フィールダー

著者 :
  • 集英社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718072

作品紹介・あらすじ

迎え撃て。この大いなる混沌を、狂おしい矛盾を。
「推し」大礼賛時代に、誰かを「愛でる」行為の本質を鮮烈に暴く、令和最高密度のカオティック・ノベル!

総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」との情報を入手したというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯がつまびらかに記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム・『リンドグランド』。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて……。

児童虐待、小児性愛、ルッキズム、ソシャゲ中毒、ネット炎上、希死念慮、社内派閥抗争、猫を愛するということ……現代を揺さぶる事象が驚異の緻密さで絡まり合い、人類の「不都合」の芯をひりりと撫でる、圧巻の「完全小説」!

【著者略歴】
古谷田奈月(こやた・なつき)
1981年千葉県我孫子市生まれ。2013年、「今年の贈り物」(のちに『星の民のクリスマス』と改題)で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。17年、『リリース』で第34回織田作之助賞受賞。18年、「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞、「風下の朱」で第159回芥川龍之介賞候補となり、同年刊行の『無限の玄/風下の朱』で第40回野間文芸新人賞候補となる。19年、『神前酔狂宴』で第41回野間文芸新人賞受賞。他の著書に『ジュンのための6つの小曲』『望むのは』がある。

感想・レビュー・書評

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  • 総合出版社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける
    消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘
    そんな彼を唯一癒すのが四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム
    しかし、その仮想空間でも問題が…

    橘は現実の世界とゲームの世界を行き来することになるのだが、読んでいてどちらの世界も面白い!
    (個人的にはゲームの世界の方が好きかな)

    児童虐待、小児性愛、ルッキズム、ソシャゲ中毒、ネット炎上など近年話題なってい社会問題をギュッと詰め込んだ作品なっている
    面白い!

    さぁ!フィールドに出たら、みんなでドラゴンを狩ろう!仲間になってくれるプレイヤーを募集!!!
    特に、ハルオみたいなヒーラー求む!w

    • mihiroさん
      1Qさ〜ん♬こたやさん、気になってた作家さんです♡この作品はなんとなく苦手分野な気がするんですが、カオス!という感想をよく見かけるので、どん...
      1Qさ〜ん♬こたやさん、気になってた作家さんです♡この作品はなんとなく苦手分野な気がするんですが、カオス!という感想をよく見かけるので、どんな感じか興味津々です♪1Qさんは面白かったんですね〜✩︎⡱さすが!やっぱり色んなの読まれてる〜♡♡
      2023/04/25
    • 1Q84O1さん
      mihiroさん♪
      私は初読みの作家さんでした(^^)
      カオス!w
      確かにいろいろな社会問題が詰め込まれていましたが、現実の世界とゲームの中...
      mihiroさん♪
      私は初読みの作家さんでした(^^)
      カオス!w
      確かにいろいろな社会問題が詰め込まれていましたが、現実の世界とゲームの中の世界に別れているので読みやすいかもです(^・^)
      苦手分野かもということですが機会があればチャレンジしてみてくださーい!
      2023/04/25
    • 1Q84O1さん
      ほん3さん、ヒーラー希望!?
      じゃあ、チームを組んでください!
      アタッカーは任せてください(*^^)v
      まだまだ若い者には負けないぐらい素早...
      ほん3さん、ヒーラー希望!?
      じゃあ、チームを組んでください!
      アタッカーは任せてください(*^^)v
      まだまだ若い者には負けないぐらい素早く動きますよ〜w
      2023/04/25
  • 総合出版社・立象社に勤務し社会派オピニオン小冊子を編集担当する橘泰介は、スマホゲームで対戦するのを趣味としている。
    突然、担当著者である黒岩文子が、女児を触ったとの情報が出回り、時を同じくして本人から長文メールが届く。
    彼女の行方を探すのと並行してオンラインのゲームの中でも問題が起こる。

    自分は、ゲームはした事がなくその世界はわからないのだが、それでも対戦で熱くなり、激しくなる思いやその中での駆け引きやお互いのやりとりで個性が出ている様子がよくわかる。

