サイケ (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475913

感想・レビュー・書評

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  • もう好きだからとしか言いようがない。これは短編集。

    タイトルの「サイケ」や「オー、モーレツ!」が象徴するように、70年、大阪万博が開催されたころの関西に暮らしていた登場人物たちはほとんど著者の投影だと思う。
    特に「オー、モーレツ!」には共感しかなかった。私も子供の頃仲良く連れ立ってトイレに行くの面倒だったし。給食もまずくて大嫌いだった。今は子供の給食食べに行ったことあるけど、めちゃめちゃ美味しいよね。もとい、あの頃の私も主人公の羊子と同じように早く大人になりたいと思っていた。

    この作品集の中ではなんとなく浮いている感のある「通りゃんせ」が怖かった。ホラーには「です・ます」調が効果的なのがわかる。そう、この作品集、どれもなんとなく怖いのである。幽霊が出たり、人が殺されるわけじゃないんだけど、じわっと嫌な感じ。「お元気ですか、先生」もかなりぞっとした。たしかにこういう先生っていた。今だったらすぐにクビになるんだけど、昔は先生の言うことは絶対だったからね

  • 改めて表紙のインパクトがすごい。


    題の『サイケ』の意を検索すると「ドラッグによって起こる幻覚・恍惚状態」とのこと。

    正直私自身が理解不足なのだが、1970年代の日本社会はそれまでの飛ぶ鳥を落とす勢いの高度経済成長とその終焉、停滞を経験した時代。一方で文化的にはテレビ全盛期、歌謡曲の黄金期。漫画文化のはしりもこのあたりらしい。学生運動は終息したが、一方でよど号事件や浅間山荘事件など衝撃的な出来事も続いた。

    ある意味で正気を失っていた時代だったのだろう。


    1刷
    2021.1.29

  • うすっぺらい内容だ。作者は大阪万博にこだわっているが、それがいい方向に向いているとは感じない。読後感も良くない。大阪万博の時に小学生だった人にとってはあるあると感じ懐かしい風俗ではあるだろうが。「サイケ」では全然なかった。

  • なんと言うかこう、必要以上に偽悪者ぶるというか、なんというか。
    確かに性的な嗜好を結構リアルに描いているけど、それも大きなテーマのひとつではあるけど、それだけが姫野ワールドじゃあないんだよ。

    若さゆえにとんがったコピーなのか、売らんがための出版社の営業戦略なのかはわからないけど、薄っぺらい、一面的な内容紹介なのである。

    私にとって姫野カオルコって、おかしいことをおかしいって言えないのはおかしいって怒れる、至極真っ当な人。
    何も考えることなく他人に言われるがままに行動して、何の疑問も持たないのはどうして?って、いい加減若くないのにずーっと気持ち悪く思っていられる稀有な人。
    そう、私が言えないでいることを、私に代わってもの申してくれているありがたい人なんですわね。

    “円周率とは何なのか。なぜ、だれが、どんなふうにして3.14と決めたのか。なぜ3.14を引き出せたのか。それがわからない。円周率を人類が引き出していった過程を納得しなければ、そんなもの鵜呑みに使いたくない。気持ち悪い。(中略)先生は何としても18を2で割らせたがる。もっと前の段階にある私の疑問に彼は全く気付かず、彼が気づかないことに私は気づかない。”

    みんなが簡単に納得できていることが、私にはどういうわけだか上手く納得できない。理解できない。
    仕切りたがりの女子。
    いじめの采配を振るう人。
    連れ立ってトイレに行かなくてはならない仲間。
    強要されるお揃い。

    円周率はどうでもいいが(え?)、そういうことが気持ち悪くてしょうがなかった。
    そして一番よくわからないのが、それにやすやすと従う人たちの変わり身の早さ。

    なんで?どうして?と立ちつくしている私の横を、何のためらいもなく軽やかに通り抜けていくクラスメートが、本当に不思議だった。

    “ひとつのことを考え続けない、その明快な光を私は畏怖した。”

