猫物語 ドクター・ヘリオットの (ドクター・ヘリオットシリーズ) (集英社文庫)

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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087604054

作品紹介・あらすじ

威厳に満ちたアルフレッド、人の集まるところが大好きなオスカー、迷子の子猫オリーとジニー、豚に育てられたモーゼス、死の淵から何度も甦ったフリスクなど、気まぐれだけど愛情深い猫たちとのやりとりを軽妙に描く。美しい自然あふれる英国ヨークシャーを舞台に、50年の獣医生活によって育まれた数々のお話から、ヘリオット先生が選んだとびきりのお気に入り全10篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • こんなに面白い本を、なぜこれまで読まずにいられたのだろう?
    巡り会いの運がなかったとしか言いようがない。

    著者のジェームズ・ヘリオットは1916年スコットランド生まれ。
    ヨークシャーで獣医さんをしていた頃の話を、50歳を過ぎてから執筆し、そのほとんどがベストセラーとなり、テレビシリーズ化されていたという。
    十の短編が収められたこの「猫物語」は、95年に亡くなった彼の最後の作品であるらしい。
    ということは、今後作品を逆にたどりながら読むようにと言うことなのだろうか。
    何にせよ、楽しみが増えたのが嬉しい。

    大変個性的で愛らしい猫たちがどの作品にも登場している。
    わたしが特に気に入ったのは、「オスカー」だ。
    深い傷を負った瀕死の猫が、ある日ヘリオット先生の元にやってくる。
    一か八かで手術に踏み切り、その後も世話をし続けると、猫はやがて快復していく。
    オスカーと名付けて可愛がっているが、なぜかときどき家出をする。
    その都度誰かに抱かれて家に戻ってくるが、ある日ヘリオット先生はオスカーの家出の謎をつかむ。
    それは、オスカーは人間の集会が大好きで、そこに参加して猫的教養を積んでいるらしいということ。
    何しろ町の集会のスケジュールを、すべて把握しているというのだから、驚いてしまう。
    ところがある日、もとの飼い主という家族が現れ、泣く泣くオスカーを戻して悲嘆に暮れる。
    でもちゃんと、幸福なラストが待っています。
    先生は、奥様とともに、オスカーに会いに行くのですね。

    優雅で、どことなく尊大で、飼い主の愛情をいっぱい受けて育つ猫たち。
    どの猫とも、その距離を縮めていくときのヘリオット先生のわくわく感が伝わってくる。
    町の小さなキャンディー屋さんの看板猫・アルフレッドは、店の主人とまるで双子のように身も心も呼応しあっている。
    農場のなかの風変わりな家に住む紳士は、迷い猫エミリーと暮らすようになってから毎日が楽しくてたまらない。
    とりわけ面白いのは、ヘリオット先生の家に入りそうでなかなか入らない、二匹の野良ちゃんとのやりとり。
    辛抱強く餌やりする奥様にはなつくのに、必死で捕獲して毛玉を取り除いてあげる自分にはまるでなつかない。
    悔しがる先生の言葉がおかしい。『自分は猫のアイドルなのに』。

    まだ抗生物質も生まれていないし、薬も今ほど気の利いた物はなかったかもしれない。
    治療が困難をきわめることも稀ではなかったろうと想像できる。
    でもそれを上回る、猫たちをとりまく人々の、なんという温かさだろう。
    読後の幸福感は、たぶんそこからくる物かもしれない。
    短編の最後はクリスマスにまつわる話で、これもまた涙を誘う。ここに登場する女性の、なんという優しさだろう。

    ヘリオット先生が、現実に出会った猫たちのお話だそうで、つまり50年代は現実がそのまま物語になり得る時代だったということなのでしょう。
    最初に8ページを割いて「作者からのメッセージ」があり、そこを読むだけで幸福感に包まれます。
    獣医生活50年以上にも及ぶ歳月のなかで、この仕事を後悔したことは一瞬たりともないと言われるのですから。

    猫好きなひとはもちろん、そうでもないひとにもお勧めの一冊。
    だって、猫がひとを育ててくれるのだそうですよ。

    はじめまして、ドクター・ヘリオット。
    わたしはこれからあなたの作品をたどります。
    どうぞよろしくお願いします。

  • 実家の本棚にあったので読んだ。
    とても面白くて一気に読めた。
    どの猫ちゃんも可愛かったけど最後の話のバスターもママ、デビーに心惹かれた。

  • 猫好きには最高!