    「推し」や「愛でる」こと。
    「ソシャゲ中毒」「ネット炎上」の世界。
    「児童虐待」や「小児性愛」に社内派閥抗争までもが取り上げられている。
    会社内での橘の立場や同期との様子に黒岩とのやりとり。
    どこまでもしんどい。
    最後には、どうなるのか先が見えない。
    ずっと苦しいままなのだが、これが現代に普通に起きていることであり、驚くべきことでもないのか…と。
    いや、この混沌としたさまが、異常では…とも。


  • 兵站線(へいたんせん)としてのことば『フィールダー』著:古谷田奈月を倉本さおりさんが読む | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/739184

    「フィールダー」 「善悪とは」根源問う拷問と快楽 朝日新聞書評から|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14748655

    古谷田奈月『フィールダー』 | 小説丸
    https://shosetsu-maru.com/interviews/authors/storybox_interview/113

    古谷田奈月『フィールダー』刊行記念インタビュー「誰もが当事者である世界線で、『リアル』とは何かを問う」 | 集英社 文芸ステーション
    https://www.bungei.shueisha.co.jp/interview/fielder/

    フィールダー/古谷田 奈月 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771807-2

  • 行間を読み切れないように感じる物語だった。300ページ少々でそれほど長くもなく、読み出すと惹き込まれてどんどん進みたくなるのに、読み終えるのに結構かかった。

    一方的な「かわいい」や矛盾をはらむ「かわいい」。現実世界とソーシャル世界の関係性や各々が感じる密度。社会が問題視する事柄と個人の感情の隔たり。思いやりと下心。知ることで理解して出来上がっていく人物像がその人の全てではないし変化することも有り得るのに、いざ目の当たりにすると受け入れられなくなることもある。味方でいることはとてつもない覚悟が必要だと感じるし、1歩踏み出す勇気さえあればなんとでもなるようにも感じる。

    総合出版社勤務の橘は人権に関わる社会問題を扱う小冊子の編集者であり、スマホゲーム「リンドグランド」の迎撃団員。児童福祉専門家の黒岩の担当者であり、黒岩から届いたメールによってある女児との関係性を知る。

    この物語は、自分の中での感じ方を変えながら常に心の中にあり続けるように思う。変わったときにまた読んでみよう。

  • 圧巻。めちゃくちゃに面白かった。
    主人公の橘は大手総合出版社ではたらく編集者。
    まずこの出版社の筋の通ってなさが容赦なく晒され続ける。
    人権意識の高い社会派冊子や文芸誌。
    スキャンダルを追いかけ、疑惑の人を追い詰める週刊紙。
    何度も炎上を繰り返すも、圧倒的部数を誇る少年漫画誌。
    自社の問題を自社が暴き、特集を組み、それを受けて声明を出し…とひたすら忙しい。自家発電してるみたい。
    それぞれの媒体の人間が、それぞれの正義を掲げて戦っている。
    自分に近いと感じる人の発言もある瞬間からは欺瞞に見えて、結局足場が定まらないまま読み終えた。
    彼らは、正義より欲望が先立っていて、正当化するために論理を発展させてるのかも。
    誰かがなのか、全員なのか分からないけれど。
    それでも自分の立場を保留にせず、腹括って表明できる人をかっこいいとも思う。

    一方、橘が人生で最も比重を置いているのはゲーム。
    今は四人一組で戦うスマホゲーム「リンドグランド」に熱中している。
    性別も年齢も不詳な人間たちが仲間になっていく過程が心地よくて、切実さも伝わってきて、とっておきの秘密基地を覗かせてもらったような気分。
    ゲームは愛せどゲーム会社には不満たらたらだったり、
    なりゆきで手にした装備がいつの間にかこの上なくしっくりきていたり。
    ゲームには縁遠い私にも身に覚えがある描写が多々あって面白かった。

    仕事とゲーム、ふたつの世界が交差した日常を橘は生きていて、その混沌に誤魔化されてるおかげで生き延びている感じがする。
    要約できない滅茶苦茶な世界。
    その恐ろしさと途方もなさ、そして面白さが、怒涛の情報量で描かれていた。とんでもない物語を読んだ。最高。

  • 久しぶりに読んでみたいと思った本で
    あれ?なんか思ってたのと違う、全然頭に入ってこない
    と思った本
    私には、合わなかったのかな
    ゲームの世界の話にはちゃんとついてはいけたけど
    結局、かわいい…とは?みたいになってしまった

