ポール・ヴァレリーの遺言 わたしたちはどんな時代を生きているのか?

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717907

作品紹介・あらすじ

堀江敏幸さん推薦!《二度の戦乱を生き、精神の危機を見すえていた詩人の声に耳を傾けながら、著者はそこに諦念ではなく希望を上塗りして、二十一世紀に生きる人間への信頼を言葉で回復しようとつとめた。稀有なユマニストの思索の跡がここにある。》

「わたしはおよそ四十年ぶりにパリにもどって来た」。一生をパリに捧げたフランス文学の泰斗が邂逅する、さまざまな時代の、記憶のなかの人々。みずみずしい最後の随想集。
「わたしを東京にひきとめるどんな係累も、どんな仕事も、すでになかった。そのときわたしは、古来稀なり、といわれる年齢に近づいていたけれど、歳など問題でなかった。残りの人生を賭けるつもりで、半分は運命のめぐりあわせを受け入れて、もう半分は自分の意志で、力が衰えはじめたからだを、若さの盛りにあったわたしを見守ってくれたパリの懐にもういちどゆだねてみようと、こころを決めたのだった。ある年の四月、わたしはおよそ四十年ぶりにパリにもどって来た」(本文より)

【著者略歴】
保苅瑞穂(ほかり・みずほ)
1937年12月23日、東京神田生まれ。1961年、東京大学文学部フランス文学科卒業。1968年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学(1964年〜67年にパリ留学、エコル・ノルマル・シュペリウールに在籍)。東京大学名誉教授、獨協大学名誉教授。専門はフランス文学。
主な著書に『プルースト・印象と隠喩』(筑摩書房、1982年)、『プルースト・夢の方法』(筑摩書房、1997年)、『モンテーニュ私記 よく生き、よく死ぬために』(筑摩書房、2003年)、『ヴォルテールの世紀 精神の自由への軌跡』(岩波書店、2009年)、『プルースト 読書の喜び 私の好きな名場面』(筑摩書房、2010年)、『恋文 パリの名花レスピナス嬢悲話』(筑摩書房、2014年)、『モンテーニュの書斎 『エセー』を読む』(講談社、2017年/第69回読売文学賞〔随筆・紀行賞〕)、主な訳編著に『プルースト全集』第12巻〜18巻(筑摩書房、1985年〜97年)、『プルースト評論選』全2冊(筑摩書房、2002年)、ロラン・バルト『批評と真実』(みすず書房、2006年)など。監修にフィリップ・ミシェル=チリエ『事典 プルースト博物館』(筑摩書房、2002年)。
2021年7月10日、パリにて逝去。

感想・レビュー・書評

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  • ヴァレリーの講演と自身のパリでの生活や男爵夫人の家での下宿生活、ワーズワースの水仙に出会い文学を志したことなど個人の経験を織り交ぜながら、深く広い知識を持って近代フランスの科学、文化と伝統、国民性の成り立ちと世界大戦による荒廃という試練、現代フランス、現代社会・文明が置かれている機械化と物質による支配について綴る。

    ヴォルテールが異端審問を糾弾し言論の自由、人権の意識が上流階級のみならず市民に萌し、革命の素地を育んだ。
    ヴァレリーの講演から、ヨーロッパの科学と知識による優位が20世紀になり失われてゆき大戦により深刻なダメージを受けたという。また現代文明により物質と機械により人が支配され追い立てられている。芸術も人を驚かせること、新しいことを主眼に置いており言論の質も低下してきていること。ルネサンス絵画ののち風景画が流行し高度な技法が不要となり質の低下を招いているなど。

    ヨーロッパの知識人がどのように世界を捉えていたか、その主張の底流を知ることができた。

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著者プロフィール

保苅瑞穂(ほかり・みずほ):1937-2021年。東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。1964-67年パリに留学。東京大学名誉教授、獨協大学名誉教授。専門はフランス文学。著書に『プルースト・印象と隠喩』、『プルースト・夢の方法』、『モンテーニュ私記』、『ヴォルテールの世紀』、『恋文』、『モンテーニュの書斎』『ポール・ヴァレリーの遺言』など。訳書に『プルースト全集』(共編・共訳)、『プルースト評論選』(編訳)、フィリップ・ミシェル=チリエ『事典 プルースト博物館』(監修・共訳)、ロラン・バルト『批評と真実』など。

「2022年 『プルースト 読書の喜び』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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