- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087474527
作品紹介・あらすじ
夜更けの留置場に現れた、その不思議な老人は六尺四方にしか聞こえないという夜盗の声音「闇がたり」で、遙かな昔を物語り始めた-。時は大正ロマン華やかなりし頃、帝都に名を馳せた義賊「目細の安吉」一家。盗られて困らぬ天下のお宝だけを狙い、貧しい人々には救いの手をさしのべる。義理と人情に命を賭けた、粋でいなせな怪盗たちの胸のすく大活躍を描く傑作悪漢小説シリーズ第一弾。
感想・レビュー・書評
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痛快と言うわけではないが、苦しき中で粋に生きる人の強さと言うものを感じさせてくれる小説。
今の時代の価値観や世界観、人生観とは違う何か大切なものの見方を教えてくれている様な気がする。
ただの人情噺で哀れというのではなく、強く生きる力を感じさせてくれる。それは、解説で言われる、振り返って自己解釈する物語ではなく、過去から現在を照射する未来を照らす選び取る視点で描いた物語だからということなのかもしれない。
前者の視点は勝者の視点で、その視点から描くのが歴史。後者の視点は消えゆく者や敗者の視点で、その視点から描くのが物語。そう言う解説で、この物語の視点と、『童の神』や水滸伝などの敗者を描いた物語に心惹かれる理由に思い当たる。
この本のメッセージや価値をまだまだ、十分には味わい尽くせていない自分が居る。もっともっと、人生修行が必要な様だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近本を読むようになったと言ったら、義母が貸してくれました。浅田次郎さんの作品は初めてで、最初は昔の語り口調や文章に慣れなかったです。この内容なのかな?って推測しながら読んだ箇所もありました。
でも段々と天切り松の話にのめり込み、最後の姉弟の話なんて感動して泣けました。
現代にはなかなかない義理人情の話でした。その姿が盗っ人だけど、とてもかっこ良かった。ただのお金目的ではなくて、人助けにもなる盗っ人もあるんだと思いました。
義母が貸してくれなかったらきっと出会わなかった作品。他のシリーズもお借りしているので、ゆっくり読んでみようと思います -
面白かった
一話完結型の短編連作
天切り松が語る盗賊の一家の物語
■闇の花道
■槍の小輔
■百万石の甍
■白縫花魁
■衣紋坂から
の5作。
盗賊一家のそれぞれのキャラを中心に義理・人情のエピソードが語られていきます。
この中で、一番印象に残った話は、「白縫花魁」と「衣紋坂から」
これは、二つで一つの物語。
花魁の身請け、姉弟の物語
とても哀しい結末でした。
シリーズ物で続きがあるようです。
ちょっと楽しみ
お勧め -
雑居房の金網にぎっしりと顔を並べる留置人と看守と同じく私も天切り松の闇がたりの一言も聞き逃すまいと聞き耳を立てた
江戸っ子の小気味良い語り口が何とも心地よい
「金輪際、桜田門たァ縁を切る。殿下閣下もかまいやしねえ、盗られて困らぬ世間のお宝、一切合財ちょうだいしようじゃねえか」
目もくらむほどの果てもねえ花道を、走り出す抜弁天、目細の安とその手下五人
事業家のような威風と華族のような品位の目細の安こと安吉親分
大兄イにふさわしい貫禄で、身なりも面構えも明治の無頼漢そのものの若頭の寅弥兄ィ
開襟シャツに生成りのズボンをはいた勤め人ふうの栄治兄ィ、近所へのふれこみは「洒落者の若い大工」だそうな
長い羽織に麻の袴、時代遅れの壮士風、「書生常」こと常兄ィ
藤色の絽縮緬の夏羽織、レェスの日傘をくるくる回すあだな姿のおこん姉さん
「よっ、春駒屋」と声をかけたくなるほどのかっこよさ
いやいや、盗人に感動しちゃダメなのはわかってはいるけれど、まるで講談を聞いているような小気味よさ
弱きを助けて、強きを挫くネズミ小僧のような6人だがそれぞれにここに至るまでの物語がある
胸のすく愉快な気持ちで読み進めたが、最後は松蔵の姉・白縫花魁の冥福を祈るしんみりとした気持ちで読み終えた
プリズンホテルに続き、感想を残すための4〜5年ぶりの再読だったが、何度読んでもおもしろい
浅田次郎の描くこんな世界が好きだ
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天切り松シリーズは寝る前とか、静かに読み耽るといい感じ。
でもこの巻は油断してると泣く。 -
古本屋でブラブラと散歩がてらの購入。
久しぶりに浅田次郎さんが読みたくなって、ハズレはしないだろうと予想して、以前から気にはなっていたシリーズものを手に取る。
が、ハズレでした。
大正ロマン。
ピカレスクロマン(悪漢小説)。
義理と人情の義賊小説。
おもしろくないわけはない要素がテンコ盛り。
でも……、なにか講談師の三文噺を文字におこしているだけのようで、江戸っ子でも何でもない田舎者の私にはつまらなかった。
残念。
これ以降のシリーズを手に取ることはないだろうな。 -
泣ける…!
特に黄不動の栄治と根岸の棟梁のやりとりとか、最後の松蔵と白縫花魁の場面とか…、
この時代の苦しさはあるけれど、でもこの時代までにしかない人情があって、
目細の安吉親分一家の心意気があたたかくて、かっこよかった…! -
浅田次郎氏は、人は黙読していても心で声を出して読んでいる。読みやすいリズムになっているか、書き終わった後に声を出して読むようにしている。というようなことを言っていた。本作もリズム良く読めました。やはり面白かった。
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泣いて泣いて泣いた。
自分が住んでいる場所が舞台になっているので、勝手にワクワクしていた。
下町生まれの私の教科書である。 -
始まりからワクワクする。
粋とはなにか分かるし、
それぞれのキャラクターが最高。
これがシリーズであと5倍楽しめるなんて。
俺の浅田次郎好きになったキッカケ本