    大人になった今ならわかるんだよね。
    きっと、みんなも多かれ少なかれ、戸惑っていたということを。
    もしかしたらまったく戸惑っていない人もいたかもしれないけど、少なくとも、私だけが世の中に適応できないわけではないということを。

    というか、傍から見たらしっかり適応しちゃっているし。

    多分私も誰かに、理解のできない気持ちの悪さを与えていたのだろう。
    与え続けているのでなければよいのだけれど。

    多様性を否定しないで。
    自分の一存を押しつけないで。
    みんな違って、みんないいのだから。

    でも、円周率は3.14だよ。(笑)

  • 蠱惑的で年齢を感じさせないヨヲ子もいいが、カスミソウを愛する控えめな目線にも心惹かれた。良からぬ噂には決して耳を貸さない主人公に好感を持った。半径3キロの人生を胸を張って走る主人公が眩い。自分の足元くらいは責任をもった行動のとれる社会人でありたい。

  • 性同一性障害は、同性愛者だけを指さない。ラクウェル・ウェルチを偏愛する小学生女児の目に映った1969年から70年にかけての時代。そしてサイケから 再びサイケにもどった時間を紡いだ短編集

  • 70年代を描いた懐かしさあり、やましさあり、そして共感もありの短編集。「オー!モーレツ」「お元気ですか、先生」「少年ジャンプがぼくをだめにした」などの6編が収録されています。

     70年代と言えば、安保闘争がちょうど70年代初頭の頃の出来事であり、フォークソングが流行したり、サイケ調のファッションが流行したのって70年代のことでしたよね(だから「サイケ」ってタイトルなのね)。

     この短編集は、ただそれらの世相や出来事をなぞり、「そういう時代だった」や、当時を生きた人たちのノスタルジーだけには終わらない作品たちで構成されています。(もちろん作中には懐かしい言葉もポンポン飛び出していて、それはそれでおもしろいけれど)むしろ、70年代を検証した小説集であるといえそうです。読みながら、「どんな時代だったのか?」を考えてしまいます。

     私がすごいと思った作品は「お元気ですか、先生」です。一見ほのぼのとしたタイトルなんですが、中身がすごい。ここに登場する小学校の教師はなんて恣意的な教育をするんだろう。えこひいきにヒステリー。まるで教師の天下?読めば読むほど、ここに登場した先生とは違うパターンであるけれど、自分の小学校時代の担任を思い出してしまいました。

     気分で怒る、なぐる、セクハラは当たり前、詳細は書けないけれど今なら教育委員会から指導されてもおかしくないようなお仕置きもあり、今思えば非常に理不尽だと思えるような決まりも作られたし、そしてもちろんえこひいきもあり...。
     おそろしいことに、そんな教師が他クラスや学年の担任にもゴロゴロ。
     この短篇でこのように描かれたと言うことは、こんな教師が70年代では当たり前だったのか?と思ってしまう。

     また、「オー!モーレツ」は作者の小学校時代を思わせる作品。どこまでがフィクションなんだろう?なんて不謹慎なことを考えてしまいそう。

  • 最初の、好きな人を美化しない男の人の考え方が、筋が通っているようないないような微妙なとこがおもしろかった。

  • お母さんに読ませたい!そして解説を聞きたい!
    昔の小学生ってこんなにませたガキだったの?と。

    って言っても。
    女の子でもキレイな先生にどぎまぎしたり、
    昔嫌だった先生に向けて悪口ばっかりの手紙を書いてみたり、
    確かに自分にもあったな。
    どきどき。

    著者胴体、見事です。
    胸もくびれも!うらやまー。

  • 私は侮っていた。姫野カオルコを。ポップな表紙、キャッチーな帯。お気軽に暇つぶしに読みましょうと思って、近くのスーパーで手に取った。しかし、姫野氏、ものすごく頭が切れるうえに策士ですよ

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

姫野カオルコの作品

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