田園発 港行き自転車 上

著者 :
  • 集英社
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716047

作品紹介・あらすじ

富山の滑川駅前に残された一台の自転車。秘密を遺したまま逝ってしまった父。十五年後、父の足跡を辿るため、娘の真帆は、自転車で小さな旅に出る…。予期せぬ出会いが待っている、傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 久々の宮本輝作品。やはりいい。宮本さんが、長い間心の病と戦いながら筆をとってきたのは有名な話。苦しんだ分だけ、人を優しく深く描くことができるのだろう。19の時「青が散る」と出会い、ずっと読んできた宮本作品だが、私自身も鬱を潜り抜けてからは初。なんだか見えてくる風景が違う気がする。
    煌めく都会の渋谷。美しい古都京都。雄大な自然の富山と舞台は流れていく。
    下巻を読み終えたら、未読も含めて、宮本作品にどっぷり浸ろうかな。

  • 人生の中でいくつか訪れるであろう分岐点。誰と出会い、誰と別れ、誰と共に行くのか。富山の田園風景を背景に自転車や徒歩で進んでいくこの物語は様々な人の分岐点や交差点を描いていて、個人的に地図のようなお話だと感じた。大きな一枚地図に登場人物が立っていて、わたしはそれを上から見ているのだ。それぞれが自分の意思を持って進んで行くのだけど、なかなかこちらの思うようには動いてくれないものだからハラハラする。それでも風景は美しいし、人々はあたたかい。日本の四季は素晴らしく、それを表現する日本語は綺麗だと改めて思わせてくれる一冊。

  • 久しぶりにたっぷりとした長編を読み始めた感じがする。わくわくするところで続きへ。

  • 4月。桜。新年度ー。

    何かと心躍る季節のはずが、気がついたらもう5月です。

    職場でも組織変更があり、マネジャーとして、新たな仕事を、新たなメンバーとともに担うことになりました。

    でも、新しいことだらけの環境で気持ちは焦るばかり。まったく思い通りに進まない仕事の山と慣れない人間関係。早朝から深夜まで会社で働き、週末は家族とまともなコミュニケーションをとることもできずに自宅で働く…。

    目の回るような日々に、だんだんと息苦しさを感じ始めた中で迎えた1週間のカナダ出張。

    出版されたばかりの宮本輝さんの最新作『田園発、港行き自転車』をスーツケースに入れたのはまさに運命だったのではないかと思います。

    東京での生活に馴染めず疲れきった二十歳の女性が故郷富山に戻り、そこで本来の自分を取り戻しつつ新たな目標を見つけて再び立ち上がっていく。他にも、決して順風ではない運命を呪うことなく、自分が為すべきことに対して前向きに誠実に向かい合って生きていく人々が織りなす群像劇です。

    全編を通して宮本輝さんが人間に注ぐ視線の何と暖かいことか。

    自分にできる精一杯のことを、ひたすら誠実に、一つひとつ着実に積み上げていく以外に何ができる。

    誰かと比べて、自分で自分を苦しめることに何の意味がある。

    なりたい自分になれるよう、今自分にできることに100%集中しよう。先は長くとも焦らなくてもいい。

    自分は理想と現実のあまりにも大きなギャップに苦しんでいたんだと気づきました。

    易きに流され歩みを止めてはいけませんが、一歩ずつでいいから信じる道を自分なりのやり方で進んで行こうと思います。

    この本に救われました。心からお礼を言いたいです。

  • 心が震えて、揺さぶられ、涙が何度も出そうになった
    人には必ず苦しいこと、つらいことが訪れる
    だからこそ、幸せになると信じていくのだと
    なんどもなんども励まされていたように思う

  •  冒頭から富山の素晴らしい景観が語られ、行きたくなります。
     ゴッホの『星月余』の絵を連想させる夜景や、可愛らしい赤い愛本橋見てみたい。
     内容は不倫が絡んだドロドロしたものなのに、それを上巻ではあまり感じなかったのは、富山の自然と、人物像によるところが大きい気がします。

  • 2020.9 とにかく長い。情景がゆったりしっかり描かれすぎで、なんともご都合主義のしまりのないお話でした。
    ただ黒部へは行ってみたくなりました。

  • 物語の主人公が各章ごとに変わっていくが、それぞれが富山の自然の元で人生を歩み、互いに繋がっていく話の展開は、さすが宮本輝さんだと思った。
    富山の田園風景や漁港の雰囲気が肌で感じられ、夏と冬の富山に行きたくなった。
    漁港沿いをサイクリングしたら、気持ちいいんだろうな。夕日の当たる田園風景は、さぞかし綺麗なんだろうな。
    黒部川に沿って歩きながら、立山連峰を見上げてみたい。

  • 母親が富山出身で、幼い頃から何度も訪れている富山が舞台のお話。
    読むのにえらく時間がかかってしまったけど、富山のあちこちの風景が浮かんでくる内容でした。
    さぁ、下巻も楽しみ。

  • 富山に住んでいる事が誇りに思えてくる設定でしたね。
    人は、生まれてきた瞬間から、何か大きな大きな繋がりの中で、生きている・・・年を経てそう感じる事が多くなるけど、まさにそんな感じのストーリー展開。
    平岩惣吉さんが、かっこ良すぎる~

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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