スローグッドバイ (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478167

感想・レビュー・書評

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  • ずっとセックスの話ばっかりしてるな…と思ってたら、最後の短編で全てが腑に落ちて、読後感が良い感じになる不思議。


    『スローグッドバイ』
    著︰石田衣良
    2005年 集英社文庫

    『泣かない』
    失恋の後に泣けない女性と、ぼく。
    泣ける映画のタイトルが大体分かるのがおもろい。

    『十五分』
    夏の間ひたすらセックスし続けた思い出の話。

    『You look good to me』
    アヒルの子と僕の、チャットから始まる恋。
    美醜。

    『フリフリ』
    熱心に恋人候補を紹介してくるカップルに半ばうんざりした僕と潤子は、付き合う「フリ」をすることで今後の煩わしさを解消する。

    『真珠のコップ』
    コールガールとの出会いからの、本気。

    『夢のキャッチャー』
    シナリオライターを目指す彼女がどんどん高みに昇っていく。その様に、自分が置いていかれるような気がする男。

    『ローマンホリデイ』
    ネットで出会った女性と「ローマの休日」の話で盛り上がり、ついに会ってみると…
    良い話。オチも素敵。

    『ハートレス』
    仕事が忙しくすれ違いばかりのカップルの、セックスレスの話。

    『線のよろこび』
    才能を見抜く力のある女が次に見出したのは、地下鉄の職員!

    『スローグッドバイ』
    「内臓が本来の場所からずれ落ちていくように感じた」
    キレイに別れるためのサヨナラデート。
    女は物書きの男に、いつかこの事を書いて、と頼む。
    男は沢山の物語を書くと確信する女。この別れを機に、沢山の物語が湧き上がる男。
    この短編集のラストにふさわしい、全体を暖かく包み込むようなエンディング。鮮やかで強い。

  • 石田衣良さんの初めての短編集で、初めての恋愛作品集。これから始まる恋話は当然ハッピーエンドですが、別れ話でも前向きでバッドエンドではありません。

  • 淡彩画のような短編恋愛小説10編を収録しています。

    別れることになったフミヒロとワカコの「さよならデート」をえがいた表題作「スローグッドバイ」が、やはり一番印象にのこっています。これはどうしても著者の実体験なのではないかと憶測してしまいます。

    「泣かない」は、恋人にフラれて涙を閉じ込めてしまった女の子の心を、ゆっくり溶かそうとする青年が主人公のストーリー。「十五分」は、大学のゼミで一緒だった女の子とのひと夏の想い出を綴っています。「You look good to me」は、インターネットのチャット上で「自分は醜い」といいつのる女の子と出会う話。「フリフリ」は、たがいに知人のカップルに紹介された男女が、付きあっている「フリ」をして楽しむという話。次の「真珠のコップ」は、デリヘル嬢との純愛をえがきます。「夢のキャッチャー」はシナリオ・ライターの夢に向かって飛び立とうとする女の子と、そんな彼女の姿にとまどう男の子のストーリー。

    「ローマンホリデイ」は、インターネット上の「わたしと『ローマの休日』をしませんか?」という書き込みに惹かれて、そのメッセージの発信者の女性とメールのやりとりをはじめる男性の話。主人公の男がカッコよすぎて、すなおに褒めるのがイヤになってしまうほどです。

    「ハートレス」は、恋人とセックスレスの状態が続いていることにいら立つ女性が主人公。「線のよろこび」は、アート系のPR誌の編集をしている女性が、鉄道会社に勤める若い男性の描いた絵に好感を抱き、コンタクトを取ろうとする話。このニ編は女性視点から描かれているのですが、ディテールの描写はていねいであるものの、ストーリーにかんしては慌てて結末に駆け込んでいる印象があって、すこし残念に感じました。

  • 石田衣良さんの作品はおしゃれだ。
    それが失恋の話であっても、現代にはびこる社会問題であっても時にはギャング間の抗争さえおしゃれに描かれる。
    読者はその軽快でおしゃれな文章とストーリー展開に引き込まれながら著者が投げかける命題について思考する。
    本作品で描かれる10の恋の物語、現代に生きる人々の悲喜交々がやはりおしゃれな文章と展開で描かれている。

    この作品は私にしては珍しく再読した作品。
    以前は何歳の頃に読んだものか覚えていないが、IWGPシリーズのまことの活躍に胸を躍らせていた頃かもしれない。
    とにかく若い頃には間違いないだろう。
    石田節の文章とストーリーに酔って堪能していたはず。

