- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087715699
作品紹介・あらすじ
東日本大震災後。父の訃報を受け、南太平洋の島から故郷に一時帰国した彩実。放射線被害に対する海外の情報との温度差、保守的な家族たちに違和感を覚えるなか、奇妙な風土病の噂を耳にして…。渾身の遺作。
感想・レビュー・書評
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未完の遺作。反原発ムーブや同調が基本の日本のムラ的社会に対する問題定義は「分かる」と思う反面、いまやすでにその方面の活動化が発する「典型的」な言葉であるとも感じた。それだけに、この小説をどう完結させるのか興味深く(「典型」からの脱出はありえるのか等)未完であることが惜しまれる。
著者の死後書かれた編集部の「解題」がこれまたぐっときた。閉鎖的な日本を飛び出し、海外を変遷した著者が余命宣告後、家と土地のある日本、故郷の地を踏んだ時にみせた喜び。
「自由」と「糸の切れた凧」ーその表裏一体。
「自由に生きる」ことの難しさを思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
坂東さんの遺作で未完なのだとか。
原発問題、どこか他人事のように感じている自分が。でも間違いなく自分に降りかかってくる問題なのだなと思い知らされる。 -
最後まで書かれていたならどんな結末だったのだろうか?
気になる。 -
大平洋の小島から帰国した彩実は「思考停止状態に陥った」日本を憂います。彼女は坂東さん本人のように思えます。
絶筆となりましたが、最後まで坂東さんは力強い作家でした。 -
2014年に病死した坂東眞砂子の未完の絶筆。
作者と重なる南太平洋のバヌアツに住んでいる彩美は、父の死の知らせに帰国するが、東日本大震災後の福島の放射能の影響に怯えるが、平気でいる周りの人々や日本の「慣性の法則で動く」社会に違和感を感じる。
バヌアツへ帰る直前に舌癌が見つかって手術を待つところで、執筆は終わっているが、この小説をどう終わらせたかったのだろう。 -
③/62
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遺作というので手にしました。正直怖かったです。あの震災後の日本を外側から見ている気がしました。
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昨年亡くなった坂東さんの遺作です。
物語の舞台は、
東日本大震災後原発事故に見舞われた東北の架空の町。
日本を離れ南太平洋のバヌアツで暮らす主人公の女性が、
実父の訃報を受けて、一時帰国します。
海外メディアが報じる放射線被害への危機感と反比例するような
国内の生活ぶりをみて、違和感を覚えます。
昔から伝わる奇妙な風土病も奇形の生物や作物も
主人公の恐怖感をあおりますが、
そのうちに主人公もガンの宣告を受けます。
そういえば、現実問題の
あの原発事故後の放射能汚染問題はどうなったのでしょうか。
のど元すぎれば熱さを忘れる、ではないですが、
一時のようなアツい報道もなく、
今現在放射能問題はどうなっているのか、
無知な私ははっきりとわかりません。
坂東さんは病床にありながらも
この作品の執筆につとめていました。
作品が中途はんはに終わっているのはそのためです。
この作品には、
「癌細胞が増殖していくように、物語も崩壊へ向かっていく」という
イメージがあります。
物語の終わりに何が見えるのか、
読者にお任せ、なのだそうです。
坂東さんが病に侵されながらも
伝えたかったことを
この作品から考えていきたいと思いました。 -
坂東さんの遺作。原発事故後の放射能被害をテーマにしてるようだが、主人公が手術前に絶筆となる。数多くの伏線は生かされないままで中断。面白い観点もあったので惜しいと思うが・・近未来として実際と切り離したのはどうかなぁ~むしろ勿体ない・・でも坂東さんに社会派は似合わないし・・
おそらく構想の3分の1かな。未完なので中途半端は仕方なし。好きな作者の一人だったので残念です。