  • 合う合わないがはっきり別れる小説ですね。私はゲームを全くしない人間で、出だしからのゲーム世界の話なのが何だかよくわからなくとても苦痛だった。言ってることの意味も(ゲーム用語?世界観?)よくわからなかったし。
    著者は四十代か…。若い人の方が「刺さる」話なのかな、と思いつつも年齢よりもこの話の何処かに感じられる当事者性があるかないかなのかな?それとも共感や感情移入ができるかなのかな?などと考えつつ読むも何かモヤモヤとしている感がずっとあった。
    私がこれまで読んだことのない種類の小説なのは確かでした。

    世界観とテーマがはっきり分かってからはある程度入り込めたと思うけれど、うーん、盛り込み過ぎというか突っ込んでるけどとっ散らかってるというか、結局解決はしないのなと…。
    いや多分、解決云々というところを求める話ではないのだろうとは最後まで読んで思ったけれども正直「ここで終わるのか?こんな終わり方なのか?」とは思いました。
    私はちなみに黒岩さんとほぼ同じことをこの春考えていました。だからとても驚いた。そういう風に熊を考える人がいるんだなぁということに。その一点だけでも充分にこの本に出会えた価値はありました。
    最後の方は胸が痛くてたまらなかった。だから他の方々はそうは思わないかもしれないけれども私はこの終わり方が全然腑に落ちませんでした。これは今流行りの(?)「推しの話」でもあるのかな?
    …うーん、やはり盛り込み過ぎなような。
    とにかく読んだことのないジャンルの話で驚きました。すでに大きな賞をたくさん受賞されているけど、こういう話を書く人が純文系の賞を受賞する時代なのですね。

  • 「本書の凄まじさの1割も表現できておりません」
    本の帯って、読者の気を引くために多少は盛ってたりするものだけど、これは本当にその通りだった。

    社会問題にエンタメ要素を絡めて高い熱量でひとつの作品にまとめられているが、その枠からはみ出る、著者のやり場のない憤りのようなものを強く感じた。
    出版業界の本音と建前そしてセクハラとそれを見過ごす人達、毒親…一度読んだだけではとても理解が追いつかない。これは再読しないと。

    猫に関する記述も、正論なだけに、そこの猫好きのあなたはどう思ってるの?と胸ぐらをつかまれて揺さぶられ軽くムチ打ちになった気すらする。理詰めも嫌じゃないけど痛い所を突かれて追い詰められた気持ちになった。
    それでも、著者がかなりの猫好きで猫の幸せを真剣に考えていてるのは伝わった。

  • 良くも悪くも盛りだくさんで混沌としていて、でもすべて現実の世界にうずまいている、見覚えのある、身に覚えのある、聞き覚えのあることばかり。昨日も、今日も、明日も、近所で、あるいは日本のどこかで同じようなことが起きている。

    かわいがる、愛でるって一体なんなんでしょうね。立場や対象、方法によっては、微笑ましいエピソードにも犯罪にもなりうる。何も考えず何も疑わず、自分にとってのかわいいは正しいと思っていたので、頭をガンっと殴られたような気分になりました。

  • 現場を研究するフィールドワーカーじゃなくて、現場で当事者となるのが「フィールダー」ということのようです、タイトルは。「推し」を「愛でる」行為に関する小説と言うことですが、オンラインゲーム(メタバース?)の世界の描写が冒頭から始まって、おじさんが読むにはちょっとつらいと言うかついて行けなくてしんどかった。

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著者プロフィール

1981年、千葉県我孫子市生まれ。2013年、「今年の贈り物」で第25回ファンタジーノベル大賞を受賞、『星の民のクリスマス』と改題して刊行。2017年、『リリース』で第30回三島由紀夫賞候補、第34回織田作之助賞受賞。2018年、「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」で第159回芥川龍之介賞候補。2019年、『神前酔狂宴』で第41回野間文芸新人賞受賞。その他の作品に『ジュンのための6つの小曲』、『望むのは』など。2022年8月、3年ぶりの新作長編『フィールダー』が刊行予定。

「2022年 『無限の玄/風下の朱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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