    ところが今60も半ばを過ぎて読む本作は70年代、80年代頃に流行っていたカラフルでポップなポスターを眺めるのに似ている気がした。
    どこか自分とは随分離れたところの話を聞いているだけのような感覚、実感があまり伴わない。
    表題作の「スローグッドバイ」に描かれているおしゃれな別れ方、当時のトレンディドラマを真似た若者の間ではもしかしたらあったかもしれないけれど、それは極一部のお金に余裕のあるお坊ちゃま、お嬢ちゃま達の間での事。

    齢を経て知るのは、人間の生活、恋でも仕事でも友情でも、そんなにおしゃれなことは起きない。
    実生活ではすべての事が泥臭く、格好悪く、必死にもがくようにして進んでいく、という事。

    好きな作家であってもその作品を読む読者の年齢と経験は作品の評価への大きなファクターかもしれない。

    本作品中で一番しっくり読めたのは「ローマンホリデイ」
    老人ホームで暮らす72歳の女性が21歳の孫娘の名を借りて掲示板で知り合った主人公の若い男性とメールのやり取りをする。
    彼女の頭の中には映画「ローマの休日」のグレゴリーペックとオードリーヘップバーンの恋物語と若いころに親しんだ古い銀座の街並みが今でも息づいている。
    メールのやり取りをする中で、自分は孫娘の年齢の女子になり「ローマの休日」の感想を語り合い、ローマの町を、銀座の街を自由に散策する。
    事実を知った主人公はそれでも彼女を受け入れメールのやり取りを続ける約束を取り付ける。
    そんなしゃれたストーリー。

    歳を取り「老人」と呼ばれる範疇に入っても、人は自分の中に若さを持っている。
    老人ホームのベッドに横たわっている今の自分を切り取って「老人」とみられるのは本意ではない。
    世の中の動きに関与することのなくなり世の中から忘れられた老人ではなく、生まれてこの方恋もして夢も持っていた途切れることのない歴史を持ち、それをいつでも振り返ることができる、いつでもその時の自分に戻れる「老人」という呼び名でくくら
    れるのではない「自分という人間」なのだ。
    過去のあの時の自分は今の自分そのものなのだから。思い出つまりは自分の歴史の中で活躍した自分は過去の誰かではなく今の自分なのだ。
    それを受け止めたり共感してくれる人や社会があったら体力は弱っていても「若き日から今までの歴史を持った自分」を自覚して生きることができるように思うのだが。

    ただ多くの歳老いた人々は自分の中にある歴史を振り返って今ではない自分に戻っても、それを表現することなく、だから当然受け止め共感してくれる人を持てず自分の中での振り返りだけになってしまい、「今だけ」を切り取られた老人になってしまうのではないだろうか。。


    そうやって「老人」となって埋もれてしまう事ににこの72歳の女性は現代の武器で抵抗した。
    こはれからの時代に先進的な役割を果たすべきITの一端が、歳を経た女性に力を与える素晴らしき副作用。
    主人公と彼女は時代を超越した恋人であることができた。
    情報社会の中でとかく途切れがちになるアナログな人間関係は少しだけデジタルに形を変えて息を吹き返すのかもしれない。

  • あとがきも含めてとてもすき

  • どの短編も割とセックスばかりで、んー。まぁ恋人同士はみんなするからわざわざ避けるのも変なんだけど、んー。

    スローグッドバイはIndigoの忘れて花束のPVを思い出した。お互い思いあいながらの別れは、別れが完全に不幸なものとして捉えられることがないから好き。

    ローマンホリデイとスローグッドバイは星4!
    この人の作品は服とか家具とかの描写が細かくて、とても情景が思い浮かべやすい反面、名前を知らないものが出てきた時に一気に話に入り込めなくなる感じがした。

    • moboyokohamaさん
      ローマンホリデー、私もこの10編の中で1番良かったと感じました。
      ローマンホリデー、私もこの10編の中で1番良かったと感じました。
      2020/08/29
  • みんなあったかくね〜

  • 作者の後書きがまた良かった○


  • 石田衣良の恋愛短編集ということで、期待していたが個人的にあまり好きではなかった。
    恋愛の性の部分にスポットが当たっており、貞操観念や考え方がそもそも共感しにくかった。
    他人の恋愛を覗いている気持ちになった。
    どちらかというとどの男性も消極的で、登場人物が被ってしまう話が多い気がした。

  • 恋の出会いと別れをつづった短編集。
    別れることが分かっていながら、最後のデートに赴く二人の心情を察して何とも言えない切ない気持ちになった。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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