十三夜の焔

著者 :
  • 集英社
3.64
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本棚登録 : 204
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718126

作品紹介・あらすじ

天明四年五月の十三夜。将軍家外出時の警護や市中見廻りの御役目を負う先手弓組番方・幣原喬十郎は、湯島の路上で男女の惨殺体を発見する。傍らには匕首を手に涙を流す若い男。喬十郎は咄嗟に問い質すが、隙をつかれて取り逃がす。やがて、逃げた男は大盗「大呪の代之助」一味の千吉だと判明。喬十郎は追及するが、千吉は再び姿を消す。雪辱を果たすべく矜持を持って悪事に立ち向かう喬十郎と、闇社会をうまく立ち回る千吉。二十年以上にわたる因縁の対立関係を描く、熱き時代小説。

月村了衛(つきむら・りょうえ)
1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年『機龍警察』でデビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトМ1851残月』で第17回大藪春彦賞、同年『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎を受賞。他の著書に『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』『ビタートラップ』『脱北航路』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • ほとんどといってもいいほど時代小説は読まないのだが、月村了衛さんの小説は何冊か読んでいるので今作も手に取った。

    十三夜に出会った幕府の喬十郎と闇社会で生きる千吉。
    この立場のまったく異なる2人の再会。
    運命ともいうべきか。
    初めて出会った日から、互いに憎み合い、戦い合ってきたこの2人が、最後には百年の知己よりも親しい仲になる。
    そうなるには、どちらも娘のおかげもあったのかもしれない。

    最初に見た涙を最後にまた見ることになった。
    その涙に温もりを感じた。

  • うーん、面白かった!昨日の敵は今日の友まではよくあるが、そこからまた敵対し最後には知己となるとは。基本的には幣原対銀字屋なのだか伊丹塔仁や御上の役人等などとの複雑に絡み合った戦いが奥深く、ミステリー要素もあり素晴らしい。
    また、それぞれの妻子や終盤に登場する遠山金四郎などが良い味を出してさらに面白くしているように感じた。
    甘さが強さになっているってところがとてもカッコ良し!
    またエピローグ的な晩年の2人のやりとりをサラッとではなくしっかり書き上げてくれている点にも注目したいな。

    • bera5227さん
      おつ松♪
      ゼロってわけじゃないけど極めてハズレは少ないかと思われますな。特に機龍警察は言うまでもないけど詐欺系のヤツもかなりオススメ☆
      おつ松♪
      ゼロってわけじゃないけど極めてハズレは少ないかと思われますな。特に機龍警察は言うまでもないけど詐欺系のヤツもかなりオススメ☆
      2023/02/14
    • 松子さん
      詐欺系のもあるんだぁ…あぁぁぁ、せめて1日一冊読めるようになりたい。_:(´ཀ`」 ∠):
      詐欺系のもあるんだぁ…あぁぁぁ、せめて1日一冊読めるようになりたい。_:(´ཀ`」 ∠):
      2023/02/14
    • bera5227さん
      それはそれでハード過ぎて楽しめなさそう(⌒-⌒; )
      それはそれでハード過ぎて楽しめなさそう(⌒-⌒; )
      2023/02/14
  • 二人の男の確執、共通の敵との対峙、体制側=巨悪ゆえの諦念。潔癖な若者なら受け入れられないものも、加齢と共に飲みこまざるをえなくなる。庶民に抗う術はない。
    しかし、それでも、矜持をもつことはできる。

    喬十郎の「甘さ」は人間であるための「甘さ」。その妻とそれぞれの娘ができすぎの感はあるし、結末も甘いが、物語としてはそれがいい。特に千吉の娘・おりんの生き方に共感。

  • 月村了衛作品の時代小説は嫌いじゃないけど、読みながらイメージしてしまうのは舞台上の貧弱なセットや衣裳。
    もっと迫力が欲しい!!
    次は、直木賞候補作品を読む予定。

  • 天明四年五月の十三夜に始まる御先手弓組・幣原喬十郎と、「大呪の代之助」一味の千吉との因縁の物語。その因縁は田村意次と松平定信の確執にまで遡り、幕府の金融政策をも巻き込む巨大なものとなる。
    長谷川平蔵や遠山金四郎といった著名な登場人物が脇を固め、読み応えのある時代小説だった。

  • 先手弓組の幣原喬十郎が十三夜に出くわした殺害現場。そこにはただ涙を流す盗人の千吉がいた。事件の真相を知るために千吉を追う喬十郎、しかしその手を掻い潜り姿を眩ませる千吉。やがて時は流れ、両替商の銀字屋となった千吉は喬十郎に再会することになる。読み応えのある時代ミステリです。
    まるで違う出自と境遇でありながら、同じ年頃で家族構成も同じ二人が対立し、ひたすらにお互いを敵視しながら物語は進むのですが。結局のところ立ち向かうべき強大な敵は同じなのではないのかな、と思えるし、ある意味バディものとしても読めそうな作品。自らの甘さを自覚しながらも涙を見せることを厭う喬十郎と、厳しい現実を強かに生き抜きつつも涙もろい千吉との対比も面白いです。とっとと手を組んでしまえばいいのに、と何度思ったか(笑)。
    時代劇でおなじみのあんな人やこんな人が登場したり、読みどころはたくさん。しかし何といっても女性陣の賢さ強さが素敵すぎます。そして彼女たちをけっして軽視しない二人の姿もまた素敵でした。

  • 月村氏は時代小説も半端ない。山本周五郎や藤沢周平、池波正太郎、最近でいうと葉室麟や砂原浩太朗等々の名手と比べるのは可哀想だが、それでも素晴らしい力作で心が熱くなり響く作品。ストーリテリングの上手さは時代小説でも遺憾なく発揮されている。

  • 人生は恐ろしい。ふとした行き違いで真逆の生き方に。しかも「御公儀の御政道に対し、もの言うことなど許されぬ。それが天下の定めである限り、我らはその流れに乗って生き続けるしかないのじゃ」つまらぬことに囚われ続ける人が与る御政道なのに…今の時代は、まだ制度的には“否”の声挙げる事ができる喜び。行使しないと。弁えている場合じゃない。「貴公とわし、どちらが御上を尽くしておるか」重たいことば…。月村さん、舞台が代わっても、熱い思いが流れ込んでくる。

  • 主人公の30年いや40年になるか、生涯の物語だ。対立する2人のそれぞれの家庭の親娘の心温まる会話等々に感動した。そして最終章では涙が滲み出、自分にも生涯の友がいることの幸せを思った感動の一冊だった。

  • 十三夜に遭遇した涙する漢と生涯にわたって追い続けた武士の話であるが、当時も今も変わらぬ政治家の金の汚さを思う。政治と金は禁忌、それを一介の先手弓組番方が収めるにはあまりに闇が強大だ。仇となる男も盗賊から両替商となり、幕府の裏事情を汲まされ苦悩する。面白いのは両者に理解者となる奥方とそして同じ歳の娘を持つことで男同士のプライドの狭間に風を送り込んでくれる。人情あり、チャンバラありと時代劇を盛り立てる要素をしっかり押さえており飽きさせず楽しませてくれた。惜しむらくは時代小説を読むにあたって自分の知識の乏しさに先手弓組番方とはいったい何?とか知らない役柄などがあり、読んだ後から調べてしまうとかいうミスをやってしまい、面白さを半減させてしまったのは痛恨だった。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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