黒い睡蓮 (集英社文庫)

  • 集英社
3.72
  • (21)
  • (52)
  • (30)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 440
感想 : 51
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087607406

作品紹介・あらすじ

『彼女のいない飛行機』で注目を集めた著者が贈る、叙述ミステリの傑作が登場! 三人の女性が語る三つの殺人事件。その真実とは? 読者を謎の迷宮に誘う、仏ルブラン賞・フロベール賞受賞の話題作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 楽しみにしていた一冊を読み終えました。

    まさかまさか(⊙⊙)!!!!!の驚愕のラストが待ち受けていました。

    手にして良かったと思える見事な叙述ミステリ作品。

    なのに評価は厳しく☆4つ、理由は自分史上最高傑作だと思っている「殺戮にいたる病」(我孫子武丸)と比較してしまったから。

    あの衝撃と比較してしまう程の本作は間違いなく本物です。

    ※この時点での評価は上記の通り☆4つ、感想を書き終えてやはり本作には☆5つが相応しいと再評価しました。

    物語の舞台はフランス、ノルマンディ地方の小さな村ジヴェルニー。

    そう、タイトルである「黒い睡蓮」、ジャケットに描かれた「絵」からも想像出来るクロード・モネが終の住処として移り住み、「睡蓮」を描きまくった場所です。

    ジヴェルニーの村を忠実に描いたのみならず、モネに関する記述もリアルに描かれています。

    ジヴェルニーとモネについては「ジヴェルニーの食卓」(原田マハ)を読み終えていた点と、モネの「睡蓮」を昨年見に行った体験がある為、私自身にはより魅力的な作品でありました。

    そんな村で見つかった他殺死体、被害者は村に住む眼科医のモルヴァル。

    こんな感じで幕を開けた本作、主人公はジヴェルニーに住む老女「わたし」。

    そう、本作は「わたし」が語る視点、ジヴェルニーの小学校の美人教師ステファニー、そして村の小学生女児ファネットの3人の視点で描かれ進んでいきます。

    13日の時間軸の中に仕組まれていた謎、物語のラストでは時間軸の謎が解き明かされ、その瞬間に読者は走馬灯のような追体験を体感させられます。

    物語のラスト、わたしは剥げた金縁の鏡を覗き込みますが、そこに映るのはファネットのにこやかな笑顔であり、ステファニーの睡蓮のような目。
    ※完全なるネタバレです^^;


    説明
    内容紹介
    『彼女のいない飛行機』で注目を集めた著者が贈る、叙述ミステリの傑作が登場! 三人の女性が語る三つの殺人事件。その真実とは? 読者を謎の迷宮に誘う、仏ルブラン賞・フロベール賞受賞の話題作。
    内容(「BOOK」データベースより)
    モネの“睡蓮”で有名な村で発生した、奇妙な殺人事件。殺された眼科医は女好きで、絵画のコレクターでもあった。動機は愛憎絡み、あるいは絵画取引きに関する怨恨なのか。事件を担当するセレナック警部は、眼科医が言い寄っていた美貌の女教師に話を聞くうちに、彼女に心惹かれていく。一方、村では風変りな老女が徘徊し…。『彼女のいない飛行機』で人気を博した著者の傑作ミステリ。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    ビュッシ,ミシェル
    1965年生まれ。ルーアン大学で教職につくかたわら、小説を執筆。2006年に『Code Lupin』で作家デビューし、ほぼ年一冊のペースで作品を発表。2011年刊の『黒い睡蓮』でルブラン賞、フロベール賞などを受賞、実力派としての地位を固める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • なるほど、の一冊。

    実に読み応えのあるミステリだった。舞台はモネの「睡蓮」で有名な村。
    ある日、浮気症の絵画コレクターが殺害された。

    犯人はやっぱりこの村の人間か…動機は…愛憎絡みかと、狭いコミュニティでの人間関係、人間模様を描きながら、三人の村に住む女性、三つの手がかりを軸に展開される犯人探し。

