- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087485424
感想・レビュー・書評
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現代が舞台の短編集。一部がゆるくつながっている連作短編という形式で、そういう形が好きなこともあり、一気に読めた。皆川さんの幻想小説の良いところは、現実をひたすら見つめた末に、幻覚が現れてくるところだと思う。見つめる現実はひたすら不毛で、大人なら、例えば泉の母のように「夢でうるおえばうるおうほど、昼の暴力に負けない力が増す」ことを知り、そういった対抗手段をとることができるけれど、なす術を持たない少女が、浮かび上がる甘美な幻覚を眼前にしたら、それに身を委ねるしかないだろう。人物のつながりもどこか歪んでいくラストの「骨笛」まで、とてもよかった。ただ、幽霊と生きている人物があっけらかんと会話するような奇想的なエピソードが幻想小説に入り込んでくるのは、どうも違和感があり、それが「薔薇忌」にもあまり馴染めなかった理由かもしれない。
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2013.01.17
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「骨笛」皆川博子
幻想的な日常を描いた短編集。クリーム色。
ふわ、もやっ、と漂うような読み心地の、互いに織り交じった7編からなる作品集。
「私」と「あなた」の言葉のやり取り。何だかとても夢心地で、、、そう、何故彼女は死んでしまったの・・・私はどこへ向かうのかしら・・・。
乱暴に総括するとこんな感じです。。。
各編に共通して流れているBGMがあるような、或は多面体をいろいろな方向から鑑賞しているような。不思議な輝きを秘めている作品群。
『噴水』という一編が一番印象に残りました。
沢山の登場人物達が互いに関わり合って物語を紡ぎ出しています。油断してるとこれ誰だったっけ?となるので、人物像を思い描いて読むとよいかと思いました(笑)(3) -
よく知らないおばの家でパイ食べる話がすっげぇ怖かった。
残り3話になってようやく係わり合いのある人たちの
それぞれの、時間軸の違う話だと気付いた。
夏生が好き。 -
雨の日は、水に沈む町を沼猫がよぎってく。それぞれが抱え絡み合う思慕と毒、少女期の終焉、こわばり。世間の生き方にそまれず、夢にだけ生きるものは、現実で死ななくてはならないから。
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短篇の連作。解説にも書いてあったが、読み進めるうちに誰が死者でどのようなつながりなのか区別がつかなくなる。
ぼんやり輪郭を失った中で、ウサギママと海外転勤の元締めの人が妙にキャラが濃かった。(2003.8.9)