- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087604924
感想・レビュー・書評
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ブレア島の別荘で、ヴァカンスを送る ブルジョワ一家 Chassagne 家の屋敷に、一家の長男 Philip の寄宿舎時代の同級生だという Boris と名乗る男が現れる。
Philip は、いつまでたっても屋敷に姿を表さないが、愛想よくて、骨身を惜しまない Boris に、長女の Vanessa や、父親は、すっかり心を許してしまい、Boris は、家族同然、屋敷に居座るようになる。
家族の誰もが知らない Philip の秘密を知っているVanessa の夫 André-Pierre は、Boris に危険な匂いを嗅ぎつけるのだが、要領よく立ちまわる Boris を前に、手をこまねくしか術がなかった。
先に読んだ Serge Joncour 氏の著作である「L'homme qui ne savait pas dire non」 や「L'idole」 は、普段着タイプのフランス語で描かれた、諧謔味のある小説だった。 しかし、2003年に、フランス国営テレビ局『France Télévisions』の視聴者代表により選ばれる『Prix France Télévisions(フランス・テレビジョン賞)』を受賞し、Gilles Paquet-Brenner 監督で映画化された本書は、先に紹介した2作とは、全くトーンの違う、エレガントなフランス語で描かれた、サスペンスの香り高い小説である。
一体この男は、何を企んでいるのか、それがいつ明らかになるのか・・・と、読者の不安を、少しづつ増大させ、緊張感たっぷりに進行する中盤までの筆致は見事。
奇をてらったラストの展開は、好みにより、評価が分かれるのではないかと思われたが、「L'homme qui ne savait pas dire non」 や「L'idole」 の著者の作品だとは信じがたい、セルジュ・ジョンクール氏の多才さが感じられた一冊だった。
【こんな人にお勧め】
エレガントなフランス語で描かれたサスペンス風な小説を読みたい方。 独創性のある小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 3.5/5
フランス語難易度 : 4/5 (易<難)
読みごこち : 4/5 (難<易)
本レビューは、以前ブログ(http://bibliophilie.blog3.fc2.com/blog-entry-1255.html)にアップした「U.V.」のレヴューを一部修正したものです。邦訳は未読。詳細をみるコメント0件をすべて表示