    なんとなく気づいてしまった部分はあるものの、次第にピントが合っていく感覚、この仕掛け、真相には素直になるほど、と思えた。

    随所で感じられる村の情景はもちろん、ちょっぴりときめき、可愛らしさ感じるこのラストも良かったな。

  • モネが睡蓮を描いたことで有名なジヴェルニーの村。
    風光明媚な地で、殺人事件が起きる。
    三人の女が語る村の真実とは…
    「彼女がいない飛行機」で注目されたフランスの作家のムードあふれる作品です。

    水車小屋に住む老女「わたし」が語り始めるジヴェルニー。
    「ひとり目は意地悪でふたり目は嘘つき、三人目はエゴイストだった」そして、三人の女のうち脱出できるのは一人だけ、と。
    モネが暮らし、庭と池を作り、睡蓮を描き続けた小さな村。
    今も世界中から観光客が訪れる。
    景観を守るために大きな変革は出来ず、他にこれといって産業もない。住民にはそんな閉塞感があったのですね。

    眼科医が殺され、新任の署長セレナックが捜査にあたります。
    美しい小学校教師のステファニーに魅了されるが、何か言いたげな態度に戸惑う。

    11歳のファネットは絵が得意。
    財団の国際絵画コンクールに出品を目指していたが、身近で事件が起こり…?

    犬を連れ、誰にも気にかけられずに村を歩き回る老女。
    様々なものを見てきたその語りは陰影を感じさせ、謎めいた描写に引き込まれます。
    何かおかしいような気がして、途中行きつ戻りつしていたら、一部は見抜くことが出来ましたが。
    え、そこも?!というトリックの重ね技。
    さらに、意外にハッピーエンドになりそうなのがほのかに嬉しい。

    読んだのはだいぶ前ですが、全体をはっきり覚えているんですよ。昏くしっとりした雰囲気が忘れられない余韻を残しています。


  • モネの「睡蓮」で有名なフランスのジヴェルニー
    ここを舞台にしたミステリー
    残念ながら、近くは通ったもののジヴェルニーには行ったことがない
    観光地化して俗っぽいのを覚悟の上、いつか行きたいものである
    そう、ジヴェルニーを舞台にしたミステリーということで楽しみにしていた…

    始まりがつかまれる!
    ある村に、3人の女がいた
    3人は歳も違う、環境も違う、そう、それぞれとても違っている
    ただ1つの共通点を除いて
    それは秘密でもある、ある「夢」だ
    そこは誰もが訪れたいと願う村
    そこで数時間散歩をするためにはるばる海を越えてやってきたいと思う村…
    そう、そんなジヴェルニーを出ることを夢見ている

    こんな感じで、はじまりはじまり〜♪

    ミステリーの割に警部やその部下達が割とゆるい
    前半はあまり緊迫感もなく、のんびりジヴェルニーを散策する旅行者のような気分で読める

    狭い村である
    住んでいる人は毎日村民以上の多くの押し寄せる観光客にたまったものじゃないだろう
    当然景観を損ねることは禁じられ、かなり窮屈そうだ
    登場人物も限られる
    明るい柔らかな太陽光、キラキラしたジヴェルニーにこの閉鎖感の暗い圧
    この対照的な描写が、これから何かが起こりそうな良い演出となっている
    そう狭い村、逃れられない空間、人の目、だからこその悲劇が起こるのだ

    後半から展開し、まずは仕掛けのネタの一部が明らかに…!
    そういうカラクリか⁉︎
    ここまではまぁまぁ楽しめたが…

    でもこの仕掛
    何か釈然としないし、そのうちズルくないか…と

    綿密に計算されていることを証明するかのような最後のこれでもか…的な部分に冗長感が否めない
    どうも緊迫感に欠けるし、キレも悪い
    ゾッとするような場面も、心臓が凍る感覚もあまり味わえず
    殺人動機も…嫌いなタイプ(笑)
    個人的にミステリーとしてはあまり好みではなかった(すみません)

