怪談 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520262

感想・レビュー・書評

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  • 知る人ぞ知る小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の短編集。
    本書をただの聞き取りローカル物語集だと思ってもらっては困る。文学者であり、表現者であるハーンによって、精緻でかつ美しく変化を遂げた、見事な文学作品なのである。
    狂気とサスペンスで強い恐怖を与える諸外国のホラー作品に対し、「リング」「呪怨」といった日本のホラー作品は、静寂と悲哀によって醸し出される神秘的な畏怖であるとされる。この日本人に根付いた恐怖観を、外国人であるハーンが踏襲しているという事実に、尊敬の念を抱かずにはいられない。いやむしろ…この日本人の恐怖観がハーンによって作られたものではあるまいか…などと考えてしまう。
    「ろくろ首」や「雪女」という定番ものから、「人食鬼」といった聞いたことあるような無いような作品まで、多様な物語が楽しめる。一部で我々のイメージと異なる事実を目の当たりにする(ろくろ首の描写・正体等)のもまた一興だ。
    特にその中でも、「耳なし芳一」をおススメする。巻末解説を引用させてもらうが、かき鳴らされる琵琶の音、全身に経を記した異形の僧、迫りくる武士の怨霊…この「耳なし芳一」は、いわゆる映像美術的に“おいしい”作品のように思える。しかしなぜだろう。文章で読んだほうが、よりしっくり、より畏敬的で感じてしまうのである。文中には「ベンベン」などという音描写は一切登場しないのに?
    それもそのはず、この物語は盲目の僧芳一と、無念のまま滅亡した平家の怨霊が織りなす悲哀の怪談、という事実を忘れてはいけない。映像美、音響美などは必要ないのである。
    読む者を虜にするハーンの文才、古き良き民俗伝承の持つ美学を、ぜひ体感してほしい。

  • ある意味似たパターンの物語が続くのに、読み飽きないのは、抒情性もさることながら、ストリーリーテラーとしての能力の高さ。ほんの数ページの物語がちゃんと成立しいてるのもそれによる。怪談は日本が舞台ながら英語で書かれただけに、訳者によって味わいが違ってくるかもしれない。

  • この書籍は、日本名「小泉八雲」が日本で聞いたものを書いた「怪談」ものです。
    収録されている作品は、しっているものばかりです。

  • 再読本。外国人から見た日本の怪談。メルヘンでもミステリーでもなく。怪談として成り立っているのが不思議な感じ。日本が好きでいてくれたんだな。と、思うと何かありがたい。

  • 子どもの頃は怖くてぶるぶる背筋が震えたこのお話。
    今となってはお話の民俗的な部分や書いた人が日本人でない別の視点から日本の「怪談」というお話を描いたことといったものに関心がいってしまいました。
    日本人よりも日本人らしく日本のことを書けるのってすごいなぁと。
    「耳なし芳一」や「雪女」など昔を振り返りながら読みました。

  • 「小泉八雲」の日本名を持ちこの国の情緒と伝統を深く愛したハーンが、古典や民話を題材につづった怪談集。平家の亡霊に取り憑かれた盲目の琵琶法師「耳なし芳一のはなし」、吹雪の夜あらわれたまぼろしの白い「雪おんな」など、怪奇の中に美しい静けさの漂う名作17編を収録。

  • ハーンが描きたかったのは怖さではなくて哀しさなのだと思う。
    死してなお留まる平家の亡者や人外のものに成り果ててしまった鬼に対して、ハーンはやさしい。
    雪女にしても柳の精にしても、とても愛くるしい。

    作中の中で「なぞらえる」という日本語についてハーンが説明する部分がある。日本人が読んでもああ、なるほどそういう意味であったか、とひざを打ちたくなるような説明であった。

    全くハーンは日本人より日本人らしい世界人である。

  • ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の随筆集。
    ろくろっ首が印象深いです。

  • 読む Reading
    小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は日本の昔から伝わる怖い話を集めました。これは小泉八雲の「怪談(かいだん Horror Story)」の日本語訳(やく)です。

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著者プロフィール

原作:ラフカディオ・ハーン
一八五〇年、ギリシャ生まれの英国人。アメリカで新聞記者として活動したのち、一八九〇年、日本文化への憧れから、島根県の松江中学に英語教師として赴任。松江出身の小泉セツと結婚ののち帰化し、小泉八雲を名乗る。熊本五高・東京帝国大学などで教鞭をとりつつ、日本研究を海外に向け紹介した。著書に『知られぬ日本の面影』『心』『怪談』など。

「2019年 『BL古典セレクション③ 怪談 奇談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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