義貞の旗

著者 :
  • 集英社
3.37
  • (1)
  • (9)
  • (16)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 97
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716290

作品紹介・あらすじ

後醍醐天皇方として鎌倉幕府を滅ぼし、のちに足利尊氏・直義と激闘を繰り広げた新田義貞。鎌倉末〜南北朝時代に歴史の表舞台を駆け抜けた『太平記』の雄、その劇的な生涯を描ききった傑作歴史小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 太平記を新田義貞の視点で描く。
    歴史的には敗者であるが、後醍醐天皇、新田義貞、楠木正成、北畠顕家、大塔宮護良親王と、南朝方の方に、悲劇的な英雄が多いと思うのは、判官贔屓なのだろうか。
    新田義貞は、やはり純粋に大塔宮に心酔し、帝による新政を支えるべく立ち上がったのであろう。無骨ではあるが、純粋で魅力的な武将である。
    北条の配下でありながら、北条を裏切り、結局武士の政権を維持した足利はやはり好きにはなれないかなぁ。

  • 多くの人々は鎌倉幕府末期の得宗専制には失望し、御醍醐天皇の建武の新政に期待したが、すぐに失望する。後醍醐天皇は人々の期待に応えられなかったが、動機からしてギャップがあった。『義貞の旗』は端的に指摘する。「万民のために地上の幸福を実現することではなく、帝がこの国の主だということを万民の脳裏に刻み込むこと」(291頁)。

    ここに後醍醐天皇や南朝史観の矛盾がある。後醍醐天皇は宋学のイデオロギーの下に倒幕を進めた。鎌倉幕府末期は得宗専制の悪政があり、それを倒すことは天命思想、易姓革命の思想を持つ宋学とマッチした。この天命思想、易姓革命の思想は天子に徳がなければ、徳を持った人物が代わることを正当化する。天皇の支配も絶対ではない。万世一系ということに価値はなく、徳のある政治をしたかが問題である。

  • 『歴史に名高い新田義貞』
    群馬県民なら皆知っている上毛かるたの札の一つに、新田義貞公がいます。
    新田荘もそう遠くなく、私にとっては親近感のある人物。
    …なのにあんまり評価が高くなくて悔しい思いもするのですが…、この一冊は晴らしてくれた気がします。

    義貞公をみていると、もう一つ『雷と空風義理人情』という札も思い出します。
    群馬の風土と県民性を謳ったものです。

    本作の義貞公、大塔宮のために尽力し、足を引っ張られながらも最後まで南朝のために戦った義理堅い人柄が描かれ、なんだか報われた気分になりました。
     べらんめえ口調で快活なキャラクターもなんだか親近感。
    群馬弁は江戸弁に近いですし、陽気で明るくサッパリした県民性と言われています。(ヤンキーっぽくて怖いともいうけども…)
    中世の時代にどうだったかはわからないけれど、風土が県民性を育てるなら新田勢も開けた性格をしていただろうなあと思ったり。
     
     それと、悲運の武将とか死に様がダメだとか可哀想とか言われるとなんだかモヤモヤします。
    あの混沌とした時代の中、南朝の期待と信頼を一身に背負い、真っ直ぐに応え続けた骨太な人物じゃないのかな…と。
    同郷の贔屓目もたっぷりとあると思うんですけど、嬉しい作品でした。

    また、同作者の「道誉と正成」ではまったく違う評価であって…視点が変われば見方も変わるんだよなと改めて思いました。
    西と東の違いも好きなんだよなあ。


    …余談だけれど、鎌倉・稲村ヶ崎に行くといつも「義貞公…ここを行ったのか…」と感慨深くなります。
    なにせ海無し県、海のことは全くわからないし、興奮したり怖かったりいろんな感情が湧いてくるので、新田勢の皆さんはどうだったのだろうと思いを馳せたくなります。
     京都という群馬とは真逆の場所での凄まじいアウェー感も、新田始め坂東武者の皆さんも感じたのだろうなと勝手に想像したり…。
    うーん、身近な英雄は想像する楽しみをくれるなあ。

  • 最近、子供たちと歴史にハマっている。
    小学生の子は角川の歴史漫画を読みふけっている。
    今回は高校生の娘が借りた本を一気読み。

    世間一般のイメージ通り、足利尊氏側=悪役、新田義貞/楠木正成=正義として書かれている。この混沌とした時代の全貌を自分なりに納得するには、もっといろんな角度から見た本を読まないと分からないなぁ。