    ただ、最初のつかみと、仕掛けがわかった瞬間…
    ここはなかなか面白いし、わかった上での再読も二度楽しめて良いかもしれない

    Googleアース片手にジヴェルニーをバーチャル散歩しながら楽しめたのは良かった
    原田マハさんの「ジヴェルニーの食卓」も再読したくなった

  • モネの描く印象派絵画そのままの、明るい光に満ちた美しい村、ジヴェルニーで起こった殺人事件。

    物語は、犯人探しのミステリと、村に住む三人の女性の日々が交互に描かれて進む。
    絵画への情熱と才能にあふれる少女、ファネット。
    殺人事件の捜査にあたるローランス警部と、ひと目で恋に落ちた美しい小学校教師、ステファニー。
    そして村の中で起こる出来事をいつもそっと見つめている、“魔女の水車小屋”に住む老女。

    プロローグで、「三人のうち逃げられるのはひとりだけ。あとの二人は死ななければならない」と語られた三人がどうなるのか、次の犠牲者になってしまうのか、それとも…


    いやぁ〜、面白かった!!
    プロローグから、明るく美しい風景と、その裏側の暗い運命の予感の対比に引き込まれます。

    ジェイムズおじさんを殺した犯人はヴァンサンだと思っていたけれど、ラスト近くの種明かしまで、子供達の名前が全員あだ名だったとは思いもせず。
    そして、老女となり真実を知ったステファニーが、五十年近くも経ってローランスと再会できるなんて、なんて粋なラストじゃありませんか!


    読了して、あらためてsanaさんの感想コメントにうなりました。
    ネタバレせず、この本の魅力を伝えて下さって、本当にありがとうございました!

  • 8割型、メリハリなく淡白だな…と思ってたら、残り2割でおぉ~となった。最後とこれから、今までの辛さが報われて幸せになれるといいな…。
    登場人物の一部が性格が捻れすぎていて嫌悪感がすごかった。

  • 読み物として普通に面白いが取り立てて絶賛するほどの作品ではない、と終盤近くまでは読んでいたが、なかなかの変化球作品だった。このあたり訳者あとがきと似たような感想で反則すれすれ?かもしれないが、それを補って余りある謎解きだった。読み終わった後で何度か読み返しました。

  • 途中から薄々トリックが読めたけれど、凝った作りと、結末へ興味を引っ張る内容で、面白かった。
    思わせぶり過多な書き方や、セレナック警部の人物造形が、如何にもフランス人らしいと思った。
    なんでそんな一目で惹かれあっちゃうの?とか、警察官と被疑者なのに公私混同がやばくない?とか、銃で脅されたのに後から逮捕に行かないの?とか、結末の再会が妙に感動的に描かれてるところとか(彼は彼女を見捨てたのに)、私的にはイマイチ納得できないところもありつつ、全体的には面白かった。

  • あなたは真相に辿りつけますか?
    フランスのミステリ作家らしい序文の問いかけ。興味唆る謎の掲示。
    圧倒的なトリック炸裂に騙された読者は感嘆するであろう。残念ながらわたしは、作者の企みに気付いてしまった…ただ、その先に待つ予想出来ない感動に、胸が熱くなるでしょう。

    海外の作品にしては格別読みやすく、日本が出てくることもあってか、理解が追いつくレベルでの情報量。画家や絵に関する知識蘊蓄を苦にすることはない。

    アンフェアなのか?そうは思わない。フェアな上で読者に大掛かりなトリックを仕掛けてくる。

    黒い睡蓮読書会をおこない、漏れのない伏線、作者の巧みさに気づく。よって評価星5つとした。
    はのさん、真尋さん、窓辺さんに感謝。

  • こんなのあり!?あり!!あり!!!

    何を書いてもネタバレになってしまう、最高に面白い。じっくり読み進めてこそ怒涛のラストが高まる。

全51件中 1 - 10件を表示

ミシェル・ビュッシの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンソニー・ホロ...
ピエール ルメー...
ケイト・モートン
フランシス・ハー...
奥田 英朗
劉 慈欣
米澤 穂信
クリス ウィタカ...
ケイト・モートン
セバスチャン・フ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×