生きること学ぶこと (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467024

作品紹介・あらすじ

学問の愉しさ、喜びとは何か。そして、創造することの愉しさ、喜びとは-。フィールズ賞に輝く世界的数学者が自らの半生を振り返りながら、父母や友人のこと、数学へ没頭していった学生時代、そして失敗と挫折から世紀の難問「特異点解消」の定理を完成させるまでのすべてを、飾らない言葉で語る。激動の時代に独自の生きがいを創造するために、著者から21世紀を生きる若者へ送る人生、学問論。

感想・レビュー・書評

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  • 学びについて、人生についてフィールズ賞受賞の数学者が語った書。共感する部分が多くおもしろかった。

    <メモ>
    ・創造のある人生こそ最高の人生である。では創造とはなにか。何が大切なのか、何から創造は生まれるのか。創造の一つの喜びは自己の中に眠っていた、まったく気付かなかった才能や資質を掘りあてる喜び、新たな自己を発見し、ひいては自分という人間をより深く理解する喜びではないか。
    ・独力で稼ぐことほど、この世で尊くて強いものはないという、生活哲学からくる自信。
    ・発明について何の役に立つのかといわれたときのベンジャミンフランクリンの回答「では、この赤ん坊は何の役に立つのか」
    →創造は出発点ではみな幼稚であること。創造の原型は赤ん坊のようなものであり、それが十分成長した時に初めて何の役に立つか明らかになってくる。子供を育て上げてみないと社会にとっての価値が生まれないように、ものも創ってみないと価値が生じない。
    ・人は一つの成功経験によって、ともすると素朴な心を失ってしまう。
    ・目標をはっきりつかんでいるかいないかで、人間の成長はかなり違ってくる。目標がその人への引力となって仕事ができ、発展進歩する。
    ・何を研究しているか?という問いに対して、日本人は「代数」「幾何」といった回答が返ってくる。米国は自分のもっている仮説を説明する。米国はまず仮説を立てて演繹してみることから始める。
    ・仮説は勇気がいること。初めにたてる仮説はたいていだめだというジンクスがあるから。しかし、仮説をたてているうちに意外な発見が生まれる。創造的な仕事をしていきたいなら、仮説を立てて、演繹する考え方を取り入れるべき。
    ・あまりに抽象的な概念は論理的には正しくても、何ことかわからない。具体的な問題を通して、表現されたとき、意味が理解される。表現には概念を忠実に表現する態度と、象徴的に表現する態度がある。
    ・数学にある抽象と表現という側面は音楽と共通している。音楽の美しさは音の美しさのみならず、音の構造の美しさ。近代数学でも構造が非常に大切。音楽がそうであるように数学でも美感が大事。
    ・問題を理想的にすること。無垢な純粋な形にして解きにかかること。これも創造には大切なこと。
    ・単純明快に自分の考えを相手に伝えるには、自分の考えに責任をもたなければならない。責任を持てるようになるにはそれ相応の努力が必要。
    ・事実を事実としてとらえること、仮説を立てること、事象を分析すること、生き詰まった時は大局を観ること。思考する時創造するときは「単純明快」を心がけること。
    ・人は何かに夢中になっているときはたとえ苦労であっても苦労を苦労と思わない。何かに飢えてなければ創造し続けることはできない。
    ・日本人は主張する前は柔軟性のある態度だが、自分を表に出して主張すると柔軟性をなくす。米国人は主張する段階では固辞し頑固だが、評決が決まると柔軟性のある態度を示す。
    ・ウォントが創造に必要。これは自分自身の中から生まれたものでなければならない。
    ・日本の学生は質問する際にwhy、howが多い。これに対して米国はwhatの質問が多い。事実を聞くスタンス。日本人は事実の裏の真理を求める。

  • こういう本には中学生か、高校生の頃に出会いたかったな。そういう多感な時期に読むと、この本から得るものは今と比べようにならない程多かったと思う。読みやすいし、凄い良い本(小並感)。

  • 生きること。学ぶこと。創造すること。に対して明快な考え方を
    提示してくれる一冊。
    生きることはけして平等ではないけど、学ぶことは本人が意欲があればどこからでも学ぶことができる。そんな著者のさまざまな生きていく態度が散りばめられている。
    勇気を与えてくれる本です。

    ”自己の新たな一面を発見し、「自分には、こんなところもあったのか」と、自らをより深く理解する喜びは、はるかに大きなものだ、と体験を通して私は思う。 ”
    人生において、そんな喜びをなんど味わえるんだろう。そう思いながらも創造してくことを大切にしていきたい。

  • 数学者の話はいいなと思ってます。

  • 「学問の発見」で著者を知り、本書を読む。読み終える時に「学問の発見」の改題、加筆、修正版であることを知った。そういうことで、「学問の発見」の再読として本書を読んだ。

    ところで、本レビューを書いている少し前に、世間で三角関数の必要性が問われていたのだが、著者が考える「学ぶことの意味」が一つの解となりそうに思う。

  • フィールズ賞も受賞した広中平祐先生の自伝です。
    それと共に、生きるとは、学ぶとは、といった問いに答えた
    人生論・学問論にもなっています。

    理数理 ヒロナ||5||4 11895633

  • 広中さんの考えにどっぷり浸れる本。研究者の苦難も感じることができるエピソードもあり、研究者を目指す人は一読すれば、覚悟の一つに加えることができるのではないだろうか?

    ・僕アホやし。

  • 問題に相対し解けない時、その問題に対し、制限をかけて、解きにかからず、
    その問題を一度理想化し、再構築し、より難しい問題にした上で解きにかかる。

  • 数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞受賞者の著者が、人生を振り返りながら、学ぶ喜びとは何かを説いた本。東工大に入って日々勉強する中、ふと自分の立ち位置が分からなくなったら、読んでみて下さい。すっと心に風が吹き込みます。
    (電子物理工学専攻 M1)

  • お説教されるのかなと思ったけど、あんまりされなかった。自分にとってはとても良い本だと思った。

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