、その世界に浸ることが出来る。そんな文章です。
    そして肩肘を張るでなく、一個の人間として生きようとする主人公達に大きな共感を感じます。
    いずれも非常に質が高い、8つの短編です。やはり周五郎・周平のあとを継ぎ、それを越えるのはこの人かと思わせる短編集でした。

  • 繊細な言葉と静謐な筆致で紡ぐ筆者渾身の力 作。政変に巻き込まれ耐えて、忍びながら生 きる不器用な武士や家族を描く短編集。
    作品の特徴はありがちな些細な日常を題材に して、人生選択の岐路に立った時、小さな決 断の一つ一つにスポットを当てた事。そして 人間の心の最も奥底に潜んでいる感情に繊細 な日本語とともに形を与える事。読み終えた 後、内容より美しい言葉の調べが心の隅々に 残る。それにしても凄い作家です。

  •  静謐な、という言葉がふさわしい短編集。貧しいながらも心の中の矜持を失うことなく、毎日を誠実に生きる人々。
     守った筈の友に裏切られ、閑職に左遷され、石高もごっそり減らされた武士。疎遠な義兄から刺客を申し付けられるが。
     義理の兄から病気の母親を押し付けられ、困惑する下級武士の女房。
     藩の重役と、隠居して百姓仕事をする者に分かれたかつての親友。
    重役は彼をかつて蹴落としたのだ。
     家族に何も語らず、城に泊まり続ける武士。案ずる娘に安心感を与える叔父。
     一人生け花を教えて生きようとする女。祖母の人生をなぞるかのように。
     医学を志す思い人を待てなかった娘。

     あと2編あったはずだが思い出せない。

     登場人物は皆めぐまれぬ境遇にあるが一生懸命生き、物語中さらに境遇が悪化しても歩みを止めない。

     現代人、とくに恵まれぬ立場にある若い人は共感を覚えると思う。
    もちろん私も。恵まれずとも心の内はかく有りたいと思う。

  • 文章がきれいですね。

  • 短編八編。また今回も乙川優三郎は実は女性なんではないかって思った。武家社会の女達が主人公のもの、あるいは武家の女性からの視線で書かれたものが多かった。その細やかな内心が、自然で女々しくなく、まさにぴったりな表現でされているから、心にすっと入っていく。山本周五郎に通じる、読中読後の満足感がある。

  • 好きな人には好きな小説だろうという感じ。

    最初の2話くらいまでは引き込まれて読んだが、残りになるとなんだかジメジメしているので憂鬱になってくる。文章は上手。描写も綺麗。それでいて淡々と現実的にどうにもならない問題や悩みに向き合う人々をまじめに描く。しんしんと雪が降って積もるという感じの小説。

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著者プロフィール

1953年 東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年「脊梁山脈」で大佛次郎賞、16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。

「2022年 『地先』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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