悪の華 (集英社文庫)

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レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087601978

作品紹介・あらすじ

1857年6月、発売と同時に検閲にあい、風俗壊乱の罪に問われた『悪の華』は、「きみは新しい戦慄を創造した」とのユゴーの絶賛をはじめ、フローベルなど多くの知友から賞賛された。第二帝政時代のブルジョア社会から忌避され危険視されたボードレールだが、彼の投じた「近代詩」への波紋はヴェルレーヌ、マラルメ、ランボーに、そしてロートレアモンへと拡がり、その後の世界の詩の流れを決定した。

感想・レビュー・書評

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  • 私はこういう詩人になりたかった2

  • 以下引用。

    XX「仮面」
       ルネッサンス趣味の寓意像
          彫刻家エルネスト・クリストフに

    見つめよう フィレンツェ風の優美さの この宝物を。
    筋肉ゆたかに波打った この肉体に
    聖なる姉妹、「気品」と「力」があふれている。
    この女、まこと奇跡の生んだ作品は、
    神々しいほどに逞しく、惚れ惚れするほどにかぼそく、
    豪奢をきわめたベッドにでも君臨して、
    大僧正の 王侯のつれづれを魅惑するのにふさわしい。

    ――また、ごらん 繊細で官能的なこのほほえみを
    そこに漂う「うぬぼれ」の恍惚感を。
    いわくありげな、ものうげな嘲るような長い視線を。
    薄絹ですっぽり包まれた、愛くるしいこの顔を。
    目鼻の線の一つ一つが勝ち誇ったように語りかける
    《「快楽」が私を呼び 「愛」が私に冠を授ける!》と。
    これほどの威厳をそなえた この存在に
    ごらん やさしさがどれほど気をそそる魅力をそなえているか!
    もっと近寄り、その美しさのまわりをめぐるとしよう。

    おお これは 芸術のけがれ! 致命的な不意打ちだ!
    神々しい肉体をもち、幸福を約束するこの女が
    首から上は 何と 双頭の怪物だとは!

    ――ばかな! これはただの仮面 人目をそらす仮装だよ、
    いかにも甘美な表情をつくろっているこの顔は。
    そして、見たまえ、これだ、むごたらしく引きつって、
    本当の首がここにある、本心をあらわす顔が
    いつわりの顔のかげにかくれてのけぞっている。
    可哀想な絶世の美女よ! おまえの涙の
    滔々と流れる河が 憂いに悩むわが心まで届いて来る。
    おまえのいつわりが私を酔わせ、わが魂は
    「苦痛」がおまえの目に湧き出させた波にうるおう。

    ――しかしなぜ泣いているんだ? この女、完璧な美女
    全人類を足もとにひれ伏せさせることもできそうなのに、
    どんな神秘な痛みが その逞しい脇腹を噛んでいるんだ?

    ――泣くわけは、まだわからないのか、彼女が生きて来たからさ!
    そしていまも生きているからさ! だが とりわけて
    彼女が膝までふるわせて嘆いているのは、
    明日も ああ! なお生きて行かねばならないからさ!
    明日も、明後日も いつまでも! ――われらと同じに!(p.61~63)

  • 倦怠、深淵、蛆、眩暈、焔のバリエーション。ダンテの地獄巡りさながらの現世巡り。ほくそ笑みも溢れる人間くささとむしろ滑稽な地獄。「書かれたものによってよみがえった悪は後の世の風俗を汚染するであろう」、それ。『死』編を締めくくる長編『旅』のパンチが凄まじすぎる。これがボードレールか。

  • 読み途中!
    ランボォよりはボードレールかな!

  • あんまりハマらなかった
    暗い

  • 読み物として詩をチョイスすることはあんまりないんですが、好きな評論家の方が推していた作品なので観賞。出版直後に秩序紊乱の罪に問われたという理由がそこら中に見られます(笑)

    真面目な話、表面的に見てこれだけキリスト教を皮肉ったり、聖書の教えに真っ向から反するような表現を連ねていれば、そりゃあ取り締まられるわなぁとも思いつつ、出版されたのが近世(19世紀)で魔女狩りのような扱いは受けないだろうと思われるとは言え、キリスト教圏においてこの作品を堂々と世に送り出すというのは、よほどの度胸がないとできないだろうなとも感じました。
    ただ、よくよく彼の世界を読みこむと、表面から感じられるただ単純な悪魔主義的な思想の裏に、至極敬虔なクリスチャンとしての著者の姿が見えてきます。どちらが著者の本当の顔なんだろう、という疑問が浮かぶこともしばしば。作品の中に取り上げられている聖書のエピソードを端的に一つの言葉や一人の人物名で表現して想起させるレトリックは素晴らしいです。
    それに加えて、古代ローマやギリシャの神話やエピソードもかなりふんだんに織り込まれており、ボードレールがあくまで緻密に、一つ一つの詩を生み出していったことが分かります。

    個人的に詩の「音」が好きだったのをいくつか挙げます。
    本当は、詩は一カ所だけを抜き取るようなことはしてはいけないのかもしれないけど。

    「ルーベンス、忘れの河、怠惰の園、
    愛をかわすわけにはいかない さわやかな肉の枕、
    けれどもそこに生命はあふれ 絶えず波立ち、
    空の中の風のよう、海の中の海のよう。」

    「ほがらかさにみちた天使よ、ご存知ですか苦しみを、
    屈辱を、悔恨を、すすり泣きを、倦怠を
    あのおぞましい夜また夜の とりとめのない恐怖が
    紙屑を丸めるように心を押しつぶすのを?
    ほがらかさにみちた天使よ、ご存知ですか苦しみを?」

    「子供とは、地図や版画が大好きなもの、
    全宇宙がその広大な食欲にひとしく見える。
    ああ!ランプの下で世界は何と大きいのだろう!
    思い出の目に世界は何と小さいのだろう!」

  • 詩という文学空間の可能性を最も早く提示し、近代詩の父とされるボードレールの代表作。特にフランス印象派の詩人たちに多大な影響を与えた。刺激的な言葉たちの奏でるメロディはありとあらゆる混沌に満ちている。猥雑なパリの路地裏で人生の苦悩にまみれあてどなく彷徨する作者の姿が目に浮かぶよう。

  • 見てはいけない世界を見てしまった

    この詩集、丸々一冊がデカダンスの象徴

    退廃的で耽美な世界観にやられました
    春にはあわないけどね

  • 19世紀フランスに生まれた詩人ボードレールの生涯唯一の詩集です。
    「読者に」の序詩から始まり,末尾の「旅」に終わる壮大な精神旅行に読者を誘います。
    タイトルからは<<ネガティブ>>なイメージが連想されますが,恋愛や情景等の美しい内容も含まれています。また,各詩ごとに脚注が書かれているので,とても読み易い構成になっていると思います。
    詩に興味がある方も無い方も,本書を手にとって見ることで,人間について深く考えさせられる良い機会が得られると思います。

  • 確か寒い時期に読んでいた。体に良くないよ。精神的には核爆弾。真似は止めたほうがいい。読んでもおかぁさんには言わないほうがいい(笑)。しかし、ツンツンした毒牙の攻撃的前衛詩。このジャンルでは唯一無二、単純にいう「天才」です。

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