  • 新田義貞、後醍醐天皇、足利尊氏。
    鎌倉幕府滅亡から南北朝の話。
    割とサクサク読んだ。テンポがあって読みやすい。
    合戦シーンは良かったが、物語の転換点があっさりしていた。鎌倉方を裏切って新田荘に引き返すところ、京都で敗れて越前に逃れるところ、尾張に脱出して越前で敗れるまで。
    楠木正成や赤松円心、佐々木道誉の商人的な武士との対比が面白かった。

  • 久々の阿部龍太郎作品。こりゃまた骨太な作品にぶち当たった。
    義の武将、新田義貞の生涯だが、べらんめぇ口調?の義貞は、チャキチャキ江戸っ子なりイメージ。いや、鎌倉時代末期ですから、江戸っ子って概念はないんでしょうが、気持ちいいくらいにからっからに乾いた竹を割ったような性格の義貞を微笑ましく読み進む自分がいました。
    終わり方は賛否あるかもですが、湿っぽいのより、あっさりさっぱりいいんじゃないでしょうか。

  • 2016/4/29
    南北朝について、他も読もう。

  • この本ではざっくりと新田義貞の蜂起から負けるまで(最後はバタバタっと省略形で)を描いているが,義貞は,やはり負けるべくして負けたような気がする.勝ち残るにはやはりずるさや汚さがいるのではないだろうか.それにしても後醍醐天皇は嫌な感じで,「男同士の話ができる」などといかにとり作ってみても,振り回された面々のやりきれなさがひしひしと伝わる.

  • 『太平記』前半の中心人物、新田義貞のお話です。

    ボクの日本史の知識は、奈良時代以前と、
    鎌倉時代~室町時代、1200年~1500年頃が、
    お見事にスッポリ抜けておりまして…f(^_^;)、

    新田義貞を祀る藤島神社で、名前を頂いたにも拘らず、
    新田義貞の足跡も、全く知りませんでして…f(^。^;)、
    たまたま本作品を見つけて、これは読まねばとね…(笑)

    物語としては…、鎌倉幕府の滅亡(1333年)から、
    南北朝時代の始まり(1336年)までのお話ですが、
    魑魅魍魎とした政争と、二転三転する戦況からは、
    時代のうねりの全体像を理解するのが大変でした…。

    それでも、
    読み進めると、なんとなく足利尊氏と義貞の関係が、
    頼朝と義経の関係とオーバーラップもされまして…、
    判官びいきのよぅな悲哀や切なさも、感じました…。

    ただ…、物語は、金ヶ崎城の落城までで、
    個人的に、一番読んでみかったところの、
    最後の、越前国での戦と、義貞の最期は、
    残り1頁、エピローグ扱ぃだった点は、残念でした…。

  • 元寇と戦国もののとははさまれ、なかなか題材として描かれないが故に認知度の低い室町時代の創生前の鎌倉幕府末期を描く話で、認知度という観点から楠正成の陰に隠れた感のある新田義貞を描く話で、こちらも正直、新田義貞は名を知ってはいてもその生涯はよくわかっていなかった。戦上手なのは楠正成かと思っていたけど、そうじゃなかったのかという感で新鮮ではあった。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家。1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。東京の図書館司書を経て本格的な執筆活動に入る。1990年、『血の日本史』(新潮社)で単行本デビュー。『彷徨える帝』『関ヶ原連判状』『下天を謀る』(いずれも新潮社)、『信長燃ゆ』(日本経済新聞社)、『レオン氏郷』(PHP研究所)、『おんなの城』(文藝春秋)等、歴史小説の大作を次々に発表。2015年から徳川家康の一代記となる長編『家康』を連載開始。2005年に『天馬、翔ける』(新潮社)で中山義秀文学賞、2013年に『等伯』(日本経済新聞社)で直木賞を受賞。

「2023年 『司馬遼太郎『覇王の家』 2023年8月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安部龍太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
安部 龍太郎
東山 彰良
浅田 次郎
池井戸 潤
米澤 穂信
安部 龍太郎
宮下奈都
東野 圭吾
葉室 麟
黒川 博行
葉室 麟
宮部みゆき
池井戸 潤
池井戸 潤
東野 圭吾
安部 龍太郎
東野 圭吾
垣根 涼介
安部 龍太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×