  • 猫の細かな仕草や行動が猫好きにはたまらない
    ヘリオット先生の人間性にも惹かれる

    • workmaさん
      この本のこと知りませんでした。ネコ好きなので読みたくなりました(=^ェ^=)
      この本のこと知りませんでした。ネコ好きなので読みたくなりました(=^ェ^=)
      2021/12/20
    • ろもこさん
      少し古い本なので見つけるの難しいかもですがぜひ!ヘリオット先生の本は他にもあるのでそちらもオススメです!
      少し古い本なので見つけるの難しいかもですがぜひ!ヘリオット先生の本は他にもあるのでそちらもオススメです!
      2021/12/20
    • workmaさん
      ろもこさん
      図書館で探してみます♪ありがとうございます♪
      ろもこさん
      図書館で探してみます♪ありがとうございます♪
      2021/12/20
  • この本はヘリオットさんの作品の中から、猫にまつわる物語を集めたもの。
    したがって、いくつかは既読だったが、今まで読んだことの無いものも結構有って楽しめた。
    私は個人的には犬派で、嫌いなわけではありませんが、いままで猫を飼った経験はない。でもそんなことはお構いなし。相変わらず繰り広げられる、暖かなヘリオットワールドに包まれて、幸せな気分にして貰える。
    そうそう、最後の短編バスターはクリスマスを舞台にした、とても素晴らしい作品。丁度イブの日に読みおえました。

  • タイトル通り。獣医ドクターヘリオットの猫に関するエピソードいろいろ。

    個人的には最初の菓子屋の猫アルフレッドと、クリスマスの猫バスターの話が好き。

    どの猫も個性的で野性的だったり、愛情深かったり、いろいろ。

  • 獣医として、一人の人間として動物達との距離感がすばらしい。読みやすく、また読んでる者を飽きさせない文章力だと思います。

  • 獣医のヘリオット先生が書いたいくつものお話の中から10篇を収録した本。

    威厳に満ちたアルフレッドや迷子猫のオリーとジニー。
    にゃんこに纏わるお話がもりだくさん!
    ヘリオット先生自身もにゃんこが大好きで思わず「そうそう!」と共感してしまう。
    例えば

    「猫が私の顔に顔をこすりつけてきたり、注意深く爪を隠した足で私の頬に触ったりするのを私は経験している。私から見るとそういうしぐさは愛情の表現なのだ。」


    そうそう!
    にゃんこは手の甲を差し出すと自分も頭をこすり付けて挨拶をしてた。
    抱っこすると、爪を出さずに髪に手を伸ばして髪を梳いたりするおマセな面もあったなぁ、なんて思い出した。
    そんな風に思い出せるほのぼのとしたお話もあれば、にゃんことの哀しい別れのお話もある。
    でも読んだ後に必ずほっと息をつけるような。
    そんな温かい気持ちになれる1冊だと思います(*^_^*)

  • 獣医である作者のエッセイに近いのかなぁ?

    牧場の猫、薪小屋の猫、社交的な猫、色んな猫たちとの関係が書かれています。
    あぁ猫ってなんて素敵なんだろう、とニコニコします。

    猫、可愛いなぁ。可愛いよ、うん。

  • 文庫本を買うのがブームだった中学生の頃、購入した小説。
    個性的な猫たちが出てくる、ノンフィクションの短編小説。

    お菓子屋の猫、アルフレッド
    社交家の猫、オスカー
    逃げ足が速い猫、ボリス
    2匹の山猫、オリーとジニー
    紳士の家に住みついた猫、エミリー
    灯心草の中で見つかった猫、モーゼフ
    死の淵から何度も蘇った猫、フリスク
    ボールを拾ってくる猫、バスター

    一番ビックリしたのはオスカーの話。
    こんな猫ちゃん、近所にもいればいいのに…と、猫好きの私は思います。

    面白かったのは、ボリスかな。
    先生も大分苦戦したようだから(笑)

    アルフレッド、それからオリーとジニーの話は可愛いくて好きですが、フリスクの話が悲しいけれど一番好きです。


    ラストに載っている、角野栄子さんのお話にも、ホッコリした気持ちになれました。

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